独身者が亡くなると誰が相続する?相続人不在時の財産の行方や生前からできる対策を解説

公開日:2025年5月7日

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独身者が亡くなると、誰が財産を相続するのだろうと疑問に思っていませんか。結論からいうと、独身・既婚に関係なく法定相続人に違いはありません。しかし、なかには法定相続人が誰もいない方もいるでしょう。本記事では、独身者が亡くなったときの法定相続人や相続人不在時の財産の行方、相続対策について詳しく解説します。独身で不安を感じている方や親戚に独身者がいる方は、ぜひ参考にしてください。

独身者が亡くなった場合、誰が法定相続人になるのか

日本における未婚率は男女ともにどの年代でも増えており、生涯を通して独身のままという方も少なくありません。男女共同参画局が発表している「生涯未婚率の推移(男女別)」を見ると、令和4年時点における生涯未婚率は男性で20.1%、女性で10.6%となっています。

そもそも、相続が発生すると配偶者がかならず法定相続人になります。配偶者とは法律上の婚姻関係にある場合に限るため、内縁関係の夫・妻や離婚した元夫・元妻は法定相続人になりません。あくまでも、死亡時点における法律上の婚姻関係のある方に限られる点に注意しましょう。

配偶者のいない独身者のなかには「独身のまま死んでしまったら、だれが相続してくれるのだろう」と不安を感じる方がいるかもしれませんが、独身者であっても既婚者と法定相続人の決まり方に違いはありません。

ここでは、誰が独身者の法定相続人になるのかについて下記のケースごとに詳しく解説します。

  • 子どもが相続人になるケース
  • 父母が相続人になるケース
  • 兄弟姉妹が相続人になるケース

順番にみていきましょう。

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子どもが相続人になるケース

まず、子どもは第一順位の法定相続人のため、被相続人に子どもがいる場合は子どもが法定相続人となります。

もし、離婚した元配偶者との子どもがいる場合や養子縁組をしている場合、子どもが法定相続人になります。実子と養子に順位や相続分の違いはなく、同じ第一順位の法定相続人として扱われます。

なお、未婚のパートナーとの間に子どもを認知していれば法定相続人となりますが、認知していなければ法定相続人にはなりません。

また、子どもはいるものの被相続人より先に死亡している場合は、その子ども、つまり被相続人からみた孫が法定相続人になります。これを代襲相続と呼びます。孫も死亡している場合はひ孫が法定相続人です。

このように直系の子孫(直系卑属)がいる場合は、かならず代襲相続が発生します。

父母が相続人になるケース

被相続人に子どもや代襲相続をする孫やひ孫がいない場合、第二順位の父母が法定相続人になります。父母がすでに死亡している場合、祖父母などの直系尊属に相続権が移行します。

若い独身者が亡くなったときの相続人は父母となるケースが多いです。

兄弟姉妹が相続人になるケース

子どもや孫などの直系卑属・父母・祖父母などの直系尊属がいない場合、第三順位である被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、その子ども、つまり被相続人からみた甥・姪が代襲相続人となり相続権を引き継ぎます。ただし、甥や姪には直系卑属のような再代襲がなく、代襲相続は一代のみです。

法定相続人が誰もいない場合、財産はどうなるのか

子どもや両親、兄弟姉妹など、法定相続人が誰もいない場合、独身者が亡くなったあとの財産は下記の流れで帰属先や処分方法が決められます。

  • 相続財産清算人によって清算される
  • 特別縁故者へ財産分与される
  • 国庫に帰属する

詳しく確認していきましょう。

相続財産清算人によって清算される

法定相続人が誰もいない独身者の場合、相続発生後の遺産は相続財産清算人によって清算されます。

相続財産清算人とは、亡くなった方の財産を管理・清算する人のことです。令和5年4月1日より前は「相続財産管理人」という名称でしたが、民法改正によって名称が変更されました。

誰も法定相続人がいない場合や、すべての法定相続人が相続放棄した場合に家庭裁判所によって選任されます。家庭裁判所への申し立てを行える人は、被相続人の利害関係者や検察官のみです。被相続人の利害関係者とは、具体的に下記のような方が当てはまります。

  • 債権者(被相続人に金銭・住居などを貸し付けていた人)
  • 特定受遺者(遺言によって遺産を取得する人)
  • 特別縁故者(内縁関係のパートナーなど)

相続財産清算人が選任されると、相続人の申し出を確認するために官報に公告が出されます。申し出がなければ法定相続人不在が確定し、債権者・特定受遺者の順番に財産分与されます。

特別縁故者へ財産分与される

相続財産清算人によって債権者や特定受遺者へ財産分与がされ、残った遺産がある場合は特別縁故者に財産分与されます。

特別縁故者とは、法定相続人ではないものの被相続人と特別な縁故のある人のことです。特別縁故者として財産分与を受けるためには、家庭裁判所で認められる必要があります。

家庭裁判所で認められるには、下記のような条件を満たさなければなりません。

  • 被相続人を療養看護していた
  • 被相続人と同一生計にあった(内縁の妻や夫、事実上の養子・養親、子の配偶者など)
  • 上記の関係に準じて特別の縁故があった

特別縁故者が受け取れる遺産の内容や額は、家庭裁判所が決定します。債権者や特定受遺者への財産分与をしたあと残った金銭すべてを受け取れるわけではないため、注意しましょう。

また、特別縁故者へ財産分与されるタイミングは、相続財産清算人の選任や公告期間、債権者・特定受遺者への財産分与が終わったあとです。相続発生から1年程度経ってから財産分与されると考えておきましょう。

国庫に帰属する

債権者や特定受遺者、特別縁故者がいない場合や、それぞれに財産分与がされても遺産が残っている場合、残った遺産は相続財産清算人によって国庫へ帰属されます。

独身者に効果的な相続対策

独身者に効果的な相続対策のイメージ

現在自分の持っている財産を天国に持っていくことはできません。また、法定相続人がいない独身者が何も対策をしないまま死亡してしまうと、最終的に遺産は国庫へ帰属されます。

なかには、自分が築き上げた財産を死後に有効活用してほしいと考える独身者もいるでしょう。

ここでは、独身者に効果的な相続対策を4つご紹介します。

  • 遺言書を作成する
  • 生命保険を活用する
  • エンディングノートを作成する
  • 死後事務委任契約をする

さまざまな相続対策の選択肢を知って、納得のいく対策を実践しましょう。

遺言書を作成する

自分の財産を残したい相手や団体があるのであれば、遺言書の作成がおすすめです。

遺言書には、どの財産を誰にどれだけ渡すかの意思表示ができます。遺言書を残せば、法定相続人以外の友人や内縁関係の妻・夫、同性のパートナーなどへ財産を譲り渡すことが可能です。

また、お世話になった介護施設や法人などにはもちろん、自治体やNPO団体などに財産を残して社会貢献に役立てることもできます。

遺言書は法的効力を持ち、法定相続分よりも優先されます。ただし、法的効力を持たせるためには細かなルールを守らなければなりません。

より確実に遺言書を残すのであれば、公証人とともに遺言を作成する公正証書遺言を活用しましょう。自分で作成する自筆証書遺言には細かなルールが多く、1つでも不備があれば効力がなくなり、せっかく遺言を残しても意思が実現しないからです。

独身者は遺言を見つけてもらえないリスクがあるという点においても、公証役場に保管してもらえる公正証書遺言を作成することをおすすめします。

生命保険を活用する

生命保険を活用しても、特定の人に財産を残すことが可能です。

生命保険の死亡保険金は、受取人固有の財産となるため遺産分割の対象から外れます。そのため、生命保険に加入して財産を残したい人を受取人に指定すると、その人が生きている限りかならず保険金を受け取ることになります。

以前は、配偶者や親族以外の人が受取人になることは、不適切な利用をされるリスクがあるためできないようになっていました。しかし、近年においては、戸籍上では他人であっても、事実上の家族と呼べる関係の相手であれば受取人に指定することが可能としている保険会社や保険サービスが増えています。

配偶者や親族以外であっても、下記のような方であれば保険金の受取人として指定できます。

  • 事実婚のパートナー
  • 内縁関係の妻や夫
  • 同性のパートナー

ただし、法定相続人以外の方が保険金を受け取った場合、遺贈によって死亡保険金を取得したとみなされて相続税の課税対象となる点に注意しましょう。さらに、2割加算の適用もされます。

エンディングノートを作成する

エンディングノートを作成して相続対策する選択肢もあります。エンディングノートとは、自分が死亡したときや意思表示ができなくなったときに備えて、介護の希望や葬儀・墓の希望などについて記すためのノートです。

エンディングノートには決められた形式はなく、作成者の希望や連絡してほしい人のリストなどを自由に書き込むことが可能です。遺言書には決められたことしか書けないため、遺言書の補完として活用できます。

元気なうちにエンディングノートに財産内容や家族構成を記しておけば、死亡後の手続きを行ってくれる人の負担軽減にもつながります。

ただし、エンディングノートには希望を記すにとどまり、実現するかどうかはわからない点に留意しましょう。

死後事務委任契約をする

遺言書では指定できない死後のことについて指定したい場合は、死後事務委任契約を活用しましょう。

死後事務委任契約とは、自分が死亡したときに発生する事務手続きを第三者に託すための生前契約です。具体的には、下記のような事務手続きを委任できます。

  • 通夜・告別式・火葬・納骨・埋葬に関する手続き
  • 行政官庁などへの届出
  • 賃貸住宅の明け渡し
  • 相続財産清算人の選任申立に関する手続き
  • 親族・関係者への連絡
  • 医療費・施設利用費・公共料金などの清算

エンディングノートと異なり、代理人と契約を交わすため契約内容に記したことは死後に実現してもらえます。ただし、生前に発生する介護に関する手続きや、遺産を超える医療費・介護費の支払いなどは委任できません。

委任できる相手には、特別な資格や条件は不要です。内縁関係の妻・夫や、気心知れる友人、法的知識を持つ専門家などと契約を交わすケースが多いです。

独身者は相続対策をしておくと安心

独身・既婚に関係なく、相続発生後の遺産は法定相続人に相続されます。しかし、法定相続人がいない場合は、債権者への支払いや特別縁故者への財産分与ののち国庫へ帰属される可能性があります。

相続人がいる・いないにかかわらず、財産を残したいと考えている人や団体があるのであれば、遺言書を作成しておきましょう。また、死後の希望を叶えるためにエンディングノートや死後事務委任契約を活用することもおすすめします。

遺言書や死後事務委任契約などの相続対策をする場合、相続に詳しい弁護士や司法書士に相談すると安心です。死後に希望が実現される遺言や契約書などを作成するためのアドバイスがもらえます。

相続プラスでは、相続や生前対策に強い弁護士や司法書士などの専門家を一覧で確認できます。悩み別・エリア別に検索することもできるため、ぜひ活用してくださいね。

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記事の著者紹介

安持まい(ライター)

【プロフィール】

執筆から校正、編集を行うライター・ディレクター。IT関連企業での営業職を経て平成30年にライターとして独立。以来、相続・法律・会計・キャリア・ビジネス・IT関連の記事を中心に1000記事以上を執筆。

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年5月7日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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