世帯主が亡くなったら14日以内に世帯主変更届の提出が必要です。ただし、遺された世帯が1人しかいないなど世帯主変更届が不要なケースもあります。この記事では、世帯主変更届の手続きの流れ・費用や不要なケースについてわかりやすく解説します。世帯主変更届と一緒に行いたい手続きについても紹介するので、参考にしてください。
目次
世帯主変更届とは
世帯主変更届とは、死亡などで世帯主に変更が出た場合に新しい世帯主に登録を変更するための届出です。自治体の住民登録にはその世帯の代表となる世帯主も登録されており、世帯主に変更があった際には変更届を提出することが法律により義務付けられています。
世帯主変更届の期日・届出先
世帯主の死亡に伴う変更の場合、死亡日から14日以内に市区町村役所の窓口で手続きする必要があります。一般的には、死亡届と同時に手続きするケースがほとんどです。ただし、自治体によっては、支所や出張所・サービスコーナーなどでは手続きできない場合もあるので、事前に確認するとよいでしょう。
また、世帯主変更届で使用する書類は自治体によって異なります。「世帯主変更届」という書類ではなく「住民異動届」という書類で手続きする自治体もあるので注意しましょう。申請の書類は、自治体の窓口やホームページからダウンロードで取得できます。
届け出する人
世帯主変更届は、新しい世帯主か亡くなった人と同一の世帯の人が手続きできます。また、委任状があれば代理人での届け出も可能です。
なお、同一世帯とは、住民票上の住所が同じで、かつ生計を一にした人のことを指します。たとえ、死亡した人の親族で同じ住所で生活していても、生計を別にしている別世帯の人であれば代理人として手続きする必要があるので注意しましょう。
ちなみに、世帯主は、15歳以上であれば続柄や収入・年齢関係なく誰でもなることが可能です。一般的には夫婦のうち収入の多い人が世帯主になるケースが多いですが、法的に誰を世帯主にしなければならないという決まりはありません。
世帯変更届との違い
世帯主変更届と似たような手続きに「世帯変更届」があります。
世帯変更届とは、1つの世帯がわかれる、2つ以上の世帯が1つになるといった世帯の分離・合併による世帯の構成に変更があった場合の必要な手続きです。世帯変更届も住民異動届で手続きするケースが多いですが、意味合いが異なるので注意しましょう。
世帯主変更届が不要なケース・必要なケース
世帯主変更届は、世帯主が死亡したからといって手続きが必ず必要なわけではありません。一部のケースでは世帯主変更が不要になるので、不要なケース・必要なケースを理解しておくことが大切です。
不要なケース
世帯主変更届が不要な主なケースは以下の通りです。
- 世帯に誰も残っていない
- 世帯に残るのが1人だけ
- 世帯に残るのが15歳以上の人が1人と15歳未満の子どもだけ
世帯主が1人暮らしだったケースでは、世帯主が死亡すると他の世帯の人がいないので届出は必要ありません。また、世帯主の死亡後、世帯に残るのが1人だけ、または1人と15歳未満の子どもだけというケースも不要です。
たとえば、世帯主である夫が死亡すると、残るのは妻だけか妻と15歳未満の子どもだけというケースが該当します。このような場合では世帯主が誰なのかが明らかなため、あえて届出する必要がないのです。
必要なケース
世帯主変更届が必要になるケースは、世帯主が死亡すると誰が世帯主になるのかがわからない場合です。つまり、世帯主の死亡後に15歳以上の人が2人以上いるケースでは世帯主変更届が必要になります。
仮に、遺されたのが母親と16歳の子どもであっても、15歳以上であれば16歳の子どもでも世帯主になりえるため変更届が必要です。また、親が死亡し遺されたのが15歳以上の子ども2人だけというケースでも、親から子への世帯主の変更が必要になるため、どちらかの子を世帯主として手続きしなければなりません。
世帯主変更届の手続きの流れ・必要書類・費用
ここでは、世帯主変更届の手続きの流れや必要書類についてみていきましょう。
手続きの流れ
世帯主変更届手続きの大まかな流れは、以下の通りです。
- 住民異動届の取得・記入
- 必要書類を添えて窓口への提出
世帯主変更手続きは、住民異動届の必要事項を記載して必要書類とともに市区町村役所の窓口に提出するだけで、複雑な手順は必要ありません。一部の自治体では窓口だけでなくオンラインでの提出にも対応しているので、お住まいの自治体の提出窓口を事前に調べておくとよいでしょう。
ただし、手続きは世帯主が死亡してから14日以内に行う必要があるので、早めに手続きすることが大切です。
必要書類と費用
世帯主変更届に必要な書類は以下の通りです。
- 住民異動届
- 本人確認書類
- 印鑑
- 委任状(代理人の場合)
自治体によって様式は異なりますが、一般的には新しい世帯主の欄に新しい世帯主の氏名・住所、今までの世帯主の欄に死亡した世帯主の氏名を記載します。さらに、世帯員の欄には新しい世帯主を含めた世帯員全員を記載します。
代理人が申請する場合は、新しい世帯主などの委任者本人が委任状を作成しなければなりません。委任状については自治体によって指定の書式が異なるので、自治体のホームページで確認しましょう。
また、申請の際には、マイナンバーカードや運転免許証・パスポートなどの本人確認書類と印鑑も必要になるので、忘れずに準備しましょう。ただし、自治体によって必要書類は異なります。戸籍謄本や住民票の写し・国民健康保険証なども必要になるケースもあるので、事前に自治体のホームページなどで必要書類を確認しておきましょう。
なお、世帯主変更届の手続きに費用はかかりません。
世帯主変更届について知っておきたいこと・注意点
世帯主変更届の手続きをする際には、以下の点には注意しましょう。
- 同居親族でも委任状が必要なケースがある
- 外国人住民は必要書類が異なる
- 手続きを怠ると過料が科せられる
同居親族でも委任状が必要なケースがある
先述の通り、世帯主変更届を新しい世帯主かその世帯の人以外が手続きする場合は、委任状が必要です。同じ住所に住んでいる親族であっても、世帯が異なれば委任状が必要になるので注意しましょう。
たとえば、同じ住所で父親・母親、長男夫婦・次男が同居している場合で、父親・母親・次男と長男夫婦が生計を別にしていればそれぞれの世帯は異なります。この場合で、父親の死亡後に次男が世帯主変更届を行う場合は委任状は必要ありませんが、長男が世帯主変更届を行う場合は委任状が必要です。
もっとも、上記の場合で次男が15歳未満なら母親が自動的に世帯主になるため、そもそも世帯主変更届は必要ありません。ただし、母親と次男を長男夫婦世帯と同一の世帯にする場合は、世帯合併として世帯変更届が必要になります。世帯合併や分離は、健康保険料などにもかかわってくるため慎重に判断するようにしましょう。
外国人住民は必要書類が異なる
世帯に外国人住民が含まれる場合、前述した必要書類に加えて以下のような書類が必要になるケースが一般的です。
- 在留カードや特別永住証明書
- 世帯主との続柄を証明する書類(結婚証明書や出生証明書など)
必要書類が外国語である場合は、翻訳者を明記した翻訳文の貼付が必要になるケースもあります。必要書類は自治体によって異なるので、事前に確認するようにしましょう。
なお、外国人住民であっても在留カードを交付されているなど一定の条件を満たせば世帯主となることが可能です。
手続きを怠ると過料が科せられる
世帯主変更届は、世帯主に変更があってから14日以内に手続きすることが法律によって定められています。死亡による世帯主変更の場合は、死亡日から14日以内が期限となり、14日目が役所の閉庁日にあたる場合は、翌開庁日が期限です。
14日を超えた場合でも手続きは可能ですが、提出が遅れた理由を記載する「提出期間経過通知書」と呼ばれる別の書類の貼付が必要です。さらに、期間を超えた場合、提出期間経過通知書に記載された理由によっては、5万円以下の過料が科せられる恐れもあるので、早めに手続きするようにしましょう。
世帯主変更届と合わせて行いたい手続き
世帯主が死亡すると、世帯主変更届以外にもさまざまな手続きが必要です。手続きの中には期限が設けられているものも多いので、まとめて行ったほうが効率よく手続きできます。
以下では、世帯主変更届と合わせて行いたい主な手続きを紹介します。
死亡届・火葬許可証
世帯主が死亡したら死亡日から7日以内に死亡届を提出する必要があります。死亡届は、死亡時に医師または警察から発行してもらう死亡診断書と一体になっているので、必要事項を記載して提出しましょう。
また、遺体を火葬するための火葬許可証の提出も死亡届と一緒に行うのが一般的です。火葬許可証は火葬の際に火葬場に提出する書類で、火葬後には火葬証明書(埋葬許可証)が発行されることで墓地や納骨堂への納骨が行えます。
なお、死亡届と火葬許可証の手続きは、葬儀場の担当者が行ってくれるケースがほとんどです。
健康保険
国民健康保険・社会保険の喪失手続きも必要です。故人が国民健康保険に加入していた場合、死亡から14日以内に役所の窓口に保険証の返却と資格喪失届を提出します。
また、故人が世帯主で同じ世帯で国民健康保険に加入している人がいる場合は、加入している家族の分の保険証の返却も必要です。家族は新たな世帯主で国民健康保険に加入することになるので、世帯主変更届後一緒に手続きするとスムーズに手続きを進められます。
故人が会社員などで社会保険に加入している場合、勤務先で喪失手続きが行われるので保険証を返却するようにしましょう。この際、扶養に入っている家族の保険証の返却も必要です。家族は国民健康保険に加入するか、別の人の扶養に入り社会保険に加入するかになるので必要に応じた手続きを行うようにしましょう。
故人が、国民健康保険に加入していた場合、保険から埋葬料や葬祭費の給付を受けられるので、期限内に請求手続きも行っておくことも大切です。
年金
故人が年金受給者の場合、年金受給停止の手続きが必要です。国民年金は死亡日から14日以内、厚生年金は死亡日から10日以内に年金事務局や年金相談センターで手続きする必要があります。ただし、基礎年金番号がマイナンバーと紐づいている場合は、手続きは不要です。
年金停止の手続きが遅くなり死亡日以後の年金が支給されてしまうと、支給分は返金をしなければなりません。返金をしない場合は不正受給にあたるので、早めに停止手続きを行いましょう。なお、未支給分の年金がある場合は請求手続きすることで受け取ることが可能です。
また、遺族年金の対象となる場合も併せて請求手続きを行うようにしましょう。
公共料金や各種税金関係
電気やガス・インターネットなどの公共料金の名義人であった場合、名義変更や解約手続きが必要です。また、故人が契約していた動画配信やサブスクなどの各種契約関係も解約手続きを進めていかないと、費用が請求されるので注意しましょう。
固定資産税や住民税などの請求書変更手続き、クレジットカード・運転免許証などの解約・返却なども必要になってきます。
ただし、相続放棄を検討している場合、公共料金や税金の未払い分を支払ってしまうと相続放棄ができなくなる恐れもあるので慎重に対応することが必要です。相続放棄を検討している場合は、専門家に相談しながら未払い分などの対応のアドバイスをもらうことをおすすめします。
相続手続き
世帯主が所有する財産の相続手続きも進めていく必要があります。
遺言書がある場合は遺言書に従い、ない場合は相続人全員で遺産分割協議を行って相続の仕方を決めていきましょう。相続方法が決まったら、名義変更や相続登記などの手続きを進めていきます。場合によっては相続税の支払が必要になるので、早めに手続きを進めていく必要があります。
反対に、相続したくない場合は3か月以内に相続放棄や限定承認の手続きが必要です。相続手続きは期限があるものも多く、状況によっては相続トラブルなどスムーズな相続ができないケースも珍しくありません。スムーズに相続を進めるためにも専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
「遺産相続の手続き」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
世帯主変更届は速やかに手続きしよう
世帯主が死亡した場合、遺された家族に15歳以上が2人以上いるなら世帯主変更届が必要です。反対に、遺された家族が1人だけなどでは世帯主変更届は必要ありません。
世帯主変更届が必要な場合は、死亡日から14日以内に手続きしなければ過料としてペナルティが科せられる恐れがあるので速やかに手続きを行いましょう。死亡後に必要な手続きは、世帯主変更届以外にも多くあります。期限が短いものも多いので、専門家に依頼しながら効率よく手続きを行っていきましょう。