亡くなった家族が保険に加入していたのかどうかがわからず困っていませんか。このようなとき役立つ手段が、生命保険契約照会制度です。制度を使えばどこの生命保険と契約しているかが判明します。本記事では生命保険契約照会制度の活用方法や加入発覚後の手続きについて解説します。早く生命保険金を受け取るために、新しい制度を活用しましょう。
亡くなった家族の生命保険契約加入を調べる方法
家族が亡くなったときに遺族は生命保険の手続きをすることが必須といえるほど、生命保険に加入している方の割合は多いです。しかし、亡くなった方が生命保険に加入していたかどうかや、どこの保険会社と契約を結んでいたかがわからないケースは少なくありません。
亡くなった家族の生命保険契約加入を調べる方法は、主に2つあります。
- 自分で調べる
- 生命保険契約照会制度を活用する
まずは、亡くなった方の自宅に生命保険に関する情報や手がかりがないか確認しましょう。見つからない場合は、生命保険契約照会制度を活用することをおすすめします。
生命保険契約照会制度を活用すれば、生命保険協会が会員となっている生命保険会社に照会をかけて照会受付時に有効に継続している個人契約の有無を確認してくれます。生命保険契約照会制度は令和3年7月1日にスタートしたばかりの新しい制度のため、知らない方も多いかもしれません。
多くの生命保険には請求期限が設けられているため、できるだけ早く保険金を受け取れるよう生命保険契約照会制度を積極的に活用しましょう。
自分で生命保険の契約状況を調べる
まずは、亡くなった方の自宅に保険契約に関する書類がないか確認しましょう。金庫や郵送物に以下のような書類がないかチェックしてみてください。
- 保険証券
- 更新・保険料請求の通知書
自宅に保険契約に関する書類がない場合は、下記をみてみましょう。
- 被相続人の預金口座から保険料が引き落とされていないか
- 確定申告書や年末調整の保険料控除の欄に保険会社名が記載されていないか
- メールにお知らせが届いていないか確認する
- スマホやタブレットに保険会社のアプリがないか
- 保険会社名が入ったカレンダーやクリアファイルなどの粗品がないか
それでも、手がかりが見つからない場合や、すべての生命保険をチェックできているかが不安な場合は、生命保険契約照会制度を活用しましょう。
生命保険契約照会制度を利用する
生命保険契約照会制度とは、生命保険協会が遺族の代わりに会員となっている生命保険会社に照会をかけて、生命保険契約の有無を確認してくれる制度です。
被保険者本人が死亡した場合に加え、認知判断能力低下の場合や災害利用時にも照会制度が利用でき、それぞれ必要な書類が異なります。
死亡時や認知症によって照会をする場合、照会1件あたり3000円(税込)の手数料が発生します。災害による照会の場合には手数料は不要です。
照会するには、郵送またはオンラインで申請を申し込みます。被相続人が生命保険加入の有無について、法定相続人が照会する際に必要な書類は以下の通りです。
- 生命保険契約照会依頼申請書兼同意書(照会代表者が記入)
- 生命保険契約照会依頼委任状兼同意書(複数照会者がいる場合に他の照会者が記入)
- 照会代表者の本人確認書類
- 法定相続人であることが確認できる書類(戸籍謄本や法定相続情報一覧図など)
- 照会対象者の死亡が確認できる書類(死亡診断書など)
照会者と被相続人との関係や、照会理由によって必要書類が異なるため注意しましょう。
また、司法書士や弁護士などの専門家に照会を委任することも可能です。司法書士や弁護士などの専門家に相続手続きとあわせてお任せしてもよいでしょう。
参照:生命保険契約照会制度のご案内|一般社団法人生命保険協会
生命保険判明後の流れ
生命保険契約照会制度を利用すると、2週間程度で生命保険加入の有無がわかります。加入している生命保険が判明したあとの流れは、下記の2つのパターンによって異なります。
- 保険金を受け取る場合
- 受け取るものがない場合
それぞれ詳しく確認しましょう。
保険金を受け取る場合
生命保険を契約していることがわかったら、保険金を受け取るための手続きをしましょう。
請求の手続きは、保険金の受取人が行います。ただし、受取人が認知症を発症している場合や未成年の子どもの場合は、自分で手続きを進められません。このような場合は、代理人が手続きすることもできます。
保険金を受け取るための手続きの流れは、以下の通りです。
- 契約している保険会社に被保険者が死亡したことを通知する
- 亡くなった方の氏名・生年月日・住所・死亡日などを伝える
- 保険会社から「保険金の請求書」を受け取る
- 請求書を作成する
- 死亡診断書や受取人の本人確認書類などの必要書類と請求書を保険会社に送付する
保険会社によって手続きの流れが異なるため、直接確認するようにしましょう。
また、保険金の請求には期限が設けられています。生命保険に加入していることが判明したら、早めに請求手続きを済ませましょう。
受け取るものがない場合
受け取るものがない場合でも、手続きが必要なケースがあります。
たとえば、契約者と被保険者が異なっていて、契約者が亡くなったときです。被保険者の親や祖父母が契約者となって保険料を支払うケースは珍しくありません。
通常、法定相続人が契約者としての権利義務を承継することになりますが、複数人いる場合は代表者1人を定めて手続きをすることが通常です。自動的に承継されるわけではなく、生命保険会社への申し出が必要です。
契約者変更に必要な手続きの流れは、以下の通りです。
- 契約している保険会社に契約者が死亡したことを通知する
- 亡くなった方の氏名・生年月日・住所・死亡日などを伝える
- 保険会社から契約者変更の手続き方法について指示を受ける
- 死亡診断書や新しい契約者の本人確認書類などの必要書類を保険会社に送付する
保険会社によって手続きの流れが異なるため、必ず保険会社へ問い合わせましょう。
死亡保険金にかかる相続税
死亡保険金は、契約者・被保険者・受取人の関係性によって課税される税金の種類が変わります。
関係性 | 課税される税金の種類 |
---|---|
契約者と被保険者が同じ場合 | 相続税 |
契約者と受取人が同じで、被保険者だけが異な場合 | 所得税 |
契約者と被保険者、受取人がすべて異なる場合 | 贈与税 |
契約者と被保険者が同じで受取人が相続人だったとき、相続税の非課税金額が控除されます。一方、相続人以外が受取人だった場合は、非課税金額の控除が適用されず、相続税額に2割加算されることとなるため注意しましょう。
死亡保険金の非課税金額の考え方
契約者と被保険者が同じで受取人が相続人だったとき、非課税になる金額は法定相続人の数によって変わります。算出方法は、下記の通りです。
非課税金額=500万円×「法定相続人の人数」
ただし、下記の点に注意しましょう。
- 相続放棄をした人は法定相続人の人数に含まない
- 養子がいる場合、法定相続人の人数に含められる数に制限がある
実子がいる場合養子は1人まで、実子がいない場合養子は2人まで人数に含められます。
「死亡保険金にかかる相続税」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
生命保険契約照会制度を活用して請求手続きをしよう
亡くなった家族が生命保険に加入していたかどうかがわからない場合、生命保険契約照会制度を活用しましょう。申し込みから2週間程度で、どこの生命保険会社と契約していたかどうかがわかります。
生命保険金がある場合でも、ない場合でも、亡くなった方が契約者である場合は手続きが必要です。とくに生命保険金が支払われる場合は、請求期限が設けられているため、早めに対応するようにしましょう。
相続が発生すると生命保険金の受け取りだけでなく、財産調査や銀行の解約手続きなどのさまざまなことを同時に進めなければなりません。いち早く日常生活を取り戻すために、司法書士や弁護士などの専門家へ相続に関する手続きを一任することを検討しましょう。