相続放棄の期限は3か月!期間の数え方や過ぎた場合の対応策

公開日:2024年2月22日

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相続放棄をするには3か月の期限があるため早めの手続きが必要です。とはいえ、「いつから3か月なのか」詳しくわからない方も少なくありません。また、3か月経過しても事情によっては相続放棄できる可能性もあります。この記事では、相続放棄できる期間や過ぎた場合でも相続放棄できるケース・期間を伸長する方法など詳しく解説します。

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相続放棄の検討期間は?

相続が発生した場合、相続人は相続財産を「相続する」か「相続しない」どちらかを選択することになります。

相続財産が借金ばかりといった場合、「相続しない」選択肢である「相続放棄」を検討することになるでしょう。しかし、相続放棄できる期間は「3か月」と定められています。

3か月を経過してしまうと、相続放棄ができず、相続財産をすべて相続する「単純承認」となります。とはいえ、3か月とはいつからカウントされるのか?などは知らない人が多いです。

本記事では、相続放棄できる期間や関連する事柄について詳しく解説していきます。

熟慮期間の起算日は「相続の開始を知った時」から

熟慮期間とは、相続人が「相続を承認するか」「放棄するか」など、どのように相続するかを判断と決定するために設けられた法定の期間のことです。

相続放棄では、この熟慮期間を「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」と法律により定められています。相続放棄する場合は、この期間内に家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出する必要があります。

相続の開始があったことを知った日とは、単純な相続のケースでは一般的に「被相続人が死亡した日」となります。しかし、「被相続人の死亡日=自己のために相続の開始があったことを知った日」となるわけではありません。

被相続人と相続人の関係性によっては、自分が相続人であることに気づいていないケースも珍しくありません。

相続人であることに気付いていないケースとして、代表的なケースには下記のようなものが挙げられます。

  • 被相続人と遠縁である
  • 被相続人との関係性が希薄で死亡したことを知らない
  • 被相続人の離婚などで相続人であることを知らない

また、被相続人の死亡日時点では相続人でなくても、他の相続人が相続放棄することで後から相続人になる場合もあるでしょう。上記のようなケースの場合、相続放棄できる熟慮期間の開始は「被相続人が死亡した日を知った日」や「自分が相続人であることを知った日」となります。

なお、民法140条により「期間の初日を算入しない」こととされているため、熟慮期間の開始は正確には「被相続人が死亡した日を知った日」や「自分が相続人であることを知った日」の翌日となります。このように、相続放棄できる期間は相続人の事情によってスタート日が異なります。

同じ被相続人の相続人同士であっても、相続放棄できる期間が異なる可能性がある点には注意しましょう。

3か月は申述期限であり、手続き完了期限ではない

先述の通り、相続放棄できる期間である3か月というのは、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出するまでの期間のことです。

相続放棄は、一般的に申請してから受理されるまでに3週間から1か月ほどかかります。相続放棄申述書を提出してから受理されるまでの期間は、3か月に含まれる必要性はありません。

3か月までの間に申請さえしておけば、受理され手続きが完了するのは3か月以降になっても相続放棄は問題なくできるのです。

とはいえ、期限切れ直前で手続きを開始しようとすると、必要書類が集まらないなどトラブルで期限に間に合わない恐れもあるので、早めに手続きするようにしましょう。

相続放棄の期限を過ぎた場合はどうなる?

相続放棄の期限を過ぎた場合はどうなる?のイメージ

相続開始があった日から3か月を経過してしまうと、相続放棄できません。よって、期限を超えると、原則としてプラスの財産もマイナスの財産も含めてすべての相続財産を相続する単純承認となってしまうのです。

ですが、相続放棄には他の選択肢もあります。特に相続財産に借金が多い場合などでは、プラスの財産の範囲でマイナス財産を相続する「限定承認」という選択肢が考慮に入ってきます。

しかし、限定承認ができる期間も、相続放棄同様「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」です。そのため、熟慮期間後には限定承認の選択もできなくなります。

「相続放棄の期間を知らなかった」「仕事が忙しかった」といった理由は基本的に認められないので注意しましょう。

ただし、事情によっては3か月経過しても相続放棄が認められるケースもあります。相続放棄が認められるケースについては、次の章で解説していきます。

期限3か月を過ぎても相続放棄が認められるケース

3か月経過していても、事情によっては相続放棄が認められるケースもあります。ただし、どのような事情であれば期限を超えても認められるのかは、明確な基準は設けられていません。認められるかどうかは家庭裁判所の判断によるため、安易に期限を超えることはおすすめできません。

3つの要件を満たす

とはいえ、どのようなケースで期限を越えても相続放棄が認められるかはある程度傾向があります。

裁判所のHPでは、相続放棄の申述期限に関して下記のように述べています。

ただし,相続財産が全くないと信じ,かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは,相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3か月以内に申述すれば,相続放棄の申述が受理されることもあります。

引用:相続の放棄の申述|裁判所

上記の内容などから考えたとき、期限を超えた相続放棄が認められるには下記の3つの要件を満たす必要があると推測されます。

  • 相続放棄の動機となる財産や債務の存在を知らなかった
  • 知らないことについて相当な理由がある
  • 知ってから3か月以内に相続放棄申述書を家庭裁判所に提出する

相続開始から3月の間に借金の存在が判明せずに、後から督促などで借金の存在が明らかになったケースなどは認められやすい傾向があるようです。ただし、上記の例では借金の存在を知らなかったことについては、相当な理由が必要です。

理由としては、下記のようなものであれば認められる可能性があります。

  • 被相続人の生前中にまったく関りがなく、借金の存在を知りようがなかった
  • 財産がほとんど見当たらなかった
  • 専門家に依頼して財産調査をしたが、借金の存在が見つからなかった
  • 借用書などの借金に関する書類がすべて破棄されていた

上記のように、借金の存在に気付かなかったのもやむを得ないと認められるような理由があるかは重要になります。そのうえで、借金の存在を知った日から3か月以内に相続放棄の手続きを行っておくことも必要です。

3つの要件を満たしていれば相続放棄を認めてもらえる可能性が高いとはいえ、認めてもらうためには裁判所に効果的に理由を添えて申述する必要があります。期限を超えてしまった場合は、できるだけ早く専門家に相談することをおすすめします。

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再転相続

借金以外で熟慮期間の3か月経過しても相続放棄が認められるケースに「再転相続」が挙げられます。

再転相続とは、熟慮期間中に相続人が放棄か相続の決定をする前に死亡してしまい、次の相続が発生することです。

たとえば、被相続人Aの相続人が配偶者Bと子どもCとしましょう。ちなみに、子どもCには配偶者と子どもがいます。

この状態で、被相続人Aが死亡してから子どもCが相続放棄か相続かを選択する前に死亡すると、子どもCの配偶者と子どもにAとCの遺産の相続が発生します。なお、被相続人Aの相続を一次相続、被相続人Cの相続は二次相続と呼ばれます。

この場合、子どもCの配偶者と子どもはAとC両方の財産について、相続放棄か相続かを決める必要があります。

この場合、相続放棄の熟慮期間の計算には注意が必要です。二次相続(被相続人Cの相続)は、Cの死亡から起算されます。

一方、一次相続(被相続人Aの相続)の熟慮期間は、通説では「Cの死亡を知ってから」といわれています。しかし、もし被相続人AとCの子どもに交流がなく、Aの借金について把握していない場合、熟慮期間が経過してしまう恐れがあります。

そのため、事情によっては一次相続の熟慮期間がAの相続人であることを知った日から起算されるケースがあるのです。ただし、再転相続では一次と二次の相続を承認・放棄できるパターンが下記のように決まっています。

一次相続二次相続
パターン1放棄放棄
パターン2放棄承認
パターン3承認承認
不可承認放棄

上記のように、一次相続を承認して二次相続も承認、または一次相続を放棄して二次相続を放棄・承認することは可能です。対して、一次相続のみ承認して二次相続を放棄することはできません。

上記の例で言うなら、被相続人Cの相続財産にはAの財産を引き継ぐ権利も含まれています。Cの子どもがCの相続権を放棄すれば、そもそもAの財産を引き継いだり放棄したりする権利も放棄していることになるのです。

上記のように、再転相続では熟慮期間の起算日や相続放棄のパターンなどが複雑になる恐れがあります。再転相続で相続放棄を検討している場合、一度専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄の期限を延長する方法

熟慮期間を超えても相続放棄が認められる可能性があるとはいえ、期限を超えてしまうと確実に放棄できる確証はありません。

しかし、熟慮期間を超えることが予測され、かつ期限内であれば、熟慮期間を延長する手段があります。それが、期限の伸長です。

相続の承認または放棄の期間の伸長とは

期間の伸長とは、熟慮期間中に家庭裁判所に申述することで、熟慮期間を延長してもらう方法です。期限を延長することで、3か月を経過しても相続放棄を申請できます。

ただし、期間の伸長は「仕事が忙しい」などどんな理由でも認められるわけではありません。伸長するやむを得ない理由があると家庭裁判所に認めてもらう必要がある点には注意しましょう。

一般的に、下記のようなケースでは期間の伸長が認められやすい傾向にあります

  • 借金の総額が分からず、調査と判明に時間がかかる
  • 海外にも財産があるなど相続財産が多岐にわたるため、財産の特定に時間がかかる
  • 3か月の期限切れ直前に借金が判明して再調査が必要になった
  • 相続人の所在がわからない

期間を延長する場合、申立書に理由などを記入して手続きする必要があります。

理由の記入が重要なポイントになるため、期間の伸長を考えている場合は専門家に相談することを推奨します。

期間の伸長が認められない可能性もある、限定承認も視野に入れる

期間の伸長は理由によっては認められない可能性もあります。また、認められても伸長できる期間や回数は、事情によって異なるので注意が必要です。

期限切れ直前で伸長が認められないとなると、相続放棄が間に合わずに経済的負担となる場合もあり得ます。

そのため、期限が迫っているのに借金の総額が判明できないといったケースでは、限定承認を視野に入れることをおすすめします。

限定承認とは、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続する方法です。

仮に、現預金で300万円、借金が500万円という場合で限定承認すれば、借金は300万円までしか背負う必要はありません。

このようにプラスの財産もあるけどマイナスの財産があり、マイナスの財産の総額がわからないというケースでは、限定承認が適している場合もあります。限定承認後に、あとから高額な借金が判明してもプラスの財産を超える負担を負う必要がありません。

反対に、マイナスの財産がプラスの財産よりも少ないことが判明すれば、プラスの部分を受け取ることができます。また、限定承認であれば不動産など相続したい財産を手元に残すこともできます。

ただし、限定承認は相続人全員の合意が必要になり、誰か1人でも反対していると手続きが難しいなどデメリットもあります。相続放棄の期限が迫っているが、限定承認を検討しているという場合は、一度専門家に相談してみるとよいでしょう。

相続放棄の期限が迫っているなら早めに専門家に相談を

相続放棄には3か月という期限があり期限を超えると相続放棄できません。ただし、事情によっては期限を超えても相続放棄できるケースもあるので、諦めずに専門家に相談するとよいでしょう。

とはいえ、期限を超えると相続放棄できない可能性も高くなるので注意が必要です。期限切れ前であれば、期限の伸長や限定承認の選択など取れる対応もまだあります。

期限が迫っているけどどうすればいいのかわからない、という場合は早い段階で専門家に相談して、円満に相続できるようにしましょう。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て平成30年よりライターとして独立。令和2年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識などわかりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年2月22日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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