自治体の行政代執行による空き家解体が増加中、解体のリスクと対策は

公開日:2024年6月14日

自治体の行政代執行による空き家解体が増加中、解体のリスクと対策は_サムネイル

倒壊のリスクや衛生面で危険のある空き家を、自治体が解体する動きが活発になっています。令和6年5月には、大阪府堺市の住宅街にある空き家の解体が行われました。空き家の増加は社会問題になっており、今後も自治体による解体は増加していくと予想されます。どのようなケースで自治体による解体が行われるのでしょうか。事例をもとに解説します。

大阪府堺市の空き家取り壊し

大阪府堺市は令和6年5月1日に、市内のとある空き家を取り壊すと発表しました。市の発表によると、この空き家は屋根と外壁の一部が崩落し、柱の腐朽も進んでいることから、放置すれば倒壊により地域住民や前面道路の通行に危害を及ぼすおそれが高い状態だったようです。

また、空き家の登記簿上の所有者は既に死亡しており、さらに相続人を特定することもできない状態だったとのことです。このことから市は、所有者による自主的な解決が見込めないと判断し、解体を決定しました。

この取り壊しが行われた背景には、自治体の判断で行政代執行による空き家解体ができるようになる、空き家対策特別措置法が関係しています。

参考:特定空家等を代執行により除却します|堺市

自治体の行政代執行による空き家解体

空き家対策特別措置法は、増加する空き家への対策として平成27年に施行された法律です。これによって、自治体は保安や衛生面で危険がある空き家を「特定空き家」として認定し、その所有者に改善を求めるための指導・勧告・命令・代執行を行えるようになりました。この特定空き家への最も重い措置が、行政代執行による解体です。

空き家の増加は社会問題になっており、行政代執行による解体も年を追うごとに増加しています。特定空き家に対する行政代執行が行われた件数は、平成27年度には2件でしたが、令和3年度にはその数が47件にまで急増しました。この件数は、今後も増加していくと予想されます。

参考:我が国の空き家の現状と最新の政策動向について|国土交通省

行政代執行を受けることのリスク

行政代執行による空き家の解体は、自治体の保安や衛生を守るために行われるものなので、地域にとっては良いことですが、空き家の所有者にとってはさまざまなリスクが伴います。

解体費用を請求される

行政代執行による空き家の解体が行われる場合、その費用は空き家の所有者に請求されます。さらに行政代執行は、速やかに空き家を解体することを目的に行われるため、解体費用を抑えることはあまり考慮されません。そのため、高額な解体費用を請求されることもありえます。

解体費用を支払えない場合は財産を差し押さえられる

行政代執行の解体費用は空き家の所有者に請求されますが、その費用は強制徴収が認められています。解体費用を支払えない場合は、財産を差し押さえてでも回収するということです。国土交通省の資料にも、差し押さえが行われた事例が公開されています。

<差し押さえが行われた事例>

自治体:新潟県十日町市
行政代執行日:平成29年1月11日
解体費用:約270万円

自治体:千葉県柏市
行政代執行日:平成29年4月20日
解体費用:約1040万円

自治体:北海道旭川市
行政代執行日:平成29年12月4日
解体費用:約410万円

参考:地方公共団体の空き家対策の取組事例2|国土交通省

ニュースへの露出や氏名の公開による社会的信用の低下

行政代執行による空き家の解体は、空き家問題への社会的関心が高いこともあって、テレビや新聞などで報じられることが多くなっています。さらに行政代執行を行う際に、空き家所有者の氏名を公表できると条例で定めている自治体もあります。こうしたことから、行政代執行を受けると社会的信用の低下につながる恐れがあります。

行政代執行を受けないために

空き家の所有者が自治体から行政代執行を受けないようにするためには、その空き家が特定空き家に認定されないように対策をしなければなりません。対策の方法としては、以下の3つが挙げられます。

  • 空き家を修繕する
  • 空き家を解体する
  • 空き家を売却する

これらの対策のうち、修繕と解体には高額な費用がかかる可能性があります。さらに修繕・解体をしたあとも管理をしなければならないので、その後の活用のことまで考慮して実施する必要があります。もとが空き家であることを考えると、売却が現実的な解決策と言えるでしょう。

相続によって空き家を取得することになった場合には、相続の手続きとあわせて売却までサポートしてくれる専門家も増えてきているので、そうした専門家に相談することをおすすめします。

相続プラスでは、不動産の相続に関する基礎知識や、空き家を相続してしまった際の注意点を、分かりやすい記事で解説しています。空き家の相続にお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。

記事の著者紹介

相続プラス編集部

【プロフィール】

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

専門家をさがす

専門家に相談するのイメージ

本記事の内容は、記事執筆日(2024年6月14日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

記事をシェアする