近年はスマホの普及により固定電話を持たない方も増えている傾向にありますが、高齢者の方には固定電話を持っている家庭もまだ多いものです。
実は、固定電話には、「電話加入権」という権利があり、相続財産の対象となるため相続手続きが必要になります。
この記事では電話加入権の評価方法や相続手続きについて分かりやすく解説します。
電話加入権とは
電話加入権とは、加入電話回線を契約するための権利のことです。
NTT東日本・NTT西日本の電話回線を自宅内に引き込んで、通信サービスを利用するために必要になります。電話加入権は施設設置負担金とも呼ばれ、この購入者の権利自体が財産となるのです。
ただし、使用している電話によっては加入権が不要なものもあるため、自宅に固定電話があるからと言って必ずしも電話加入権があるとは言い切れません。電話加入権があるか不明な場合は、契約している電話会社に確認するとよいでしょう。
電話加入権の相続上の取り扱いについて
ここでは、電話加入権の相続上の取り扱いについて見ていきましょう。
電話加入権は相続財産?
相続財産では、現金や預貯金だけでなく各種権利やライセンスも対象となり、電話加入権も含まれます。電話加入権も相続税の対象となるため、正しく価値を評価する必要があるのです。
電話加入権の評価や申告方法
電話加入権の評価方法には、次の3つがあります。
取引のない電話加入権…電話取扱局毎に国税局が定めた標準価額
特殊番号の電話加入権…上記2つのいずれかをベースとして評価額を適宜増減
取引相場のある電話加入権は、課税時期の通常取引の金額によって評価されます。一方、取引相場のない電話加入権は、国税局が定める標準価額を用いており、現在は全国一律1500円です。
基本的には、ほとんどの電話加入権がこの取引相場のない電話加入権の評価額となります。
特殊番号とは、1〜10や100と言った呼びやすい番号や、42のように嫌がられるような番号のことです。特殊番号の場合は、先述した評価方法での金額をベースにして、売買事例や精通者の意見を参考に金額が増減されます。
ただし、2021年1月1日以降の相続では、電話加入権は家庭用財産としてまとめて一括評価となっているので注意しましょう。
申告方法
電話加入権の評価額は1500円程と相続税に大きな影響を与えるものではありません。しかし、相続財産であり相続税の対象となる金額なので、必ず相続財産に加算したうえで相続税申告する必要があるので注意しましょう。
電話加入権の相続手続きの流れ
電話加入権の相続手続きとしては、「被相続人から相続人への名義変更」が必要になります。名義変更の大まかな流れは以下の通りです。
- 必要書類準備
- NTT加入権センターに郵送
必要書類準備
NTTホームページから、「電話加入権等承継・改称届出書」をダウンロード。必要事項を記入し、添付書類を用意します。
添付書類としては、以下のような書類が必要です。
- 戸籍謄本または戸籍抄本
- 相続関係を確認できる書類(遺言書や法定相続情報一覧図など)
- 相続人の本人確認書類(運転免許所など)
公的な証明書の発行期限は管轄のNTTにより異なる場合があります。必要書類は、ホームページで案内されているので、事前に確認してもれなく用意しましょう。
NTT加入権センターに郵送
届出書と添付書類をNTT加入権センターに郵送すれば、手続き終了です。名義変更手続きは、無料で手続きできます。
名義変更以外の手続き
電話加入権を相続しても利用することがないという方もいるでしょう。そのような場合は、「解約」または「休止」手続きが必要です。解約手続きの場合は、利用を完全に止めるため復活できず権利金の返還もありません。
対して休止の場合は、原則5年間休止できますが、復活時には名義変更が必要です。解約・休止とも管轄のNTTセンターへ連絡が必要となり、手続きのための手数料が発生します。
電話加入権は、相続後も契約を続けていると基本料金が発生するものです。高額ではありませんが、ずっと払い続けると負担も大きくなるため、相続トラブルのきっかけになる可能性があります。
相続した場合は、必ず相続手続きを早めに済ませておくようにしましょう。
おわりに
電話加入権の相続についてお伝えしました。若い世代にはあまり馴染みがない固定電話ですが、高齢者の場合は利用している方も多く、電話加入権を相続する可能性があります。
相続後に手続きを放置していると、基本料が請求され続けるため早めの相続手続きをすることをおすすめします。