旗竿地の相続税は安くなるって本当?具体的な計算方法と注意点

公開日:2025年2月21日

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旗竿地は特殊な形をしているため一般的に正方形や長方形のきれいな土地よりも評価額が下がり、結果として相続税も安くなる可能性があります。これから旗竿地を相続するなら旗竿地の評価方法を理解しておくことが大切です。この記事では、旗竿地の相続税評価の計算方法や注意点を詳しく解説します。

旗竿地は相続税が安くなる?

ここではまず、旗竿地の概要と相続税との関係について確認していきましょう。

旗竿地とは

旗竿地とは、道路に面する間口から細い路地が奥にあるまとまった敷地に伸びている形状の土地です。上空から見ると路地部分が竿、奥のまとまった土地が旗のように見えることから旗竿地と呼ばれます。

土地は、以下の2種類に分類され旗竿地は不整形地の1種です。

  • 整形地:四角形や長方形の整った形の土地
  • 不整形地:整形地以外の土地(三角形や台形・いびつな形の土地など)

旗竿地は整形地に比べ活用に制限がかかりやすいため、相続する場合はメリット・デメリットを理解したうえで保有か手放すかを検討するようにしましょう。

旗竿地は評価額が安くなる

旗竿地は、特徴的な形状により建築時や解体時、また法的に制限がかかることのある土地でもあります。建築や解体に制限がかかる・現行の建築基準法に適していないなどデメリットの多い土地であることから、整形地よりも評価額が下がるのが一般的です。

相続税を算出する際には相続税評価額が用いられます。旗竿地は相続税評価額が整形地よりも安くなるため、相続税が安くなるというメリットがあります。

旗竿地の相続税評価はどのように計算する?

旗竿地の相続税評価はどのように計算する?のイメージ

相続税計算の際、土地の評価方式には以下の2種類があります。

  • 倍率方式
  • 路線価方式

倍率方式

倍率方式とは、土地に設定されている倍率を用いて評価額を算出する方法です。

倍率方式の評価額:固定資産税評価額×倍率

固定資産税評価額に倍率を乗じるだけのシンプルな計算で求められます。たとえば、土地の固定資産税評価額が3000万円で倍率が1.2倍なら相続税評価額は3000万円×1.2=3600万円です。倍率は地域によって異なり、国税庁のホームページでチェックできるので確認するとよいでしょう。

なお、倍率方式は、後述する路線価が定められていない土地の評価額を算出する際に利用します。一般的には郊外や市街化調整区域などが倍率方式の対象です。また、旗竿地の固定資産税評価額自体がすでに補正を加えて低く設定されているため、路線価方式のように補正を加えなくても相続税評価額は低くなります。

路線価方式

路線価とは国税庁が定める主要な道路に面する土地の評価額です。この路線価を用いて土地の評価額を算出する方法が路線価方式となります。

旗竿地を路線価方式で評価する場合、通常の路線価方式で算出する方法と差し引き計算で算出する方法の2種類があります。どちらで計算しても問題ありませんが、少しでも評価額が低くなる方法を選ぶ方が相続税の節税につながります。

差し引き計算の方が評価額は低くなるケースが一般的なので、ここでは差し引き計算での計算方法をみていきましょう。差し引き計算とは、想定整形地の評価額からかげ地の評価額を差し引く計算方法です。具体的には、以下の4つのステップで算出することができます。

路線価を調べる

路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べられます。調べたいエリアで絞り込み、該当の土地が面する道路の路線価をチェックしましょう。

奥行価格補正を調べる

奥行価格補正とは、奥行きが長すぎる・短すぎる土地の評価額を調整する補正率です。想定整形地・かげ地の評価額はそれぞれ「路線価×地積×奥行価格補正」で求めるため、奥行価格補正を調べておきましょう。

なお、想定整形地・かげ地とは土地のうち、以下の部分のことを指します。

  • 想定整形地:旗竿地を含む最小面積の長方形
  • かげ地:推定整形地のうち評価対象外となる部分(土地が欠けている部分)

奥行価格補正は、国税庁のホームページに掲載されている「奥行価格補正率表」で調べられます。普通住宅地や普通商業など土地の区分と奥行きの長さごとに、補正率が定められているので該当する土地の補正率をチェックします。土地の区分は路線価ごとに定められているので、路線価をチェックする際に合わせて確認しておきましょう。

差し引き計算をする

差し引き計算は、想定整形地の評価額からかげ地の評価額を差し引いて算出します。

旗竿地の評価額:推定整形地の評価額-かげ地の評価額

たとえば、以下の条件で計算してみましょう。

  • 旗竿地の面積:320㎡(奥行き30m・間口2m)
  • 路線価:10万円/㎡
  • 推定整形地の面積:450㎡(奥行き30m×幅15m)
  • かげ地の面積:130㎡(奥行き10m×幅13m)
  • 土地の区分:普通住宅地

奥行価格補正は推定整形地で0.95・かげ地で1.00のため、それぞれの評価額は以下のようになります。

  • 推定整形地の評価額:10万円×450㎡×0.95=4275万円
  • かげ地:10万円×130㎡×1.00=1300万円

よって、旗竿地の評価額は以下の通りです。

旗竿地の評価額:4275万円-1300万円=2975万円

旗竿地の1㎡あたりの価格は、2975万円÷320㎡=9万2969円となります。

不整形地補正を計算する

旗竿地1㎡あたりの価格を算出したら、さらに不整形地補正で調整します。不整形地補正とは、不整形地の評価額を調整する補正率です。不整形地補正では、以下の2種類のうち補正率が小さい方で計算します。

  • 不整形地補正率×間口狭小補正率
  • 間口狭小補正率×奥行長大補正率

それぞれの補正率は国税庁のホームページでチェックできます。前述の例の場合、以下の通り計算します。

  • 不整形地補正率(0.92)×間口狭小補正率(1.00)=0.92
  • 間口狭小補正率(1.00)×奥行長大補正率(0.90)=0.90

なお、補正率の下限は0.60となり、計算結果がそれより小さい場合は0.60での計算となるので注意しましょう。

先ほど求めた旗竿地の評価額が9万2969円/㎡なので、不整形地補正まで加えてた評価額は以下の通りです。

相続税評価額:9万2969円×320㎡×0.90=約2676万円

旗竿地の相続税評価計算における注意点

旗竿地の相続税評価を計算する際には、以下の2点に注意が必要です。

  • 間口が2m未満であれば無道路地として計算する
  • 自分で計算するとミスが起こりやすい

間口が2m未満であれば無道路地として計算する

無道路地とは、道路に接していない土地です。建物を建てるためには「建築基準法上の道路に土地が2m以上接する」という接道義務を満たす必要があります。

間口が2m未満では建物を建築できず利用が制限されるため、評価額はより下がるようになっているのです。そのため、旗竿地として計算するよりも無道路地として計算したほうが評価額は下がる可能性があります。

無道路地の計算は複雑になりミスもでやすいため、税理士などの専門家への相談をおすすめします。

自分で計算するとミスが起こりやすい

旗竿地の評価額の計算方法をお伝えしましたが、実際に自分で計算するのは容易ではありません。きれいな長方形に分割できる旗竿地なら比較的計算しやすいでしょうが、実際にはいびつであったり奥行きの正確な距離が分からなかったりと複雑になるケースも少なくありません。

自分で旗竿地の評価額を計算して相続税申告し、ミスがあると修正申告が必要になり手間や時間もかかります。また、不動産の評価額や相続税には特例や控除も多く用意されており、ケースに応じて使い分けも必要です。

税務署は特例を適用していなかったからといって通知してくれるわけではないため、税金を多く払い過ぎないためには、税金や不動産の知識も必要になります。今回紹介した評価額の計算方法はあくまで目安として、実際に土地や相続税を計算する際には、専門家への相談をおすすめします。

旗竿地の評価額の計算は専門家に相談を

旗竿地は整形地に比べ補正が適用できるため評価額が安くなります。しかし、旗竿地の評価額計算は複雑になりやすく、計算ミスは相続税にも関わってきます。

計算ミスにより多く納税してしまった場合、自分から更正の請求をしない限りは還付を受けることはありません。一方、計算ミスにより少なく納税してしまった場合、税務署により指摘を受け、過少申告加算税などペナルティを受ける可能性がある点には注意が必要です。

旗竿地を相続し相続税が発生しそうな場合は、専門家に相談することをおすすめします。

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記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て平成30年よりライターとして独立。令和2年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識などわかりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年2月21日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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