公正証書遺言の証人(立会人)の資格・要件は?誰がなれるかや依頼費用など解説

公開日:2024年10月24日

公正証書遺言の証人になる資格・要件とは?証人になれる人・なれない人や費用など解説_サムネイル

公正証書遺言を作成する際には証人を2名用意する必要があります。証人は親族や知人でも問題なく、用意が難しい場合は公証役場に紹介してもらったり専門家に依頼したりも可能です。この記事では、公正証書遺言作成で必要になる証人の基本やなれる人・依頼する際の費用目安・証人になる場合の注意点について詳しく解説します。

公正証書遺言の証人(立会人)とは

公正証書遺言の証人とは、公証役場で公正証書遺言を作成する際に立ち会い、遺言者の意志を反映しているかなどを第三者の立場でチェックする役割を担う人です。立会人と呼ばれる場合もあります。

ここでは、まず証人の基本を押さえていきましょう。

公正証書遺言の作成には証人が2人必要

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書のことをいいます。

遺言書の中でも自分で作成する「自筆証書遺言」は、形式を満たしていないなどで法的に不備になるリスクがあります。また、自分で保管するため、改ざんされるリスクやそもそも相続時に発見してもらえない可能性もあるでしょう。それらのリスクを避けやすいのが、公正証書遺言です。

公正証書遺言は、作成後の原本は公証役場で保管されるため、紛失や改ざんのリスクが低くなります。遺言者から聞きとった内容をもとに法の知識を有した公証人が作成してくれるため、形式不備などで無効になるリスクもほとんどないのです。そのため、希望の相続を実現するためのより有効的な遺言といえます。

公正証書遺言を作成する際は、遺言者と公証人以外に証人2名の立ち合いが必要です。証人は遺言書作成に立ち会い、以下のようなことを確認する役割を担います。

  • 遺言者が本人に相違ないか
  • 正常な判断力があるか(認知症や精神状態の確認)
  • 自分の意志で遺言書を作成しているか
  • 遺言書は遺言者の意思を反映しているか

上記を確認し問題なければ署名・押印することになるため、証人の役割は重要です。そのため、証人の役割を理解したうえで適切な人に証人となってもらう必要があります。

証人の手配方法とよくある依頼先

証人の手配方法・依頼先として一般的には、以下の3つが挙げられます。

  • 親戚(四親等内の親族や推定相続人・受遺者の配偶者・直系血族などを除く)や知人に依頼する
  • 公証役場に紹介してもらう
  • 専門家に依頼する

証人は基本的に自分で用意する必要があります。信頼できる知人などがいる場合は、相談してみるとよいでしょう。

しかし、周りに証人を依頼できるような知人がいないケースは少なくありません。また、証人は遺言書の内容を確認するため、知り合いに内容を知られたくないという方も多いでしょう。

そのような場合は、公証役場で証人の紹介を受けることや司法書士や弁護士といった士業へ依頼することもできます。専門家であれば、内容が知られても第三者に漏らされる心配もなく、証人としてだけでなく遺言書作成からサポートを受けることも可能です。

一般的には、信頼できる知人や専門家に依頼するケースが多いので検討してみるとよいでしょう。また、自分で証人を用意する場合は、証人になれる人について理解しておくことが重要です。

「公正証書遺言」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

公正証書遺言の証人に資格はある?証人になれる人・なれない人

ここでは、公正証書遺言の証人になれる人・なれない人についてみていきましょう。

証人になれる人

証人になるために特別な資格は不要です。弁護士のように何か資格を持っている必要はありません。血縁関係がない友人・知人であっても問題なく証人になれるため、信頼できる周りの人に依頼するとよいでしょう。

ただし、次に紹介する「証人になれない人」に当てはまると証人にはなれないので注意が必要です。

証人になれない人(欠格事由)

以下の事由に該当する人は証人にはなれません。

  • 未成年者
  • 推定相続人
  • 受遺者
  • 推定相続人・受遺者の配偶者および直系血族など
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人

推定相続人とは現時点で相続人になると推測できる人です。たとえば、Aさんに配偶者と子どもがいて、仮に今Aさんが亡くなった場合相続人となるのは配偶者と子どもとなるので、Aさんの推定相続人は「配偶者・子ども」となります。

相続人になる予定の人やその配偶者などが遺言書の作成に関わっているとなると、遺言内容に不公平が生じやすくなります。遺言内容の公正さを保てないという理由で、そのような立場の人は証人にはなれないので注意しましょう。また、公証人に近い人が関わっていると遺言書のチェック機能が働きにくくなることからそのような人も証人にはなれません。

上記のような証人になれない人は欠格者と呼ばれます。欠格者が証人になると公正証書遺言が無効になってしまうので注意しましょう。とくに、自分で知人などに依頼する場合は、欠格事由に該当しないかを慎重に判断することが大切です。

秘密証書遺言の場合も同様

秘密証書遺言とは、遺言者自身で作成し、内容は秘密にしたまま存在だけを公証役場で証明する遺言書です。秘密証書遺言の保管時にも、公正証書遺言同様2名の証人が必要になります。この場合も、証人になれる人・なれない人の条件は公正証書遺言作成時と同じなので覚えておきましょう。

秘密証書遺言は、立ち会い時に遺言の内容が明らかにされるわけでないため証人に内容を知られることはありません。ただし、秘密証書遺言は原本が公証役場に保管されることはなく自身での管理が必要です。

また、法的な形式の不備などはチェックされないので、無効になるリスクがある点には注意しましょう。

公正証書遺言の証人の依頼費用

公正証書遺言の証人の依頼費用のイメージ

証人を依頼する場合、基本的には費用が発生します。ここでは、証人依頼時の費用についてみていきましょう。

司法書士や弁護士などの士業に依頼する場合

司法書士や弁護士といった専門家に依頼する場合は、依頼料が必要です。一般的には、証人のみ依頼するのではなく遺言書作成全般を依頼してその一環として証人となってもらうケースが多いでしょう。

遺言書作成を依頼した場合の費用の目安は、弁護士で20~30万円・司法書士で5~20万円ほどです。ただし、依頼内容や依頼先によっても大きく異なるので、事前に見積もりをとって依頼するようにしましょう。

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公証役場で紹介してもらう場合

公証役場で紹介してもらった場合、証人に謝礼として立ち合い費用を支払います。費用は公証役場によっても異なりますが、1人につき5000~1万円ほどが目安です。

具体的な費用については作成する公証役場に確認しましょう。

自分の知人に依頼する場合

自分で用意する場合は、とくに費用はかかりません。しかし、証人の負担を考え謝礼を支払うのが一般的です。謝礼についての規定はありませんが、1人当たり5000~1万円程度というケースが多いでしょう。

「公正証書遺言の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

公正証書遺言の証人になった際に知っておきたいこと

証人は依頼する側になるだけでなく、自分が証人になるケースもないわけではありません。また、依頼する側であったとしても、証人にどのような負担があるのかを理解したうえで依頼することが大切です。

ここでは、公正証書遺言の証人になった際に知っておきたいこととして、以下の2つを解説します。

  • 公正証書遺言作成時における証人の動き
  • 証人の責任と考慮すべきトラブル

公正証書遺言作成時における証人の動き

証人は、遺言書作成当日に公証役場に出向いて立ち会います。作成日時は、公証役場の営業時間である平日9~17時が一般的で、立会時間は30~1時間ほどが目安です。

また、証人は当日「印鑑(シャチハタ不可)」と「本人確認書類」が必要になります。証人にはあらかじめ、公証役場に平日出向く必要があること・ある程度時間がかかること・当日必要なものを伝えておくようにしましょう。

作成当日は以下のような流れで作成が進みます。

  • 遺言者と証人の本人確認
  • 公証人による遺言書の読み上げ
  • 内容に問題なければ署名・押印
  • 公正証書遺言書の正本・謄本の交付

遺言書は、事前に行われる公証人と遺言者の打ち合わせによって当日までに用意されています。当日は、作成した遺言書を公証人が読み上げるので、内容を確認していきましょう。内容に問題がなければ、遺言書に遺言書・公証人・証人2名がそれぞれ署名・押印して遺言書が完成です。

なお、遺言者が入院など出向くのが難しい場合、公証人が入院先などに出張して作成するケースもあります。その場合は、証人も公証役場ではなく出張先に行くことになります。

証人の責任と考慮すべきトラブル

証人は、遺言作成に立ち会い遺言書に署名押印するため、作成後にも責任を負います。また、そのことで後日トラブルに巻き込まれる恐れもある点は注意しましょう。

相続開始後スムーズに相続が進めば、問題が起きることはありません。しかし、遺言内容でトラブルになると遺言内容を確認した人として証人が巻き込まれるケースがあります。

代表的なものが、遺言書の無効が主張された際に、証人が遺言書作成時の証言のために裁判所に出頭を命じられるケースです。出頭を命じられると証人は正当な理由がなければ証言を拒絶できず、拒絶すると過料などのペナルティがあります。

また、公正証書遺言作成時に、故意や過失により問題点を見過ごして署名・押印すると、損害賠償請求を受ける恐れもあるのです。

公正証書遺言は、法的な無効のリスクの少ない遺言書です。とはいえ、遺言書でトラブルに発展しない保証はありません。そのため、公正証書遺言作成後に証人が遺言書のトラブルに巻き込まれるリスクも0ではない点は覚えておきましょう。

証人を依頼する・証人に依頼された、どちらであっても証人には責任とリスクがあることは理解しておくことが大切です。

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遺言作成は専門家に相談を

公正証書遺言を作成する際には2名の証人を用意する必要があります。自分で知人などに証人を依頼することも可能ですが、欠格事由に該当すると遺言が無効になります。また、相続時に遺言書でトラブルになると証人が巻き込まれるリスクもある点は理解しておくことが重要です。

証人は遺言内容を把握することになるので、信頼できる人であるかも重要になってきます。適切な証人を自分で見つけられないなら、弁護士や司法書士といった専門家に依頼することをおすすめします。

専門家であれば、証人だけでなく遺言作成段階からサポートしてくれるので、相続トラブルを避け希望する相続を実現しやすくなるでしょう。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年10月24日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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