遺言書はどうやって探すの?種類別の探し方と遺言検索システムの使い方

公開日:2024年8月21日

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遺言書の有無は相続の仕方を大きく左右するため、相続開始後まずは遺言書を探す必要があります。しかし、遺言書の場所やそもそも存在するのかもわからずに苦労するケースは少なくありません。この記事では、遺言書の種類別の探し方や遺言検索システムの使い方、探すうえでの注意点について解説します。

遺言書があるかどうかを調べるためには?

遺言書がある場合、相続の方法は原則として遺言書の記載内容が優先されます。また、遺言書がない場合には遺産分割協議で分割方法を決めることになります。そのため、遺言書の有無を確認しなければ次のステップに進むことができません。

仮に、遺産分割協議後に遺言書が見つかったとしても、原則として遺言書が優先されます。その場合、遺産分割協議をなかったことにするか、再度遺産分割協議をやり直すなどが考えられますが、いずれにせよかなりの手間が発生するでしょう。さらに、遺言書が後から見つかることでトラブルに発展する可能性もあるため、遺産分割協議前の遺言書の有無の確認は欠かせません。

遺言書について生前何かしら聞いている場合は、その情報を元に探すとよいでしょう。とはいえ、生前中に遺言書の内容を知られたくないと被相続人が遺言書の存在を明らかにしていないケースは少なくありません。

仮に、遺言書の存在を伝えている場合でも、保管場所までは伝えていないケースも多いものです。遺言書の存在がわからない・保管場所がわからないという場合は、可能性のある場所をすべて探す必要があります。

よくある遺言書の保管場所

遺言書の保管場所がわからない場合、やみくもに探していても時間がかかってしまいます。保管されている可能性が高い場所から探していくとよいでしょう。

よくある保管場所としては、以下のようなケースがあります。

  • 自宅の金庫
  • 通帳などを保管している場所
  • 書斎や個人の机
  • 仏壇の近く
  • 日記やアルバムを保管している場所
  • 銀行の貸金庫や信託銀行
  • 事業を営んでいた場合は事務所
  • 弁護士などの専門家に預けている

被相続人が大切なものを保管している場所に遺言書も保管しているケースが多いので、まずはそのような場所を探します。被相続人と親しい友人やお世話になっている弁護士が保管場所を知っている可能性もあるので、聞いてみるのもよいでしょう。

また、遺言書の種類によって探し方は異なってくるので、種類別の探し方も押さえておくことが大切です。

遺言書種類別の探し方

遺言書には、次の3つの種類があります。

  • 公正証書遺言:公証役場で作成し保管する遺言書
  • 自筆証書遺言:自筆で作成し保管する遺言書
  • 秘密証書遺言:自筆で作成し存在を公正役場で証明する遺言

それぞれの探し方は以下の通りです。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言書です。作成後は、公証役場に原本が保管されるため、公証役場に問い合わせれば遺言書の有無が確認できます。平成元年以降に作成された公正証書遺言については、作成年月日などの情報をデータで管理しているので、「遺言管理システム」を利用して全国どこの公証役場からでも検索できます。

ただし、検索できるのは被相続人生前中は本人のみ、死後は相続人などの利害関係者とその代理人となっているので注意しましょう。遺言管理システムについては、後ほど詳しく説明するので参考にしてください。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、被相続人が自筆して作成した遺言書です。作成後は自分で保管するため、遺言書の有無や保管場所がわからない場合は、思い当たる場所を隅々まで調べていく必要があります。

ただし、自筆証書遺言でも自筆証書遺言書保管制度を利用していれば、法務局で存在を確かめることが可能です。自筆証書遺言書保管制度とは、令和2年からスタートした自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度のことを言います。

データとして保管されるため、全国どこの法務局からでも存在の確認が可能です。さらに、自筆証書遺言書保管制度には、「関係遺言書保管通知」と「指定者通知(死亡時通知)」の2種類があり、存在が確認しやすいというメリットもあります。

  • 関係遺言書保管通知:相続人などが保管している遺言書を閲覧したら他の相続人全員に保管されていることが通知される
  • 指定者通知:被相続人の死亡時にあらかじめ指定している特定の人に対して遺言書の保管を通知する

自筆証書遺言書保管制度での探し方については、後ほど詳しく解説するので参考にしてください。まずは、公証役場・法務局で遺言書を探し、見つからない場合には被相続人の自宅などを探していくとよいでしょう。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、自筆で作成した遺言書の存在を公証役場で証明してもらった遺言書です。公証役場に問い合わせることで、遺言書を作成したという記録を確認できます。こちらも、平成元年以降の作成分であれば遺言検索システムで存在の確認が可能です。

しかし、秘密証書遺言は遺言書自体は故人が保管するため、公証役場に遺言書そのものはありません。あくまで存在してるという証明であり、遺言書自体は自筆証書遺言同様、被相続人の自宅などを探す必要がある点には注意が必要です。

とはいえ、遺言書が存在することは明確になるので、存在するかわからないものを探すよりも手間や精神的な負担は軽減できるでしょう。

遺言検索システムの利用方法

遺言検索システムとは、公証役場が公正証書遺言や秘密証書遺言のデータを管理しているシステムのことです。平成元年以降に作成された公正証書遺言について、以下のような情報がデータとして記録されています。

  • 作成した公証役場
  • 作成した公証人の名前
  • 遺言書の名前
  • 作成した年月日など

遺言管理システムを利用すれば簡単に遺言の有無が確認できますが、利用者が制限されるなどの注意点もあるので利用の仕方を押さえておくようにしましょう。以下では、遺言管理システムの具体的な利用の流れ・必要書類・費用について解説します。

利用の流れ

遺言検索システムの大まかな利用の流れは、次の通りです。

  • 必要書類を集める
  • 公証役場で利用の申請
  • 結果の取得

検索するといっても、実際は公証役場の公証人に照会を依頼する形になります。必要書類を添えて公証役場の窓口に検索を依頼すると、15~30分程で結果が通知されるので結果に応じて原本の閲覧や謄本の請求などを行いましょう。

また、公証役場は全国どこの公証役場でも検索可能です。ただし、検索結果で通知されるのは、公正証書遺言または秘密証書遺言の存在の有無のみとなります。

公正証書遺言であっても遺言書の内容までは検索できないので、存在する場合はその後原本の閲覧か謄本の取得手続きを行うようにしましょう。原本の閲覧・謄本の請求は、公正証書遺言を作成した公証役場に出向く必要がありますが、遠方など直接行くのが難しい場合は郵送での取得も可能です。

仮に、遺言書が存在しない場合は該当なしの旨を記載した書類が提出されます。この書類は公正証書遺言・秘密証書遺言が存在しない証明ともなるので、必要なら大切に保管しておくようにしましょう。

利用できる人

遺言検索システムは、誰でも利用できるわけではない点に注意しましょう。利用できる人は、被相続人の生前・死後で以下の通りに異なります。

  • 生前中:被相続人本人とその代理人のみ
  • 死後:相続人や受遺者などの利害関係者とその代理人

遺言作成者(被相続人)が存命の間は、本人のみが利用できます。たとえ、被相続人の配偶者や子どもであっても被相続人の生前中は利用できないので注意しましょう。ただし、被相続人に委任を受けた代理人であれば利用可能です。

一方、被相続人の死後であれば、相続人や受遺者・遺言執行者などの関係者とその代理人であれば利用できます。

必要書類と費用

遺言検索システムを利用するには、いくつかの必要書類を提出しなけらばなりません。

必要書類

必要書類は、検索を依頼する人によって以下のように異なります。

利用する人必要書類
遺言作成者本人・本人確認書類
遺言作成者の代理人・遺言作成者による委任状
・遺言作成者の印鑑証明
・代理人の本人確認書類
利害関係者・除籍謄本などの遺言作成者の死亡を証明する書類
・相続関係を証明する戸籍謄本など利害関係者であることを証明する書類
・利害関係者の本人確認書類
利害関係者の代理人・上記の利害関係者の必要書類
・委任状
・代理人の本人確認書類

費用

遺言検索システムの利用自体は無料でできます。ただし、遺言原本の閲覧・謄本の取得には、以下のような費用が必要です。

  • 遺言原本の閲覧:1回200円
  • 遺言謄本の取得:1ページ250円

郵送で謄本を取得する場合は、上記にプラスして返信用のレターパックなどの費用が必要になります。

自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合の対応方法

自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合の対応方法のイメージ

自筆証書遺言書保管制度とは、令和2年からスタートした遺言書の保管制度です。この制度を利用すると、自筆証書遺言の原本と画像データが法務局に保管されます。また、保管申請時に自筆証書遺言の形式に適しているかの外形的なチェックを受けられるというメリットもあります。

被相続人が自筆証書遺言書保管制度を利用している場合、相続人は法務局で遺言書の存在の確認や閲覧が可能です。自筆証書遺言書保管制度では、以下の2種類の証明書を取得できます。

  • 遺言書保管事実証明書
  • 遺言書情報証明書

それぞれの請求方法について以下で詳しくみていきましょう。

遺言書保管事実証明書の交付請求

遺言書保管事実証明書とは、制度を利用して遺言書が保管されているか否かを照明する書類です。

以下の方法で取得することができます。

  • 必要書類を集める
  • 法務局の窓口に申請
  • 結果の取得

遺言書保管事実証明書は、全国どこの法務局でも可能です。法務局の窓口に申請書と必要書類を提出することで、遺言書保管事実証明書の取得ができます。なお、窓口で受取する場合は、事前の予約が必要なので注意しましょう。

請求できる人

遺言書保管事実証明書は、被相続人の死後であればだれでも請求可能です。ただし、遺言内容に関らない人が交付請求した場合は、「該当なし」の旨が通知されます。これは、請求した人が関わる遺言書がないというだけで、遺言書自体がないとは限りません。

別の人を相続人に指定した遺言書は存在する可能性があるので、注意が必要です。また、法定代理人以外の代理人による取得は認められてない点にも気を付けましょう。

必要書類と費用

以下のような書類が必要です。

  • 交付請求書
  • 除籍謄本などの被相続人の死亡がわかる書類
  • 請求者の住民票
  • 請求者の本人確認書類
  • 相続人の場合は相続関係がわかる書類

また、請求時には収入印紙で800円が必要です。郵送で請求することも可能ですが、その場合は、郵便切手を貼った返信用封筒を同封する必要があります。

遺言書情報証明書の交付請求

遺言書情報証明書とは、遺言内容の証明となる書類です。書類には目録を含む遺言書の画像データが表示されるため、閲覧同様に内容を確認できます。遺言書保管事実証明書の結果、遺言書が保管されていることがわかれば遺言書情報証明書を取得するようにしましょう。

交付請求する場合は、遺言書保管事実証明書同様に必要書類をそえて法務局の窓口に申請します。なお、遺言書情報証明書を窓口で取得する場合も予約が必要です。遺言書保管事実証明書の予約とは別枠になるため、連続で取得する場合はそれぞれの枠で予約しておく必要があります。

請求できる人

遺言書情報証明書を請求できるのは以下の人です。

  • 法定相続人
  • 遺言書に記載された受遺者・遺言執行者

なお、請求できるのは被相続人の死後のみとなり、生前中の請求はできません。また、法定代理人以外の代理人による請求もできないので注意しましょう。

必要書類と費用

請求する際には以下の書類が必要です。

  • 交付請求書
  • 請求する人の本人確認書類
  • 相続人全員の住民票の写し
  • 法定相続情報一覧図または被相続人の出生から死亡までの戸籍および相続人全員の戸籍

交付請求書には、保管されている法務局名・保管番号が必要になるため、それらの記載されている遺言書保管事実証明書をあらかじめ取得しておく必要があります。ただし、死亡時通知などで保管番号などがわかっている場合は、遺言書保管事実証明書の請求を飛ばして請求することが可能です。

また、請求時には1通1400円の収入印紙も必要になります。

遺言書を探す上で知っておきたいこと・注意点

遺言書を探すうえでは押さえておきたい注意点がいくつかあります。場合によっては遺言書を見つけてもスムーズに相続を進められなくなることもあるので、以下の点を押さえておくようにしましょう。

  • 遺言検索システムは事前予約制のところも多い
  • 遺言検索システムでは遺言書の内容まではわからない
  • 遺言検索システムでは自筆証書遺言の存在はわからない
  • 遺言書を見つけても勝手に開封しない
  • 公正証書遺言の二重保管も開始
  • 公正証書遺言は相続時に通知されない
  • 自筆証書遺言書保管制度では原本は返還されない

遺言検索システムは事前予約制のところも多い

遺言検索システムを利用するには、予約が必要な公証役場も少なくありません。事前に利用する公証役場に予約の必要性について確認するようにしましょう。

仮に予約が必要な場合でも、公証役場や時期によっては混み合うため時間に余裕をもって利用することをおすすめします。なお、自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は事前の予約が必要です。

遺言検索システムでは遺言書の内容まではわからない

遺言検索システムの結果では、遺言書が存在するか否かしか通知されず、遺言書の内容は確認できません。遺言書の内容を確認したい場合は、原本の閲覧や謄本の取得を請求する必要がある点には注意しましょう。

遺言検索システムでは自筆証書遺言の存在はわからない

遺言検索システムで存在の有無がわかるのは、公正証書遺言・秘密証書遺言のみです。遺言検索システムで遺言がないとわかった場合でも、自筆証書遺言が作成されている可能性は十分あるので、引き続き自宅などを探す必要があります。

遺言書を見つけても勝手に開封しない

遺言書のうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言は開封に家庭裁判所の検認が必要です。検認する前に開封すると、5万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。ただし、検認前に開封したからといって遺言書が無効になるわけではありません。

しかし、勝手に開封すると他の相続人から改ざんを疑われて無効を主張されるなどのトラブルにも発展しかねないため、速やかに検認の手続きをするようにしましょう。なお、自筆証書遺言であっても自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書であれば検認は不要です。

公正証書遺言の二重保管も開始

公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるといっても、災害によって原本が滅失する可能性はゼロではありません。しかし、公証役場では遺言者の同意を得たうえで電子データとしての遺言書の保管制度もスタートしています。

原本に加えてデータとして二重で保管することで、遺言書の紛失リスクをより抑えることが可能です。

公正証書遺言は相続時に通知されない

公正証書遺言は、遺言者の死亡時に遺言書の存在を相続人に通知する仕組みはありません。公正証書遺言の存在は公証役場に問い合わせればわかりますが、自分から問い合わせない限り存在の有無を判断することはできない点には注意しましょう。

自筆証書遺言書保管制度では原本は返還されない

自筆証書遺言書保管制度を利用した場合、遺言書の有無やその内容は証明書で確認できますが、遺言書自体は返還されません。ただし、遺言書自体がなくても遺言書情報証明書で相続手続きを進めることが可能なので、証明書を交付してもらうようにしましょう。

遺言書の有無を確認したら専門家に相談を

遺言書は相続の仕方を決めるうえで大きな影響があるため、相続発生後まず最初に遺言書の有無を確認する必要があります。遺言書を探す場合は、遺言書の種類に合わせた探し方や故人の大事ものを保管する場所などを隅々まで探すようにしましょう。

ただし、遺言書を見つけた場合でも種類によっては検認が必要です。仮に、見つからない場合でも遺産分割協議後に遺言書が見つかるとトラブルに発展する可能性もあるので注意しましょう。

見つかった場合・見つからない場合どちらであっても、スムーズに相続を進めるなら弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家であれば、それぞれのパターンに応じた適切なアドバイスでトラブルのない相続を進めやすくなるでしょう。

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記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年8月21日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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