相続の相談は弁護士と司法書士どっちがいいの?ケース別に解説

公開日:2024年5月31日

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相続の相談先としては、弁護士と司法書士が代表的です。とはいえ、どちらに依頼すればいいのか分からないという方も多いでしょう。弁護士と司法書士は、対応業務や費用も異なるのでお悩みに合わせて使い分けることが大切です。この記事では、弁護士と司法書士の対応業務の違いや依頼したほうがいいケース・選ぶポイントなどを解説します。

相続における弁護士と司法書士の対応業務の違い

弁護士と司法書士では、相続時における対応できる業務が異なってきます。

大まかな取扱い業務の可否を下記の一覧で確認しましょう。

弁護士司法書士
相続人調査相続財産調査
相続財産調査
遺産分割の調整×
遺産分割調停・審判の代理×
遺産分割協議書の作成※1
遺留分侵害額請求※2
相続放棄の代理※3
遺言書作成
遺言執行者への就任
相続登記
相続に関する訴訟×

※1登記関連のみ
※2請求額140万円以内
※3書類作成まで

弁護士は、法律に関わる手続きなどを制限なく行えます。そのため、相続時でも相続手続きだけでなく生前の相続対策・相続人間のトラブルまで相続全般の業務に対応しています。

一方、司法書士は紛争性のない相続手続きや書類作成が専門です。遺言書の作成や裁判所に提出するための書類作成などは司法書士に依頼するケースが多いでしょう。とくに、不動産登記については司法書士の方が強みがあります。

ただし、訴訟などの法的トラブルや裁判所への出廷代理など対応できない業務もあるので、自分の相談したい内容に対応できるかは確認することが大切です。

相続放棄はどちらに依頼すればいい?

弁護士と司法書士のどちらに依頼するかで悩む代表的な相続トラブルが「相続放棄」です。相続放棄の手続きは、弁護士・司法書士どちらでも依頼できます。ただし、対応できる範囲が異なるので何を依頼したいかで依頼先を選ぶことが大切です。

相続放棄のすべての手続きを一任したいなら、弁護士が適しているでしょう。弁護士であれば、必要な書類の取得や作成から相続放棄手続き・照会書への回答まですべて行うことが可能です。

裁判所に出廷が必要な場合も、弁護士であれば代理で出廷することができます。司法書士は、書類の収集や作成はできても、家庭裁判所への出廷の代理や照会書への回答は自分で行わなければなりません。書類の収集・作成のみをしてもらえれば、後は自分で手続きできるなら司法書士が適しているでしょう。また、費用も大きく異なってくるので注意が必要です。

以下では、弁護士への依頼が向いている業務と司法書士への依頼が向いている業務について、詳しく解説していきます。

弁護士が向いている業務・費用・依頼したほうがいいケース

弁護士は、相続全般をサポートできます。とくに、依頼人間でトラブルが発生している場合は、弁護士しか対応できません。

相続で弁護士ができること・できないこと

相続で弁護士が対応できる業務は多岐に渡ります。

主な業務としては、下記のようなことが挙げられます。

  • 相続人や財産の調査
  • 遺産分割の調整
  • 遺産分割調停・審判の代理
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続放棄の代理
  • 遺言書の作成
  • 遺言執行者への就任
  • 生前の相続対策

中でも、相続人間のトラブルの解決や相続放棄などの裁判所への手続きが行えるのは弁護士の大きなメリットと言えるでしょう。

反対に、弁護士にあまり依頼しない業務には、下記のようなことが挙げられます。

  • 相続登記
  • 相続税の相談

厳密に言えば、両方とも弁護士でも対応可能です。しかし、相続登記(不動産登記)は登記の専門家である司法書士が担うケースが一般的でしょう。

相続税も税理士業務に対応している弁護士も多くいますが、一般的には税理士に相談するケースがほとんどです。ただし、相続登記や相続税に関して相続人間でトラブルが起きている場合は、弁護士が適しています。

弁護士への依頼料目安

弁護士は他の専門家に比べ費用が高くなる傾向がある点には注意が必要です。一般的に、弁護士への依頼では次のような費用が発生します。

  • 相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • 実費や日当

依頼を相談する段階の相談料は、30分5000円ほどが目安です。初回の相談は無料という弁護士も多いので、活用するとよいでしょう。実際に依頼に着手する場合に発生する着手金は20~30万円が目安となり、これは依頼処理の成否にかかわらず発生します。

依頼内容が解決した際に、その成果に応じて支払うのが報酬金です。報酬金は、その依頼で獲得できた金額(相続の場合は遺産額など)に対する%で請求されるのが一般的でしょう。また、弁護士によっては書類取得費や交通費などの実費や出廷や出張に対する日当がかかるケースもあります。

依頼する弁護士や内容によって費用は大きく異なりますが、主な相続業務での依頼料の目安は、下記の通りです。

  • 遺言書の作成:20~30万円
  • 相続放棄:5~10万円
  • 遺留分侵害額請求:3~5万円
  • 遺言の執行:30万円~

どれくらいの費用が発生するかは、相談時に確認することが大切です。

「相続の弁護士費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

弁護士に依頼したほうがいいケース

弁護士に依頼したほうがいいケースには以下のようなものがあります。

  • 遺産分割で揉めている
  • 他の相続人と関わりたくない
  • 遺留分を侵害されている
  • 相続放棄手続きを丸投げしたい
  • 生前対策から相続まで一任したい

上記のように、相続トラブルが発生して交渉が必要、裁判所の手続きを代理してもらいたい、相続を全般的にサポートしてもらいたいといったケースでは、弁護士が適しています。

司法書士が向いている業務・費用・依頼したほうがいいケース

司法書士では、相続手続きに関する書類作成や登記手続きを依頼するのが一般的です。司法書士が対応できる業務は弁護士よりも限定的になるので、依頼する内容が対応できるかどうかはしっかり確認するようにしましょう。

相続で司法書士ができること・できないこと

相続で司法書士が対応できる主な業務は次の通りです。

  • 相続人・相続財産の調査
  • 遺言書の作成
  • 遺言執行者への就任
  • 相続放棄など裁判所に申し立てるための書類作成
  • 相続登記

中でも、相続登記は司法書士に依頼するのが一般的です。反対に、以下のような業務は司法書士ではできません。

  • 裁判所への出廷代理
  • 遺産分割協議書の作成(登記関連以外)
  • 相続人間トラブルの対応
  • 相続税に関すること

司法書士は書類の作成・提出はできても、代理はできません。そのため、裁判所に呼び出されたときなどでは本人が対応する必要があります。また、相続人間でトラブルが発生している場合は、相談を含めて対応が難しい点に注意が必要です。

司法書士への依頼料目安

司法書士に依頼する際の大まかな費用の項目は、下記の通りです。

  • 相談料
  • 調査費用
  • 司法書士費用
  • 実費

司法書士への相談料は30分5000円ほどが目安です。相談は無料というケースも多いので、活用するとよいでしょう。また、不動産や現地の調査費用と、実際の業務に対する司法書士費用、書類取得などの実費がかかります。

司法書士費用は、業務内容にもよりますが1万5000~20万円ほどが目安です。相続に関する業務の大まかな費用目安は、以下のようになります。

  • 相続登記:5~15万円
  • 相続放棄:3~5万円
  • 遺言書の検認:5万円ほど
  • 遺言書の作成:3~8万円

ただし、依頼する司法書士や内容によって費用は大きく異なるため、事前にしっかり確認するようにしましょう。

司法書士に依頼したほうがいいケース

司法書士に依頼したほうがいいケースには、以下のようなものがあります。

  • 相続財産に不動産がある
  • 書類の収集や作成のみをしてもらいたい
  • 費用を抑えたい
  • トラブルのない相続の各種手続きをお願いしたい

相続登記が必要な場合は、司法書士に依頼するのが一般的です。とくに、相続放棄を長期間放置していたなど自分で相続登記が難しい場合は、司法書士に相談するとよいでしょう。

また、司法書士や弁護士よりも費用が安い傾向があるので、トラブルのない相続で書類のサポートのみが必要な場合は司法書士が適しています。

「相続の司法書士への依頼」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

弁護士と司法書士のどちらに依頼するか迷ったら

弁護士と司法書士のどちらに依頼するか迷ったらのイメージ

弁護士と司法書士では、依頼できる内容がかぶっている業務もあるのでどちらに依頼するか悩む方も少なくありません。

どちらに依頼すべきか悩む場合の判断のポイントには、以下のような点が挙げられます。

  • トラブルがあるなら弁護士
  • 丸投げしたいなら弁護士
  • 不動産登記があるなら司法書士
  • コストを抑えたいなら司法書士

相続人間のトラブルに対応できるのは弁護士のみです。また、弁護士には代理権があるので、依頼者に代わって裁判所へ出廷できるため手続きをすべて任せることができます。

単純な相続で不動産登記が必要になる場合は、最初から司法書士に依頼しておくとスムーズに手続きできます。他の専門家でもいくつかの相続手続きは進められますが、不動産登記が必要になれば司法書士が必要になってくるので2度手間になるものです。

弁護士・司法書士どちらに依頼しても大丈夫ですが、基本的に1人の専門家に依頼しておくほうがスムーズに進められます。遺産分割協議は弁護士、不動産登記や相続放棄は司法書士というように、複数の専門家に依頼していると窓口が複数になるだけでなく費用も高額になりかねません。

トラブルがある・トラブルになる可能性があるなら弁護士、トラブルがないなら費用と手間のどちらを優先させるかで依頼する専門家を決めるとよいでしょう。

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専門家を探す・選ぶ際のポイント

専門家を探す・選ぶ際のポイントとして、下記のようなことが挙げられます。

  • 相続に関する知識と実績が豊富である
  • 料金が明確
  • 相性がいい

弁護士・司法書士どちらにしても、すべての専門家が相続を得意としているわけではありません。相続に関する依頼をするのであれば、相続が得意な専門家を選ぶことが大切です。ホームページなどで相続の実績があるかなどをチェックするようにしましょう。

また、依頼料は依頼先によって大きく異なります。無料相談の際などに料金を明確に教えてくれるかどうかも重要です。料金が曖昧なまま進めると最終的に想定以上の金額になってしまうこともあるので、注意しましょう。

得意分野が異なるように、人柄も人それぞれです。依頼内容によっては解決まで長期間一緒に歩むことになるので、相性は大切です。話しやすい・親身に相談に乗ってくれる・丁寧に接してくれるなど自分との相性もチェックするようにしましょう。

無料相談会などを活用して、相性を見てみるのもひとつの方法です。

相談ごとに応じて適切な専門家に依頼しよう

相続の相談や手続きの依頼は、弁護士・司法書士どちらにもできます。しかし、弁護士と司法書士では対応できる業務が異なる部分もあるので、悩みに応じた専門家を選ぶことが大切です。

どちらの専門家に依頼するにしても、相続に詳しく実績が豊富で信頼できる専門家を見つけると安心して依頼内容を任せられます。まずは、相続プラスでどのような専門家がいるのかをチェックしてみることから始めてみるのがおすすめです。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年5月31日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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