相続の弁護士費用の相場は?払えない時の対処法や費用を抑えるポイントを解説

公開日:2023年7月25日

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相続の問題解決のために、弁護士へ依頼したくても「財産が多いので弁護士費用が高くなりそう」「着手金や相談料など支払う項目が多くて心配」など、一体いくらの費用が必要なのか、不安に感じてしまう方も多いのではないでしょうか。

本記事では、弁護士に支払う費用の種類や相場感、支払えないときはどうなるのかなどを解説します。費用を抑えるポイントもご紹介しているので、弁護士へ相続の相談をしたいと考えている方はぜひ参考にしてください。

相続問題の解決にかかる弁護士費用の種類と相場感

相続に関して弁護士に依頼する場合、大きく以下の5つの費用が発生します。

  • 相談料:約5000円
  • 着手金:約20~30万円
  • 報酬金:経済的利益に応じて計算
  • 日当:半日出張・3~5万円/1日出張・5~10万円
  • 実費:数千~5万円(交通費は除く)

それぞれどのような費用なのか詳しく確認しましょう。

相談料|相場は5000円程度、初回無料の場合もある

相談料とは、弁護士に相談をした時に発生する費用です。

相談料の相場は30分あたり5000円程度ですが、初回相談を無料にしている事務所も多くあります。支払いのタイミングは、相談が終わったその場で現金やカードで支払うのが一般的です。

なお、相談料が有料の場合でも相談後にそのまま依頼をすれば、相談料は無料になるケースもあります。

着手金|相場は20~30万円、相続財産額によっては増える

着手金とは、弁護士が実際に具体的な案件解決へ動き出すタイミングで支払う費用です。

一般的な金額は20~30万円が相場ですが、相続財産によって変動するため相場より高くなる可能性があります。後払いや分割払いに対応している弁護士もいるので、不安な場合は一度相談してみると良いでしょう。

報酬金|経済的利益の金額によって発生

報酬金とは、相続問題が解決した際に支払う費用のことです。

報酬額は一律ではなく、調停や裁判などで獲得した経済的利益(対象となる相続分の時価相当額)の数%といった形で決まります。ですので、弁護士へ依頼をしても全面敗訴の場合は報酬金は発生しません。

報酬額の決める基準は平成16年(2004年)4月から廃止され、個々の事務所や弁護士が自由に金額を設定できるようになっています。しかし、かつて日本弁護士連合会が定めていた弁護士費用の目安である「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」は、今でも参考にしている事務所が多く相場の目安になっています。

以下が以前の報酬金の相場表ですので、経済的利益に応じた計算方法のおおよその参考にしてください。

経済的利益の金額報酬金(税別)
300万円以下16%
300万円を超え3000万円以下10%+18万円
3000万円を超え3億円以下6%+138万円
3億円超4%+738万円

なお、より正確な報酬金額は弁護士へ相談する際に確認してみましょう。

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日当|相場は5万円程度

日当とは、弁護士が事件処理のため、時間の拘束を受けた場合に発生する費用です。

主に出廷・出張した際に発生する費用を指し、裁判所に出廷するごとに支払う「出廷日当」と出張をするごとに支払う「出張日当」があります。

半日、丸1日など事務所によって費用が異なりますが、概ね5万円前後が相場です。ただし、日当とは別に交通費や宿泊費は実費として支払う必要があります。

出張や出廷を依頼しなければ支払いが生じませんので、日当の費用が掛からないケースは少なくありません。

実費|依頼内容によって異なるが数万円程度

実費とは、主に弁護士が戸籍調査をする際の資料取得費用や、裁判を起こす場合は印紙代、切手代など実際にかかる費用です。遠方の裁判所で出廷を依頼する場合は、日当とは別に交通費や宿泊費がかかります。

金額はケースによって異なりますが、一般的には数千~数万円程度で、出張を依頼する場合は10万円を超える可能性があります。

依頼内容別:遺産相続に関わる弁護士費用の相場

ここでは依頼内容別に相続でかかる弁護士費用の相場を解説します。

弁護士に支払う金額の多くは内容や相続財産額によって変動するため、人によって具体的な金額には幅があります。

  • 遺言書の作成:約20~30万円
  • 遺言の執行:最低でも30万円~
  • 相続放棄:約5~10万円/人
  • 遺産分割協議:最低着手金約20~30万円
  • 遺留分侵害額請求:約3~5万円程度
  • 成年後見人:申立て・20万円前後+実費約6万円/報酬・月額2~6万円

それぞれ詳しく確認していきましょう。

遺言書の作成

遺言書の作成を弁護士に依頼した場合は遺言書作成手数料がかかります。

20~30万円程度にしている弁護士が多いですが、内容や相続財産額によって変動はあります。また、遺言の対象財産額に基づき計算される場合もあります。

なお「公正証書遺言」を作成する場合には、公証人役場へ支払う手数料や公証人の日当など別途で約4〜7万円程度が必要になります。

「遺言書の作成方法」「公正証書遺言の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺言の執行

遺言の内容を実現する手続きを代行してくれる「遺言執行」を弁護士に依頼する場合、相続財産や相続人の人数によって変動があるため、金額が決まっていません。

(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」を参考にすると最低でも30万円、場合によっては100万円を超えることもあります。

相続放棄

相続放棄の手続きを弁護士に依頼する場合、約5~10万円の費用がかかります。

事務所によっては兄弟・姉妹の分もまとめて依頼すると費用が抑えられることがあります。

なお、相続放棄には期限があり「相続開始を知ったときから3ヶ月以内」と定められています。3ヶ月を過ぎてからの依頼は、難易度が上がるので費用が高くなる場合が多いです。

「相続放棄の費用」「相続放棄の手続き」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺産分割協議

遺産分割協議とは、一般的に相続トラブルが起こりやすいとされる、相続財産の分配方法を話し合うことを指します。

その代理人を弁護士に依頼する場合は主に報酬金と着手金が発生し、最低着手金を20~30万円としている弁護士が多いですが、トラブルの内容や相続財産の総額によって金額は異なります。報酬金は費用の計算は「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」が目安になります。

「遺産分割」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺留分侵害額請求

遺留分侵害額請求の意思を伝える内容証明郵便の送付のみであれば、3~5万円程度が一般的です。

訴訟や代理交渉などを依頼する場合には、上記の依頼と同様報酬金や着手金を支払う必要があります。費用の計算は「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」が目安になります。

成年後見人

成年後見人を弁護士に依頼する場合には、申立て費用毎月の報酬がかかります。

申立て費用とは、申立て手数料や必要書類の収集・作成などの実費が約6万円と、それらの収集・作成などを専門家へ相談・依頼した場合にかかる費用が約20万円がかかります。

毎月の報酬とは、通常の後見業務を行った場合に必要な費用で月額2~6万円が相場です。管理財産額が高額だと報酬費用も上がります。

なお親族を後見人に選ぶことで費用は抑えられますが、家庭裁判所の判断で選任されるため、弁護士や司法書士といった専門家が選任されるケースが全体の約80%で、ほとんどの割合を占めています。

出典:最高裁判所「成年後見関係事件の概況―令和3年1月~12月―

「成年後見制度」や「成年後見人の費用」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

弁護士費用は誰が支払う?払えないときはどうするの?

疑問のイメージ

相続手続きを弁護士へ依頼したいと考えていても、費用が支払えない場合や結局誰が支払うのか分からず不安で、相談しにくいという方もいることでしょう。

ここではそういった疑問点や支払いが困難な場合の解決策をみていきます。

誰が支払うのか?

遺産分割や相続トラブルに巻き込まれると「相手に弁護士費用を支払って欲しい」と考える方も少なくないでしょう。しかし、弁護士費用は原則依頼者や申立人が払わなければいけません。

遺言執行の場合は相続人全員で負担することになりますし、遺産分割協議で他の相続人とトラブルになっても他の相続人に弁護士費用を請求することはできないので注意が必要です。

支払わないとどうなるのか?

弁護士費用を支払わないと、はじめに弁護士から入金督促通知が届きます。通知を受け取った後も支払わないでいると、依頼中の手続き処理がストップする可能性が高いです。

また、依頼された処理を引き続き行うことが困難と判断されると、弁護士が辞任する場合もあります。

支払いが困難な場合の解決策

予想よりも多くの遺産があることが判明し、想定よりも弁護士費用が高くなる場合も少なくないです。

相続手続きを依頼しているにも関わらず支払いが難しくなったら、すぐに弁護士へ相談しましょう。分割での支払いや、事務所によっては完全に後払いで対応するなど、支払い方法の提案をしてくれる可能性があります。

また一定の条件はありますが、弁護士費用を立て替えてくれる法テラス(日本司法支援センター)「民事法律扶助制度」の利用も視野に入れましょう。

弁護士費用を抑える4つのポイント

ここまで弁護士に相談するときにかかる費用をみてきましたが、少しでも費用を抑えながら問題を解決したいと考えた方は多いのではないでしょうか。

ここでは弁護士費用を抑えるための4つのポイントについて解説します。

  • 無料相談を活用
  • 事前にトラブルや相談内容をまとめる
  • 複数の事務所で費用を比較
  • 法テラスの民事法律扶助制度を利用

無料相談を活用

相続問題に関して弁護士に依頼するとき、まずは無料相談を活用しましょう。「初回〇分相談無料」など無料の範囲は事務所によって異なりますが、時間が過ぎると料金がかかるので注意が必要です。

また、法テラス(日本司法支援センター)では情報提供業務といった、法制度に関する情報や弁護士会・地方公共団体の相談窓口などの情報を無料で案内してもらえます。

全国に設けられた法テラス地方事務所での面談をはじめ、電話や専用フォームによるメールでも問合せが可能です。詳しくは法テラス「情報提供業務」で内容を確認してください。

事前にトラブルや相談内容をまとめる

無料相談を実施している事務所の中には、「初回30分のみ無料」や「60分無料」など無料の範囲に時間制限が設けられている事務所も少なくありません。限られた時間内に、解決したいことを伝えるためにも、メモなど要点を時系列にまとめておきましょう。

また、「ここまでは頼りたいけど、ここから先は自分で対応する」などはっきりとした線引きをしておかないと、不要な費用がかかる場合もあります。最終的にどうしたいのか、自分が望む結果を決めておくことも大切です。

複数の事務所で費用を比較

せっかく相談をしても、最終的に費用面などで依頼を断念することも考えて、同時に複数の事務所に無料相談し費用を比較するとよいです。

また、電話やメールで相談可能な事務所も増えているため、弁護士相談のハードルも低くなっていますが、悩みや相談内容をより詳しく伝え、最適な解決策を導き出すためにも直接事務所に足を運び、比較しながら相談をすることをおすすめします。

法テラスの民事法律扶助制度を利用

弁護士費用を抑えるために法テラス(日本司法支援センター)の「民事法律扶助制度」の利用を検討してみましょう。収入や資産など一定の条件はありますが、弁護士費用を立て替えてくれる可能性があります。

民事法律扶助業務とは、経済的に余裕がない方が法的トラブルにあったときに、無料で法律相談をおこない(「法律相談援助」)、弁護士・司法書士の費用の立替えをおこなう(「代理援助」「書類作成援助」)業務です。(総合法律支援法第30条第1項2号)

引用:法テラス「民事法律扶助業務

報酬に関しては、法テラスの立替基準表にて決定します。

人数手取月収額の基準家賃又は住宅ローンを負担している
場合に加算できる限度額
1人18万2000円以下
(20万200円以下)
4万1000円以下
(5万3000円以下)
2人25万1000円以下
(27万6100円以下)
5万3000円以下
(6万8000円以下)
3人27万2000円以下
(29万9200円以下)
6万6000円以下
(8万5000円以下)
4人29万9000円以下
(32万8900円以下)
7万1000円以下
(9万2000円以下)

東京・大阪など生活保護一級地の場合は、()内の基準を適用します。これらの条件には例外もあるので、詳しくは法テラスの「民事法律扶助業務」で内容を確認してください。

おわり

「弁護士=高い」と感じる方も少なくないです。しかし、解決が困難な遺産相続のトラブルや会いたくない人がいる遺産分割協議などの場において、プロである代理人の弁護士が依頼人の利益を最大限考慮して、相手に対して法的な交渉や主張を行ってくれるため、メリットが大きいといえます。

相続問題でお悩みの方は、手続きの内容や費用面の見込みを立てながら、気軽に弁護士の無料相談を活用しましょう。

記事の著者紹介

相続プラス編集部

【プロフィール】

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年7月25日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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