相続登記の手続きをしたくても「管轄の法務局が遠い」「平日に法務局に行けない」とお悩みではありませんか。このような方におすすめな申請方法が、家からでも相続登記できるオンライン申請です。本記事では、オンライン申請の手順や流れ、注意点について詳しく解説します。これから相続登記をしようとしている方の参考になれば幸いです。
目次
相続登記を申請する方法
相続登記を申請する方法は、3つあります。
- 法務局の窓口へ持ち込んで直接申請する
- 法務局に郵送して申請する
- オンラインで申請する
それぞれの特徴を知って、あなたに最適な方法で申請しましょう。
法務局の窓口へ持ち込んで直接申請する
法務局の窓口へ申請書や必要書類を持ち込んで直接申請する方法です。窓口で簡単な書類のチェックを受けられるため、その場で修正できます。
法務局の窓口へ持ち込む場合、受付時間である平日の午前9時〜午後5時の間にいかなければなりません。
また、相続する不動産を管轄する法務局でなければ受け付けてもらえないため、お住まいから遠方の不動産の相続登記を申請するなら、わざわざ出向く必要があります。
不動産を管轄する法務局は、法務局の公式サイトから確認しましょう。
ほかの法務局では受け付けてもらえないため、注意が必要です。
法務局に郵送して申請する
管轄の法務局へ申請書や必要書類を書留郵便で一式送付して申請する方法もあります。書類の返還や登記完了証の受け取りを希望する場合は、返信用封筒と切手を同封します。
お住まいから管轄の法務局が遠くても、わざわざ時間をかけて出向く必要がありません。土日休みで働いている方も、申請のために有給休暇を取得する必要なく申請できます。
ただし、郵送でのやり取りとなるため、不備があった際に完了まで時間がかかってしまう可能性があります。補正依頼が何度もあると、「法務局から自宅へ一式返送され、不備を訂正して再び送付する」といった流れを何度も繰り返すこととなり、なかなか完了せずにヤキモキするかもしれません。
オンラインで申請する
最後に、パソコンを使ってオンラインで申請する方法があります。まずパソコンから相続登記の申請を行い、添付書類を管轄の法務局へ郵送します。
管轄の法務局へ出向く必要や平日の日中に時間を取る必要がありません。また、不備があれば、オンライン上で補正依頼がくるため、やり取りも軽減されます。
ただし、パソコンやICカードリーダライタなど、自宅に用意しなければならないものがいくつかあります。パソコンや機械に慣れていれば、オンラインでの申請も選択肢に入れましょう。
オンライン申請するときに必要な道具・必要書類・事前準備
オンライン申請をする際、申請前に準備すべきことが多くあります。
以下の3つの項目に分けて、何をしなければならないのかをご紹介します。
- 必要な道具
- 必要書類
- 事前準備
申請する際に慌てないよう、ひとつずつ確認しましょう。
必要な道具
オンラインで申請するには、以下の道具を揃えましょう。
- パソコン
- マイナンバーカード
- ICカードリーダライタ
順番に解説します。
パソコン
インターネットに接続できるパソコンを用意しましょう。推奨されているパソコンのOSは、Windows11または10です。それ以外の環境だと正しく動作しない可能性があります。
ちなみに、macOSには対応していないため、MacBookなどからの申請はできません。
マイナンバーカード
電子証明書入りのマイナンバーカードもオンライン申請に欠かせない道具のひとつです。電子署名の付与や電子証明書の添付が必要です。お持ちでない方は、お住まいの市区町村役場で取得しましょう。
ICカードリーダライタ
電子署名の付与や電子証明書を添付するためには、電子証明書入りのマイナンバーカードを読み込むためのICカードリーダライタが必要です。家電量販店やネット通販で2000〜3000円程度で購入できます。
必要書類
相続登記に必要な書類は、窓口・郵送・オンラインのいずれの方法で申請しても違いはありません。一般的に必要な書類と取得場所を表にまとめました。
書類名 | 取得場所 |
---|---|
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式 | 被相続人の本籍地の市区町村役場 |
被相続人の住民票除票 | 被相続人の最終住所地の市区町村役場 |
相続人全員の戸籍謄本 | 相続人の本籍地の市区町村役場 |
不動産を相続する人の住民票 | 不動産を相続する人の住所地の市区町村役場 |
不動産の評価証明書(固定資産評価証明書) | 不動産所在地の市区町村役場 |
遺言書がある場合は、遺言書も提出します。
また、遺産分割協議にて遺産分割した場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書を提出します。遺産分割協議書には相続人全員の署名と捺印が必要です。印鑑証明書は、相続人の住所地の市区町村役場で取得できます。
もし、法定相続分による相続をする場合には、基本的に追加書類は不要です。
事前準備
オンライン申請前に以下の準備をしておくと、スムーズに手続きを進められます。
- 申請用総合ソフトをインストールする
- マイナンバー情報を登録する
- 相続関係説明図を作成する
順番に確認しましょう。
申請用総合ソフトをインストールする
オンラインで相続登記を申請するには、申請用総合ソフトをインストールしなければなりません。行政が無料配布しているソフトと、市販ソフトの2つの種類があります。
行政の無料ソフトを使用する場合、「登記・供託オンライン申請システム」へアクセスし、申請者情報の登録後、申請用総合ソフトをインストールしましょう。
申請用総合ソフトのダウンロードやICカードの設定などの事前準備については、法務局に説明動画があります。法務省動画チャンネルの「事前準備編」を見ながら、準備を進めましょう。
マイナンバー情報を登録する
マイナンバーカードで電子証明をするために、申請用総合ソフトにマイナンバー情報を登録しましょう。
申請用総合ソフトを立ち上げ、ICカードリーダライダを使って情報を登録します。その際、ICカードリーダライダのドライバも、パソコンにインストールしておかなければなりません。
相続関係説明図を作成する
相続関係説明図を作成しておけば、書類のスキャンの手間が省けるためおすすめです。
本来、相続登記のオンライン申請では、申請データと電子データで作った登記原因証明情報を送信しなければなりません。登記原因証明情報には、被相続人と相続人の関係を証明するための戸籍謄抄本や、相続した事実を証明するための遺産分割協議書が含まれます。
これらすべての書類をスキャンして電子データ化することはとても大変ですが、相続関係説明図を使えば登記原因証明情報を提出したとみなされます。
相続関係説明図とは、被相続人と相続人の関係が一覧になっている表です。家系図のようなイメージで、相続人の生年月日や被相続人との続柄などを記載します。
法務局の「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」にフォーマットや記載例が掲載されているため、参考にしましょう。
WordやExcel、手書きで作成したものをPDFに変換しておくと、スムーズに手続きを進められます。
自分で相続登記のオンライン申請をする手順
自分で相続登記のオンライン申請をする際の手順は、以下の通りです。
- オンライン申請書を作成する
- ファイル添付・電子署名付与する
- 申請データを送信する
- 受付内容を印刷して保管する
順番に確認しましょう。
オンライン申請書を作成する
まず、申請用総合ソフトを立ち上げて申請書を作成します。相続登記で「所有権移転」の手続きを行います。手順は、以下の通りです。
- メニューから「申請書作成」をクリック
- 様式一覧から「登記申請書(権利に関する登記)(4)所有権移転(相続)【署名要】」をクリック
- フォーマット通りに申請情報の項目を入力
不動産情報の入力方法には、以下の2つがあります。
- オンライン物件検索を利用する
- 物件情報を直接手で入力する
申請情報に入力した内容は、「登記記録(登記簿)」に反映されます。タイプミスや項目違いなどがないよう、オンライン物件検索を利用した入力方法がおすすめです。
ファイル添付・電子署名付与する
つづいて、ファイル添付・電子付与を行います。手順は、以下の通りです。
- メニューから「ファイル添付」をクリック
- 作成した相続関係説明図を選択
- メニューから「署名付与」をクリック
- 申請情報に電子署名の付与をする
- プレビュー画面で申請情報を確認し、入力内容が適正か確認する
事前に作成した相続関係説明図をわかりやすいフォルダに入れておくと、滞りなく手続きを進められます。
申請データを送信する
プレビュー画面で申請情報に間違いがないと確認できたら、申請データを送信しましょう。手順は、以下の通りです。
- メニューから「申請データ送信」をクリック
- 「受付確認」ボタンの表示を確認
受付確認ボタンが表示されなければ、まだ法務局で受け付けされていない状態です。申請用総合ソフトを閉じてしまわないよう、注意してください。
申請者情報を登録してメールが届くよう設定しておくと、メールで案内が届きます。メールからも処理状況をチェックできるため、安心できるでしょう。
受付内容を印刷して保管する
受付確認ボタンが表示されたらクリックをして、以下の情報を確認しましょう。
- 受付年月日
- 受付番号
- 申請情報
受付年月日と受付番号は、申請した登記について確認する際に必要です。印刷し、大切に保管しておきましょう。
オンライン申請した後の流れ
オンライン申請をした後、以下の流れで相続登記の手続きを完了させましょう。
- 登録免許税を納付する
- 添付書類を提出する
- 返送書類を受け取る
詳しく解説します。
登録免許税を納付する
オンライン申請をした場合、登録免許税の納付方法は3つあります。
現金納付
金融機関や税務署で現金納付し、領収書を発行してもらう。そのあと、領収書を貼付した登録免許税納付用紙を管轄の法務局に提出する。
収入印紙による納付
登録免許税納付用紙に収入印紙を貼付し、管轄の法務局に提出する。
電子納付
申請用総合ソフトの「納付」からインターネットバンキングやATMを使って納付処理を行う。
登録免許税の納付期限は、申請受付日の翌日です。現金や収入印紙で納付する場合、添付書類と一緒に提出するため、パソコン1台で完結する電子納付がおすすめです。
添付書類を提出する
つづいて、戸籍謄本や住民票などの必要書類を管轄の法務局に持参、または郵送にて提出しなければなりません。
郵送での返却を希望する場合、切手を貼付した返信用封筒も同封します。また、現金や収入印紙で登録免許税を納付した方は、登録免許税納付用紙も一緒に提出しましょう。
送付方法は、以下の通りです。
- 「書面により提出した添付情報の内訳表」を申請用総合ソフトから印刷する
- 押印欄に認印で捺印する
- 内訳表を表紙にして、すべての書類をホッチキスかクリップで綴じる
提出期限は、申請受付日から3日以内です。郵送で提出するのであれば、記録が残る書留やレターパックだと届いたかどうかが確認できるためおすすめします。
返送書類を受け取る
不備がなければ、申請から1〜2週間で登記は完了です。オンライン申請をすると、申請用総合ソフトから処理状況の確認が可能です。「手続き終了」と表示されていれば、無事完了しています。
また、登記が完了すると、登記識別情報通知と登記完了証を受け取ります。書面かデータのどちらかで受領が可能です。
オンラインで相続登記の手続きを行うメリット
オンラインで相続登記の手続きを行うメリットは、4つあります。
- 法務局へ行かずに申請できる
- 法務局に行くより申請の受付時間が長い
- オンラインで書類の不備を補正できる
- 電子納付ができる
順番に確認しましょう。
法務局へ行かずに申請できる
本来、相続した不動産を管轄する法務局で申請しなければなりませんが、オンライン申請なら自宅から申請できます。遠方に住んでいる方や、平日の日中に法務局へ行けない方でも手続きが進められます。
法務局に行くより申請の受付時間が長い
法務局の窓口で直接申請するには、受付時間である平日の午前9時〜午後5時の間にいかなければなりません。しかし、オンライン申請の受付時間は、平日の午前8時30分~午後9時と、法務局に行くより長いです。
平日しか申請できない点は同じですが、平日に仕事をしている方でも、帰宅して自宅から申請することが可能です。ただし、午後5時15分を過ぎて申請データを送信した場合、受付は翌開庁日となります。
オンラインで書類の不備を補正できる
申請書に不備があった場合でも、オンライン上で補正することができます。わざわざ法務局へ行ったり、郵送のやり取りが発生したりしないため、手間も時間もかかりません。
補正依頼も申請用総合ソフトに通知が届きます。
電子納付ができる
申請用総合ソフトを使って登録免許税を電子納付できる点も大きなメリットです。法務局の窓口で直接申請する場合や、郵送で申請する場合には選べない納付方法です。
申請も納付も自宅にいながらできるため、時間も節約できます。
相続登記のオンライン申請における注意点
自分で相続登記のオンライン申請をする際、以下の3つの注意点に留意しましょう。
- 送付・納付期限に注意する
- 期限内に補正を行う必要がある
- 登記識別情報は書面での交付を受ける
詳しく解説します。
送付・納付期限に注意する
必要書類の提出・送付や納付期限に注意しましょう。期限を過ぎると、申請を却下される恐れがあります。
2つの期限は、以下の通りです。
必要書類の提出・送付の期限 | 申請受付日から3日以内に管轄法務局に必着 |
---|---|
登録免許税の納付期限 | 申請受付日の翌日まで |
できるだけ早く必要書類の提出と登録免許税の納付を済ませ、心配事をなくしておきましょう。
期限内に補正を行う必要がある
申請書の不備や必要書類の漏れがあると、申請用総合ソフトに「補正のお知らせ」が通知されます。確認すると期限が記載されているため、必ず期限を守りましょう。期限を過ぎると、申請が却下される可能性があります。
そのため、相続登記が完了するまで申請用総合ソフトやメールはこまめに確認し、「補正のお知らせ」を見落とさないよう注意しなければなりません。どのように対応すべきかわからない場合は、法務局へ電話で相談して指示を仰ぎましょう。
登記識別情報は書面での交付を受ける
登記識別情報はデータでも受け取れますが、書面での交付も受けましょう。なぜなら、登記識別情報は従来の利権書に変わる「不動産の所有者の証」だからです。
書面自体が重要というよりも、アラビア数字や、そのほかの符号の組合せによる12桁の符号が重要です。登記識別情報は本人確認の手段のひとつでもあり、売買取引や贈与などで所有権移転登記手続きをする際に提出を求められます。
データで受け取っていると、パソコンやハードディスクが壊れたときにデータを復帰できず、登記識別情報がわからなくなってしまう可能性があります。データで持っていてもよいですが、書面での交付も受けておくと安心です。
相続登記は便利なオンライン申請を活用しよう
自分で相続登記をする際、時間や場所に縛られないオンライン申請がおすすめです。管轄の法務局に直接行く必要がないため、負担が大きく軽減されます。
しかし、パソコン操作に慣れていない方や道具・環境を揃えられない方にとっては、オンライン申請も難しいかもしれません。このような方は、司法書士にお任せすることも選択肢として考えましょう。
多くの司法書士はオンライン申請を活用しているため、直接相談しに行ける距離に事務所を持つ司法書士に依頼することをおすすめします。相続登記の手続きを楽に済ませたい方や、時間に余裕のない方は、ぜひ司法書士に頼りましょう。