生前贈与をする場合、贈与者と受贈者の双方で合意した内容や贈与の事実を証明するために贈与契約書を作成しましょう。しかし、作成方法が分からないという方もいるかもしれません。そこで、本記事では、贈与契約書の書き方や作成の流れについて詳しく解説します。生前贈与する財産内容ごとの雛形や注意点もご紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
生前贈与における贈与契約書とは
贈与契約書とは、財産を贈与する・されるときに作成される契約書のことです。生前贈与を行う際に、いつ・誰が・誰に・何を・どれだけ贈与するかを明記することで、贈与の履行があったことを証明できます。
生前贈与における贈与契約書について、下記の順番に解説します。
- 贈与契約書は必ず作成しなければならない?
- 贈与契約書を作成したほうがよい理由
生前贈与を行う前に確認しましょう。
贈与契約書は必ず作成しなければならない?
実は、生前贈与は贈与契約書がなくても成立します。贈与は、贈与者と受贈者の合意があれば、口約束でも問題ありません。
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。※引用:民法|549条(贈与)
しかし、口約束では、あとになって「言った言っていない」で揉める原因になり、トラブルに発展する恐れがあります。さらに、税務調査が行われた際に贈与契約を交わした事実を証明することができません。
このような理由から、生前贈与をする際には贈与契約書を作成することが好ましいと考えられています。
贈与契約書を作成したほうがよい理由
生前贈与を行う際は、特別な事情がない限り贈与契約書を作成するようにしましょう。贈与契約書の作成をおすすめする理由は、主に4つあります。
- 双方の合意を証明できる
- 遺産相続トラブル防止につながる
- 税務調査対策になる
- スムーズに不動産登記の手続きができる
順番に確認しましょう。
双方の合意を証明できる
生前贈与の契約は口頭だけでも成立し、法律的にも問題はありません。しかし、文書で契約内容を明確にすることで、客観的に双方の合意を証明できます。
また、贈与が履行されていない場合に、合意内容を主張することが可能です。確実に贈与を履行してもらうためにも、契約書を作成しましょう。
遺産相続トラブル防止につながる
贈与者が死亡した際、相続人同士における遺産相続トラブルの防止に契約書が役立ちます。
たとえば、贈与額が少ないにもかかわらず「長男は生前贈与されたのだから次男と三男だけで遺産分割したい」と主張されると、争いごとに発展してしまうでしょう。
贈与契約書があれば、いつ・だれが・どれほどの財産を受け取ったかが明確になるため、公平な遺産分割が行えます。
税務調査対策になる
生前贈与の事実を契約書に残しておくことで、贈与税や相続税の税務調査対策につながります。贈与税の税務調査がすぐに行われることは稀であり、多くのケースでは相続発生後に調査が行われます。
相続人の銀行口座に預貯金が増えていることを、贈与者の相続発生後に遡って指摘されるケースは少なくありません。実際には生前贈与であっても、贈与契約書がなければ証明することができず、贈与者は死亡しているため事実確認ができません。
税務調査があると、贈与契約書がないという理由で借入金や立て替え金とみなされてしまい、追徴課税をされる恐れがあります。
故人からの借入金や立て替え金ではなく生前贈与であることを証明するために、贈与契約書を作成しておくと安心です。
スムーズに不動産登記の手続きができる
不動産を生前贈与をする場合、登記手続き(名義変更)を行うために贈与契約書があると、効率的に進められます。
登記手続きの際、なぜ所有者が変更するのかを説明しなければなりません。たとえば、売買契約によって不動産を手に入れた場合にも、売買契約が必要です。同様に、生前贈与によって所有者が変更したことを贈与契約書で証明する必要があります。
あらかじめ贈与契約書を準備しておくと手続きを迅速に終えることができます。
贈与契約書を作成する流れ
贈与契約書を作成する流れは、下記の通りです。
- 贈与の内容を確認する
- 贈与の内容に合意する
- 贈与契約書を作成する
- 契約書を保管する
ステップごとに詳しく確認しましょう。
贈与の内容を確認する
まず、生前贈与の内容を確認しましょう。確認すべき項目は、下記の通りです。
- 財産の種類(現金・不動産・株式など)
- 贈与財産の金額・割合など
- 贈与の方法
- 贈与する時期
- 与契約書を取り交わす日付
贈与の内容によって、贈与税や登録免許税が受贈者にかかります。特例・控除が適用できる場合もあるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
贈与の内容に合意する
贈与契約は、贈与者と受贈者による双方の合意を持って取り交わされます。お互いの認識に違いがないか確認しましょう。
贈与契約書を作成する
合意した内容をもとに、贈与契約書を作成しましょう。贈与契約書には、下記の内容を記載します。
- 契約書作成日
- 贈与者の情報
- 受贈者の情報
- 贈与財産の内容
- 贈与の履行日
- 贈与者・受贈者の署名押印
贈与契約書は、贈与者用と受贈者用の2通作成しましょう。
契約書を保管する
作成した贈与契約書は、贈与者と受贈者がそれぞれ保管します。通常、タンスの引き出しや金庫などで保管しますが、紛失が心配な場合は公正証書にすることも可能です。
贈与契約書の雛形
贈与契約書には、書き方のルールや形式は厳密に決まっていません。しかし、自分で作成するときに、真っ白な状態から贈与契約書を作成することに抵抗のある方もいるでしょう。
ここでは、贈与契約書の雛形を贈与する財産ごとにご紹介します。
- 現金を贈与する場合の雛形
- 不動産を贈与する場合の雛形
- 株式を贈与する場合の雛形
贈与内容ごとに外せないポイントや注意点があるため、あわせて確認しましょう。
現金を贈与する場合の雛形
贈与契約書
贈与者世田谷太郎(以下「甲」という。)と受遺者世田谷花子(以下「乙」という。)は、下記の通りに贈与契約を締結した。
第1条.甲は、乙に現金300万円を贈与することを約し、乙はこれを承諾した。
第2条.甲は、第1条にもとづき、贈与した現金を令和6年12月10日までに、乙が指定した銀行預金口座に振り込むものとする。この振込に必要な費用は甲の負担とする。
(銀行預金口座)
銀行名:○○銀行
支店名:○○視点
口座種類:普通預金
口座番号:12345
以上の契約を証するため本契約書を2通作成し、甲・乙は署名押印のうえ、各自その1通を保管するものとする。
令和6年12月1日(締結日)
(甲)
住所:東京都渋谷区○-○-○
氏名: 世田谷太郎 (印)
(乙)
住所:東京都渋谷区○-○-○
氏名: 世田谷花子 (印)
現金を贈与するときのポイントは、銀行振込にすることです。振込みの内容が記録として残るため、贈与をした日や贈与金額が贈与契約書と一致することが証明できるためです。
下部の氏名部分には手書きで署名を行い、右横に押印をしましょう。
不動産を贈与する場合の雛形
贈与契約書
贈与者世田谷太郎(以下「甲」という。)と受遺者世田谷花子(以下「乙」という。)は、下記の通りに贈与契約を締結した。
第1条.甲は、乙に甲の所有する下記の財産(以下(本件不動産」という。)を贈与すると約し、乙はこれを承諾した。
(土地)
所在:東京都渋谷区○丁目
地番:○○
地目:宅地
持分:○○㎡
(建物)
所在:東京都渋谷区○丁目
家屋番号:○○○○○○○○
種類:宅地
構造:木造セメント瓦葺2階建
床面積:1階 ○○.○○㎡
2階 ○○.○○㎡
第2条.甲は、第1条にもとづき、贈与した本件不動産を令和6年12月10日までに、乙へ引き渡すものとする。また、本件不動産の所有権移転登記手続きを行う。なお、所有権移転登記の申請手続きに必要な一切の費用は乙の負担とする。
第3条.本件不動産にかかる公租公課については、所有権移転登記の日までに相当する部分を甲の負担とし、その翌日以降に相当する部分は乙が負担する。
以上の契約を証するため本契約書を2通作成し、甲・乙は署名押印のうえ、各自その1通を保管するものとする。
令和6年12月1日(締結日)
(甲)
住所:東京都渋谷区○-○-○
氏名: 世田谷太郎 (印)
(乙)
住所:東京都渋谷区○-○-○
氏名: 世田谷花子 (印)
不動産を生前贈与するときのポイントは、贈与対象の不動産情報を正しく記載することです。正しい不動産情報は法務局で取得できる登記事項証明書から確認できます。
また、不動産にかかる固定資産税をどのように負担すべきかも明確にしておきましょう。固定資産税は、その年の1月1日に所有している方に1年分の税額が通知されます。しかし、所有者が年の途中で代わっている場合は、負担割合を考慮しておくとトラブルを防げます。
下部の氏名部分には手書きで署名を行い、右横に押印をしましょう。
株式を贈与する場合の雛形
贈与契約書
贈与者世田谷太郎(以下「甲」という。)と受遺者世田谷花子(以下「乙」という。)は、下記の通りに贈与契約を締結した。
第1条.甲は、乙に甲の所有する下記の財産(以下(本件株式」という。)を贈与すると約し、乙はこれを承諾した。
株式の種類:株式会社○○(本店 東京都文京区○-○-○)の普通株式
株式の数量:○○○株(株式番号○○○○)
第2条.甲は、第1条にもとづき、本件株式の贈与は令和6年12月10日までに行われるものとし、同日をもって本件株式に関する権利は乙に移転するものとする。
以上の契約を証するため本契約書を2通作成し、甲・乙は署名押印のうえ、各自その1通を保管するものとする。
令和6年12月1日(締結日)
(甲)
住所:東京都渋谷区○-○-○
氏名: 世田谷太郎 (印)
(乙)
住所:東京都渋谷区○-○-○
氏名: 世田谷花子 (印)
株式を生前贈与するときのポイントは、会社の特定と贈与する株式の数量を明確にすることです。本店(本社)の所在地まで明記し、客観的にどの会社の株式かが分かるように配慮する必要があります。
下部の氏名部分には手書きで署名を行い、右横に押印をしましょう。
贈与契約書を作成する際のポイント
贈与契約書を作成する際のポイントは、6つあります。
- 記載必須の項目を抑える
- 様式・書式に決まりはない
- 手書きでもパソコンでもOK
- 数字の書き方
- 印鑑は認印でも実印でもOK
- 不動産の贈与契約書には収入印紙が必要
作成前に、詳しく確認しましょう。
記載必須の項目を抑える
記載必須の項目をしっかり明記した贈与契約書を作成しましょう。必ず記載すべき項目は、下記の通りです。
- いつ贈与契約を交わすのか(贈与契約締結日)
- いつ贈与するのか(贈与履行日)
- 誰が誰に贈与するのか(贈与者と受贈者の氏名・住所)
- 何を贈与するのか(贈与財産の内容)
- どのように贈与するのか(贈与方法)
贈与契約書を作成したら、一度漏れがないか確認しましょう。
様式・書式に決まりはない
贈与契約書には、様式や書式に決まりがありません。上記でご紹介した必須項目を記載している契約書であれば、あとから発生しうるトラブルの回避に役立ちます。
手書きでもパソコンでもOK
贈与契約書の作成方法にも決まりがなく、手書きでもパソコンでも問題ありません。ただし、贈与契約書の信ぴょう性を高めるために、署名と日付は手書きが好ましいとされています。
また、手書きで作成する場合は、あとから加筆・修正のできる鉛筆ではなく、消すことのできないボールペンで内容を記載しましょう。
数字の書き方
贈与財産の金額や数量などは、正確に記載しましょう。「おおよそ200万円」「約1000株」といった書き方をすると、本来の数字がわかりません。
手書きで贈与契約書を作成する場合は、改ざん防止のために大字(おおあざ)で記載することをおすすめします。たとえば、200万円の現金を生前贈与するのであれば、下記のように記載します。
- 金二百萬円也
契約書の内容と実際に贈与する財産に相違がないよう、注意しましょう。
印鑑は認印でも実印でもOK
贈与契約書の押印に使用する印鑑は、認印・実印のどちらでも大丈夫です。ただし、シャチハタは誰でも購入できるという観点から避けるようにしてください。
また、より信ぴょう性を持たせるために実印を使用し、贈与契約書と一緒に印鑑証明書も保管しておくことをおすすめします。
不動産の贈与契約書には収入印紙が必要
不動産を生前贈与する場合、贈与契約書に収入印紙が必要です。200円の収入印紙を贈与契約書に貼ると定められています。
不動産の譲渡契約書は印紙税の課税対象で取引金額によって収入印紙の額が決められています。生前贈与の場合、無償で不動産の所有者が変更することとなり、取引金額の記載のない契約書には200円分の収入印紙が必要です。
なお、現金や株式などの不動産以外の財産を生前贈与する場合、収入印紙の用意は必要ありません。
贈与契約書作成の専門家依頼も検討する
生前贈与をする場合、贈与契約書の作成を弁護士や司法書士などの専門家へ依頼することも視野に入れましょう。下記のポイントを確認し、専門家へ依頼するべきか判断する材料にしてください。
- 専門家に贈与契約書作成を依頼するメリット
- 専門家への依頼を積極的に検討したいケース
詳しく確認しましょう。
専門家に贈与契約書作成を依頼するメリット
専門家に贈与契約書作成を依頼するメリットは、下記の通りです。
- 記載漏れ・誤字脱字を防げる
- 贈与に関する手続きを依頼できる
- トラブル発生時に力になってくれる
3つのメリットについて詳しく確認しましょう。
記載漏れ・誤字脱字を防げる
専門家に契約書作成を依頼すると、記載漏れ・誤字脱字を防げます。贈与契約書にフォーマットや書き方の決まりがないものの、一定の知識がなければ不備が出てくる可能性があります。
完璧な贈与契約書を交わすことに不安のある方は、前向きに専門家への依頼を検討しましょう。
贈与に関する手続きを依頼できる
生前贈与を行う際には、贈与契約書の作成以外にもさまざまな手続きをしなければなりません。たとえば、不動産登記や贈与税の申告などがあります。
贈与契約書の作成だけでなく、専門家に生前贈与に関する手続きを一任することが可能です。時間のない方や知識に不安のある方は、ぜひ専門家の力を借りましょう。
トラブル発生時に力になってくれる
万が一、生前贈与に関するトラブルが発生した場合、贈与契約書の作成を依頼した専門家を頼ることができます。当事者同士だけでは意見の食い違いになる場合でも、知識を持った専門家が介入することで解決の糸口を見つけられるかもしれません。
また、生前贈与を行うまえに贈与内容や他の家族への配慮の仕方などのアドバイスも教えてくれます。生前贈与を行うことでトラブルに発展しないよう、専門家から最善の対応を教えてもらいましょう。
専門家への依頼を積極的に検討したいケース
贈与契約書の作成を専門家へ依頼すべきケースは、下記の通りです。
- 現金以外(不動産や株式)を贈与するとき
- 相続税・贈与税の節税をしたいとき
- 繰り返し暦年課税による生前贈与を行う予定があるとき
- 未成年が当事者になるとき
- 家族関係が悪くてトラブルに発展する恐れがあるとき
上記に当てはまる場合は、弁護士や司法書士などに相談することをおすすめします。
贈与契約書に関して知っておきたいこと・注意点
贈与契約書に関して知っておきたいこと・注意点は、下記の通りです。
- 未成年者でも贈与契約を締結することはできる?
- 口頭での贈与は撤回できてしまう
- 生前贈与加算に注意
- 贈与のたびに贈与契約書を作成する
- 公正証書の作成も検討する
5つのポイントについて、詳しく確認しましょう。
未成年者でも贈与契約を締結することはできる?
未成年であっても贈与契約を締結することは可能です。しかし、未成年者本人だけの単独では締結できず、親権者の同意が必要です。贈与契約書にも親権者(法定代理人)の署名捺印が欠かせません。
署名ができない幼児が生前贈与を受ける場合の対応など、ケースごとに注意点があるため専門家に相談することをおすすめします。
ちなみに、未成年者の定義が令和4年4月1日より前か後かで異なります。
- 令和4年3月31日まで:未成年者は20歳未満
- 令和4年4月1日以降:未成年者は18歳未満
生前贈与の契約時期によって未成年の定義が異なるため注意しましょう。
口頭での贈与は撤回できてしまう
生前贈与の契約内容を口頭で行った場合、あとから契約を無効にすることが可能です。
口約束で交わす生前贈与を口頭贈与と呼びます。口頭贈与の場合、「履行前であればいつでも撤回できる」と定められています。
確実に生前贈与を履行させたい場合は、かならず贈与契約書を作成しましょう。
書面でも契約が無効になる場合がある
書面で生前贈与の契約を交わした場合でも、下記にあてはまれば無効になります。
- 法定取消し
- 法定解除
- 合意解除・解約
上記のいずれかに当てはまる場合、贈与が履行されたあとでも「はじめから贈与契約はなかったもの」として扱えます。
それぞれがどのような状況か確認しましょう。
法定取消し
法定取り消しとは、法律で定められた事象が発生した場合に契約の無効・取り消しを主張することです。
- 契約の内容に錯誤があった場合
- 詐欺や強迫によって行った契約だった場合
- 未成年者が親権者の同意を得ていない場合
民法では、上記のケースに当てはまるときに、法定取消しができるとしています。すでに納めた贈与税がある場合は、更正の請求を行うと国から返還されます。
法定解除
法定解除とは、生前贈与の不履行を理由に、贈与契約を解除することです。
- 贈与契約後に贈与者が贈与を履行しない場合
- 贈与契約後に贈与者が履行できなくなった場合
民法では、上記のケースに当てはまるときに、法定解除ができるとしています。すでに納めた贈与税がある場合は、更正の請求を行うと国から返還されます。
合意解除・解約
合意解除・解約とは、贈与者と受贈者の双方が合意して「贈与契約がなかったことにする」ことです。
すでに納めた贈与税を還付することはできないため、注意しましょう。
生前贈与加算に注意
生前贈与加算とは、暦年課税で生前贈与された贈与財産を相続税の課税対象とする制度です。生前贈与加算の対象となる財産は、下記の3つの条件に当てはまる場合に限られます。
- 暦年課税で贈与された財産
- 被相続人の死亡から遡って3〜7年以内に生前贈与された財産
- 法定相続人や受遺者など相続・遺贈を受けた方が生前贈与された財産
上記のすべての条件に当てはまる場合、被相続人の遺産に持ち戻して相続税を計算しなければなりません。
ただし、令和5年度に行われた税制改正によって、生前贈与加算の持ち戻し期間が3年から7年に変更されました。令和6年1月1日以降に行われた生前贈与について、現在経過措置がとられています。
贈与日と相続発生日のタイミング次第で生前贈与加算の持ち戻し期間が異なるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
贈与のたびに贈与契約書を作成する
生前贈与を何度か行う場合、贈与のたびに契約書を作成しましょう。贈与者が亡くなったとしても、贈与だったことを明確にできるからです。
また、定期贈与とみなされないための対策にもなります。定期預金とは、一定期間に一定の財産を贈与することです。たとえば、1000万円の贈与契約を交わして毎年100万円ずつ10年間贈与するといった契約を指します。
本来、100万円の生前贈与であれば、暦年課税だと基礎控除内のため10年間贈与税はかかりません。しかし定期贈与とみなされると、初年度の1000万円に対して贈与税が発生します。
毎回贈与契約書を交わすことはもちろん、金額や贈与の時期をずらす工夫も必要です。
公正証書の作成も検討する
贈与契約書をより客観的な証拠にするために、公正証書の作成も検討しましょう。
なぜなら、当事者双方で保管している場合、生前贈与の契約を交わしたあとに日付や財産内容を変更することができてしまうからです。税務調査においては、状況によって信ぴょう性を疑われる場合もあるでしょう。
贈与契約書を公正証書にすると、原本が20年間公正役場で保管されます。改ざんや紛失のリスクも防げます。
生前贈与をする際は契約書を作成しよう
生前贈与の内容に双方が合意しているのであれば、口約束でも法的な効力を発揮します。
しかし、贈与の履行前であればいつでも撤回できるうえに、贈与が本当に行われたのか証明することができません。そのため、生前贈与を行うたびに契約書を作成するようにしましょう。
契約書の作成が難しいと感じる方や、生前贈与や相続全般の相談をしたい方は、積極的に専門家に相談することをおすすめします。正確な贈与契約書が作成できることはもちろん、円満な生前贈与・相続に向けてのアドバイスがもらえます。
相続プラスでは、エリアや悩みごと別に専門家を検索することが可能です。積極的に活用し、あなたに最適な生前贈与を実施しましょう。