「埋葬料はどうしたらもらえる?」「埋葬料と葬祭費は違う?」そのような疑問をお持ちではないですか?故人の葬儀を行った人は、埋葬料または葬祭費を受け取れます。しかし、申請が必要となり期限もあるので、手続きなどを理解しておくことが重要です。この記事では、埋葬料・葬祭費それぞれの概要や支給条件・支給額と申請方法などわかりやすく解説します。
目次
埋葬料・葬祭費とは
埋葬料・葬祭費とも、健康保険の被保険者が死亡した際の葬儀や埋葬の補助として給付されるお金です。故人と生計を一にしていた人や葬儀を執り行った人が受け取れます。
埋葬料と葬祭費は同じ性質の給付制度ですが、被保険者の加入する健康保険によってどちらが給付されるかが異なります。似ているとはいえ異なる制度であり、給付対象や手続きなどに違いがあるため、両者の違いを理解しておくことが重要です。
埋葬料
埋葬料は、社会保険加入者が業務外の事由でなくなった際に支払われる給付金です。協会けんぽ・各種組合健保・共済組合など国民健康保険以外の健康保険に加入している場合に給付されます。つまり、故人が会社員や公務員というケースで受け取れる制度です。
なお、通勤中など業務上の理由で亡くなった場合は、労災保険の対象となり埋葬料ではなく労災保険から「葬祭料」が支払われることになります。
また、埋葬料を受け取れるのは、葬儀を執り行った人で、さらに故人により生計を維持されていた人です。仮に、生計を別にする人が葬儀を執り行った場合、埋葬料は給付されません。ただし、その場合は葬儀を執り行った人に対して「埋葬費」が給付されます。
埋葬料と埋葬費は混同しがちですが、受け取れる人が異なる点は覚えておきましょう。
葬祭費
故人が国民健康保険に加入しているケースで給付されるのが葬祭費です。つまり、故人が74歳以下で自営業や個人事業主として働いていたケースで受け取れます。ちなみに、国民健康保険の被保険者が75歳になると、自動的に国民健康保険から「後期高齢者医療制度」に移行しますが、後期高齢者医療制度の加入者も葬祭費の対象です。
葬祭費は、葬儀を執り行った人(喪主)に給付されるため、受け取れるのは喪主のみとなります。自治体によって条件が異なりますが、火葬のみで葬儀を行っていない場合は給付対象外となるケースもあるので注意が必要です。
埋葬料・葬祭費は給付対象・条件が異なるので、どちらが給付されるのかを把握するようにしましょう。また、被保険者が無くなったら自動的に給付されるのではなく、受け取るためには手続きが必要です。
以下では、それぞれの申請方法について解説するので参考にしてください。
埋葬料の申請方法・必要書類・支給額
まずは、埋葬料の申請方法・必要書類・支給額をみていきましょう。
申請方法
埋葬料は、加入する健康保険の組合に申請することになります。申請書などの必要書類を、加入する健康保険組合か社会保険事務所に提出しましょう。ただし、加入する組合によって手続き方法が異なるケースもあるので、申請する組合の手続き方法を事前に確認することをおすすめします。
また、申請できる人・申請期限は以下の通りです。
- 申請できる人:故人に生計を維持されていた人で葬儀を執り行った人
- 申請期限:故人がなくなった日の翌日から2年以内
申請できるのは、故人に生計を維持されていた人である点に注意が必要です。生計を維持されていた人というのは、故人が生計の全部または一部を維持していた人のことを指します。なお、親族や相続人であるか、世帯主かどうか・同一世帯であるかどうかは問われません。
そのため、親族関係のない内縁者や親元を離れて仕送りをもらっていた人でも申請することが可能です。
申請期限は、故人が亡くなった日の翌日から2年となり、2年を経過すると時効となり給付されません。2年と比較的申請期限に余裕がありますが、後回しにすると忘れてしまいがちです。慌てる必要はないものの葬儀後には早めに手続きすることをおすすめします。
必要書類
主な必要書類は以下の通りです。
- 埋葬料支給申請書
- 故人の健康保険証
- 事業主による死亡の証明
- 生計の維持が確認できる書類(住民票や仕送りの事実のわかる通帳のコピーなど)
埋葬料支給申請書は組合の窓口やホームページでダウンロードできます。事業主の証明が受けられない場合は、死亡診断書や埋葬許可書・火葬許可証のコピーが必要です。
ただし、必要書類は申請先によっても異なるので、確認して用意するようにしましょう。
支給額
埋葬料は、加入する保険組合に関わらず一律で5万円支給されます。ただし、組合によっては組合独自の上乗せにより5万円を超えるケースもあります。
葬祭費の申請方法・必要書類・支給額
次に、葬祭費の申請方法・必要書類・支給額をみていきましょう。
申請方法
葬祭費は、故人が加入していた国民健康保険を管轄する自治体の役場に必要書類を添えて申請します。
また、申請できる人・期限は以下の通りです。
- 申請できる人:喪主または喪主の代理人
- 申請できる期限:葬儀を執り行った日の翌日から2年以内
葬祭費を申請できるのは、基本的に喪主となります。喪主が申請できない場合は、委任状により代理人でも申請可能です。
申請期限は、葬儀を終えた日の翌日から2年以内です。埋葬費の起算日である死亡日とは異なるので注意しましょう。
前述のとおり、葬祭費は葬祭への補助となるため、火葬のみでは申請できない自治体もあります。事前に自治体の申請条件を確認するようにしましょう。
必要書類
必要書類は以下の通りです。
- 国民健康保険葬祭費請求書
- 故人の被保険者証
- 喪主の本人確認書
- 喪主を確認できる書類(葬儀の領収書や会葬礼状など)
- 喪主名義の通帳
- 委任相と代理人の印鑑・本人確認書類(代理人の場合)
支給額
葬祭費の支給額は、3~7万円と自治体によって異なります。たとえば、東京都北区では7万円、大阪府大阪市では5万円、札幌市では3万円が給付されます。目安としては5万円ですが、自治体にもよるので事前に確認するとよいでしょう。
埋葬料・葬祭費について知っておきたいことや混同されやすい言葉
ここでは、埋葬料・葬祭費について知っておきたいことや混同されやすい言葉について解説していきます。
埋葬料・葬祭費は相続財産にならない
埋葬料・葬祭費は相続財産には含まれないため、相続税の課税対象とはなりません。埋葬料・葬祭費は、被相続人(亡くなった人)に給付されるのではなく、葬儀を行った人(申請者)に給付されるものです。
また、相続財産にはならないため相続放棄しても受け取ることができます。相続放棄を検討する場合、相続人の財産に手を付けてしまうと単純承認したとみなされ相続放棄ができなくなりますが、埋葬料・葬祭費は相続財産にあたらないため受け取っても相続放棄は可能です。
ただし、相続放棄を検討している場合は、相続財産の扱いは慎重に行う必要があるため、不安があるなら専門家に相談することをおすすめします。
資格喪失後でも支給を受けることができる可能性がある
故人が社会保険に加入しており死亡時点で資格喪失していた場合でも、以下のケースでは埋葬料の給付が可能です。
- 資格喪失後3か月以内に亡くなったとき
- 資格喪失後、傷病手当金または出産手当金の継続給付を受けている間
- 傷病手当金または出産手当金の継続給付を受けなくなってから3か月以内に亡くなったとき
上記のケースに該当する場合は、申請することで埋葬料を受け取れます。
埋葬料・葬祭費両方の給付は受けられない
埋葬料・葬祭費は加入する健康保険によって給付対象が異なるので、両方の給付を受けることはできません。また、両方の支給要件を満たす場合でも、どちらか一方しか申請できないので注意しましょう。
たとえば、社会保険加入者が退職後、3か月以内に死亡した場合が両方の支給要件を満たす代表的なケースです。前述のとおり、埋葬料は資格喪失後3か月以内の死亡であれば受け取ることができます。社会保険の資格喪失後は国民健康保険に加入しているため、葬祭費の対象でもあります。
しかし、このようなケースであっても、どちらかを申請すれば、もう片方は申請できなくなるので注意しましょう。
家族埋葬料とは
家族埋葬料とは、社会保険の被保険者の扶養家族がなくなった際に給付される埋葬料です。たとえば、社会保険に加入している夫の妻(扶養家族)が亡くなった場合に、申請すると受け取れます。
家族埋葬料は一律で5万円給付され、埋葬料のような上乗せはありません。申請に必要な書類や申請条件は組合によって異なるので、事前に確認するようにしましょう。
葬祭料(労災の場合)とは
社会保険加入者の業務中の死亡については、埋葬料の対象外です。この場合は、労災保険から葬祭料が給付されます。
葬祭料の給付額は、「31万5000円+給付基礎日額×30日分」もしくは「給付基礎日額×60日分」のいずれか多い方です。申請する際は、死亡診断書などの必要書類を添えて所轄の労働基準監督署に提出します。
埋葬費とは
埋葬費とは、社会保険に加入している故人の葬儀を埋葬料の対象とはならない人が執り行った場合に給付されるお金です。
埋葬料は、被保険者と生計維持関係にある人が申請できます。そのため、たとえ家族でも別居しているなどで生計を別にしていると請求できないのです。その場合に、支給されるのが埋葬費になります。
埋葬費と埋葬料は、申請した人によって名目が異なると覚えておきましょう。
そのほかの給付金
ここでは、埋葬料・葬祭費以外で遺族が受け取れる給付金を紹介します。
死亡一時金
死亡一時金とは、国民年金の被保険者が年金を受け取ることなく死亡した場合に、遺族に給付されるお金です。亡くなった時点で、被保険者と生計を同じくしていた遺族のうち「配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹」の順で、順位の高い人に支給されます。
また、死亡一時金は次の紹介する寡婦年金・遺族年金と同時に受け取ることはできません。遺族年金を受け取れる場合は遺族年金、寡婦年金を受け取れる場合はどちらか一方を選択して受け取ることになります。
寡婦年金
寡婦年金とは、国民年金の被保険者である夫が年金を受け取らずに亡くなった場合に、妻に給付される年金です。受け取れる妻は、10年以上の婚姻関係がある・夫によって生計が維持されているなどの条件があります。
また、遺族年金の要件を満たす場合は遺族年金を受け取り、死亡一時金を受け取る場合は寡婦年金は受け取れません。
遺族年金
遺族年金とは、年金の受給要件を満たしている人が年金を受け取ることなく亡くなった場合に遺族に支払われる年金です。故人が国民年金に加入している場合は遺族基礎年金、厚生年金に加入している場合は遺族厚生年金が支給されます。
また、厚生年金加入者で遺族基礎年金の対象となる場合は、両方の遺族年金を受け取ることが可能です。
弔慰金(ちょういきん)
勤務先の企業によっては、福利厚生の一環として弔慰金が遺族に支給されます。弔慰金の有無や額は勤務先によって規定が異なるため、確認するとよいでしょう。
また、基本的に弔慰金は非課税ですが、額によっては一定額が相続税の対象となる場合があります。相続税について不安がある場合は、税理士に相談してみるとよいでしょう。
死亡退職金
死亡退職金とは、在職中に亡くなった人が本来受け取るはずだった退職金を遺族に支給したものです。死亡退職金があるかどうかは、勤務先の規定によって異なります。また、死亡退職金は「500万円×法定相続人の人数」までの額が非課税となります。
死亡保険金
亡くなった人が生命保険に加入している場合、死亡により死亡保険金が支払われます。死亡保険金は加入状況によって課税される税金が異なります。
「被保険者」「保険料の支払い者」が亡くなった人で「受取人」が相続人というケースは、みなし相続財産として相続税の対象です。ただし、死亡退職金同様「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠があります。また、このケースは相続税の対象ではありますが、相続財産とは見なされないため相続放棄しても受け取ることができます。
死亡保険金はどの税金が課せられるか、相続放棄しても受け取れるかは、契約状況で判断しないといけません。判断が難しい場合は専門家に相談することをおすすめします。
埋葬料・葬祭費を忘れずに申請しよう
亡くなった人が国民健康保険に加入していれば葬祭費、社会保険に加入していれば埋葬料の給付を受けられます。しかし、それぞれ給付対象や申請先・申請期限が異なるので、どちらが申請できるか確認し早めに申請することが大切です。
また、故人の死亡による遺族は他にも死亡一時金などの給付金を受け取ることも可能です。しかし、給付金によっては相続税の対象になったり・相続放棄したら受け取れなかったりと判断が難しいケースもあります。給付金の不安があるなら、専門家に相談することをおすすめします。
専門家であれば、葬祭費などの各種給付金のアドバイスだけでなく相続手続き・相続放棄など幅広い相続の悩みをサポートしてくれるでしょう。