三重県四日市市は令和6年5月21日の記者会見で、一人暮らしの高齢者の終活をサポートする事業を開始すると発表しました。身寄りのない高齢者、いわゆる「おひとりさま」高齢者の増加は社会問題となっており、各地の自治体が対策に乗り出しています。記者会見の内容をもとに、四日市市の取り組みを紹介します。
三重県四日市市の高齢者終活支援事業
四日市市は、身寄りのない高齢者が「もしものときの備え」を自分でできるように支援するために、高齢者終活支援事業をはじめると発表しました。自分らしい最期を迎えられるようにするとともに、遺された親族や関係者への負担を軽減することが目的であるとされています。
事業の内容は「相談事業」「啓発事業」と、令和6年10月からスタート予定の「終活情報登録事業」に分かれています。
相談事業は、終活全般の相談ができる「終活相談窓口」を開設する事業です。終活の相談ができるだけでなく、必要な助言や関係機関の案内といったコーディネートまで対応できるとされています。終活相談窓口の詳細は以下の通りです。
対象者 | 三重県四日市市内在住で、身寄りがない又は頼れる親族がいないひとり暮らし高齢者など |
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相談できることの例 |
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開設場所 | 健康福祉部 高齢福祉課内 |
開設予定 | 令和6年6月 |
啓発事業は、終活の重要性を啓発する事業で、エンディングノートの配布やセミナーの開催といった取り組みが行われます。
終活情報登録事業は、緊急連絡先や遺言書の保管場所といった、終活情報を登録できる仕組みをつくる事業です。こうした情報を登録しておくことで、病気や事故などで意思表示が困難になったり、亡くなったりした場合に、その情報が関係者に提供されるようになります。
この制度が導入された社会背景
この制度が導入された背景には、身寄りのない高齢者にとって終活の負担が大きいことに加えて、終活をしないまま亡くなることによる問題が関係していると考えられます。
終活はおひとりさまが行うには負担が大きい
終活を行うことは、同居している家族や頼ることができる親戚がいたとしても大変な労力が伴います。それを身寄りのない高齢者が一人で行うことは、容易ではありません。代表的な終活として以下のようなものが挙げられますが、これらすべてを一人で行うのは難しいと言わざるを得ないでしょう。
- エンディングノートの作成
- 生前整理
- 死後事務委任契約の締結
- 遺言書の作成
終活をしないまま亡くなることによる問題
終活は身寄りのない高齢者が一人で行うには負担が大きいものですが、終活をしないまま亡くなってしまうことによる問題も見過ごせません。身寄りのない高齢者が終活をせずに亡くなると、以下のような問題が起こってしまう可能性があります。
- 親族など必要な人に亡くなったことがすぐに伝わらない
- 生前の手続き情報が分からなくなる
- 遺産を本人の希望通りに分配できない
- 住まいが空き家として放置される
- 孤独死による問題
こうした問題への解決策として、四日市市は終活相談窓口の開設や、エンディングノートの配布・セミナー開催といったものに加えて、令和6年10月から終活情報登録事業にも取り組む予定と発表しています。
自治体による終活の情報登録制度
四日市市が取り組む終活情報登録事業を活用すると、意思表示が困難になったり亡くなったりした際に、事前に登録しておいた情報を関係者に伝えることができるようになります。先ほど解説した、終活をしないまま亡くなってしまうことによる問題の解決にもつながるので、すでにいくつかの自治体で同様の情報登録制度がスタートしています。
身寄りのない高齢者にとって終活の負担が大きいことや、そうした高齢者が終活をせずに亡くなることは、全国的に社会問題となっています。今後もこうした制度を導入する自治体は増えてくることでしょう。
自治体や専門家のサポートを活用しよう
今回紹介したように、身寄りのない高齢者にとって終活は負担が大きいものですが、サポートしてくれる自治体も増えてきています。終活をすべて一人で行うのは大変なので、活用できる制度がないか調べてみることも重要です。自治体のほかにも、弁護士や司法書士といった専門家に相談をすることも効果的なので、一人で悩まずに自治体の窓口や専門家に相談することをおすすめします。