遺産分割協議に大きく影響する「特別受益」と「寄与分」の主張期間ついて、2023年4月1日以降、時効なしから10年間の制限が設けられるようになりました。
「特別受益」(民法903条、904条)とは、生前贈与や遺贈(遺言書による相続分を指定すること)で、相続人が受けた利益。特別受益がある相続人がいた場合、その分を持ち戻して相続分を計算し直すため、その相続人の相続分が減ることになります。
「寄与分」(民法904条の2)とは、相続人が死亡した人に献身的に介護した場合など、その貢献度を遺産に反映すること。今回の民法改正では、「相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない」という規定が民法904条の3に新設。
「特別受益」と「寄与分」に10年のタイムリミットが設定されてしまうと、たとえば、献身的な介護をして、法定相続分よりも多くもらえるはずだった相続人の遺産分が少なくなってしまうという事態が発生する可能性があります。
また、民法で相続人の遺産割合を指定している「法定相続分」を前提に、特別受益や寄与分などの個別具体的な要素を加味して修正した遺産割合を「具体的相続分」と呼びます。相続発生から10年以内に遺産分割を行わないと、この「具体的相続分」による遺産分割ができなくなります。
民法の改正には、遺産分割が長期未了状態の解消を促進する狙いがあります。他の相続人の「特別受益」や、自らの「寄与分」を主張したい相続人は、相続開始後に期間をあけずに早めに遺産分割を行いましょう。
参考:衆議院「民法等の一部を改正する法律」、法務省「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」
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