相続が発生すると、市区町村から相続人のもとに相続人代表者指定届が送られてくる場合があります。相続人代表者指定届はかならず提出しなければならないのか、提出したら自分に税金がかかるのではないかと、不安に思う方もいるでしょう。
このような不安を解消するためには、相続人代表者指定届とは何かを正確に理解し、提出すべきかどうかの判断基準を知っておくことが重要です。
本記事では、相続人代表者指定届に関する解説をしていきます。
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相続人代表者指定届とは?
相続人代表者指定届は、固定資産税をはじめとした税金が正しく納税されるために必要な届出です。市区町村によっては、相続人代表者届出書や相続人代表者指定(変更)届など、名称が異なる場合もありますが、本記事では相続人代表者指定届として取り扱います。
ここからは相続人代表者指定届に記載する具体的な内容や、相続人代表者指定届の目的などについて解説していきます。
固定資産税の納税通知書を受け取る相続人を決める書類
相続人代表者指定届は、固定資産税の所有者が亡くなった際に、相続登記が完了するまでの間、納税通知書などの書類を受け取る代表者を届け出るための書類です。
つまり、誰が亡くなった人に代わって固定資産税の納税通知書などを受け取るのかを決めるために、相続人代表者指定届を提出します。
市区町村によっては固定資産税だけでなく、住民税、軽自動車税、未払い年金の還付金受取人の指定を兼ねる場合もあります。その場合は、複数枚の届出書を作成して各税金の担当窓口に提出することになります。提出方法は市区町村によって異なるので、具体的な方法は各窓口に確認するようにしましょう。
相続人代表者指定届は、市区町村によって固定資産現所有者申告書や相続人代表者届出書などと呼ばれることもありますが、これらは基本的にすべて前述のような目的で使用される書類です。市区町村ごとの名称については、以下で具体的に確認します。
なお、相続と固定資産税の関係についてさらに知りたいという方は、以下の記事も参考にしてください。

相続人代表者指定届
相続人代表者指定届は、代表者となる相続人と固定資産課税台帳に登録されている被相続人を特定できる情報を記載し、代表者以外の相続人を列挙するという形式が一般的です。
相続人代表者指定届という名称を用いている市区町村には、以下のような市区町村があります。
- 神奈川県相模原市
- 千葉県市原市
- 千葉県四街道市
市区町村ごとに異なる書式が用意されていますが、構成に大きな違いはありません。
相続人代表者届出書
相続人代表者届出書の書式は相続人代表者指定届と基本的に同じであり、代表者となる相続人、固定資産課税台帳に登録されている被相続人、代表者以外の相続人の3点が主な記入項目となります。
相続人代表者届出書という名称を用いている市区町村には、以下のような市区町村があります。
- 東京都立川市
- 千葉県白井市
- 静岡県沼津市
相続人代表者指定(変更)届
相続人代表者指定(変更)届も、記載内容の大枠は上記の届出書・申告書と変わりません。「変更」という言葉が入っているのは納税者の変更を意味するものであり、目的はほかの届出書・申告書と同一です。
相続人代表者指定(変更)届という名称を用いている市区町村には、以下のような市区町村があります。
- 福島県福島市
- 静岡県御殿場市
- 沖縄県宜野湾市
相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書
相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書は、字面に迫力があり、名称は長いものの意味するところはほかの届出書・申告書と同じであり、相続人の代表者と固定資産の現所有者を申告する書類です。
相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書という名称を用いている市区町村には、以下のような市区町村があります。
- 神奈川県相模原市
- 和歌山県すさみ町
- 鹿児島県南大隅町
相続登記完了までの連絡先を定める
相続人代表者指定届を提出する目的は、固定資産税、住民税、軽自動車税などの納税通知書の送付先を明確にすることです。
固定資産税、住民税、軽自動車税は、それぞれ以下の時点での所有者や住所がある人が支払い義務を負います。
| 税金の種類 | 支払い義務 |
|---|---|
| 固定資産税 | 1月1日時点での不動産の所有者 |
| 住民税 | 1月1日時点で市区町村に住所がある人 |
| 軽自動車税 | 4月1日時点での軽自動車などの所有者 |
上記の時点から納税通知書が送られてくるまでには、一定の期間があります。例えば、固定資産税の納税通知書は、1月1日時点の登記名義人へ毎年4?5月ごろに送付されます。そのため、納税通知書が送付されるまでの間に登記名義人が亡くなり、相続が発生する場合もあります。
そして、相続人が複数いると、市区町村は誰に納税通知書を送るべきか判断できません。そこで市区町村は、相続人代表者指定届の提出を求め、納税通知書の受領先を明確にさせるのです。
なお、不動産を相続した場合には相続登記が必須となるので、相続登記について知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

相続人代表者=納税義務を負う人ではない
相続人代表者指定届によって代表者になった相続人は、かならずしも納税義務者となるわけではありません。相続人代表者指定届によって定めるのは、あくまで市区町村から送られる納税通知書などの書類の送付先であり、納税義務者そのものではないからです。
相続人が2人以上いる場合、相続財産は法定相続人全員の共有財産として扱われます。そして、相続財産の納税義務は相続人全員が負うことになり、負担割合は法定相続分に従って按分した額となります。
そのため、複数の相続人がいるときでも、相続人代表者がすべての納税義務を負うわけではありません。
相続人代表者指定届を出さなくてもペナルティはない
相続人代表者指定届の提出は義務ではないので、未提出であっても過料・罰金などの法的なペナルティはありません。相続人代表者指定届が提出されなかった場合には、市区町村が指定した法定相続人に対して納税通知書が送付されます。
この場合、市区町村から送られた納税通知書の内容を踏まえたうえで、相続人同士で遺産分割協議を行うことになりますが、法定相続人同士の関係が良好であれば問題は生じにくいでしょう。
しかし、相続人同士の関係性が悪い場合や疎遠な相続人がいる場合、納税通知書が相続人全員へ共有されず、期限までに納税できなくなる可能性があります。納税が遅れると延滞金が発生する可能性もあるので、このようなリスクを回避するには相続人代表者指定届を提出しておくことが望ましいといえます。
具体的にいつまでに納税をしなければならないのか、相続税の申告期限・納税期限について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

相続人代表者指定届を提出したほうがよい状況
相続人代表者指定届は、提出が必須の書類ではありません。ただし、相続人が複数いる場合には、固定資産税の納税通知書などの送付先を明確にする必要が生じるため、市区町村から提出が求められます。
ここからはでは、相続人代表者指定届を提出したほうがよい場合を具体的に紹介します。
納税通知書送付前に相続が発生した
相続人代表者指定届を提出すべきなのは、各税金の納税義務者を定める基準日から納税通知書などが送付されるまでの間に相続が発生した場合です。
各税金の基準日と納税通知書が送付される時期は、以下の通りです。
| 税金の種類 | 基準日 | 納税通知書が送付される時期 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 1月1日 | 4~5月ごろ |
| 住民税 | 1月1日 | 5~6月ごろ |
| 軽自動車税 | 4月1日 | 5月初旬ごろ |
基準日から納税通知書などが送付されるまでの間に相続が開始した場合、被相続人から相続人への納税義務が移るため、正しく手続きをするためには相続人代表者指定届の提出が必要です。
そのため、納税通知書が送付される前に相続人代表者指定届を提出しておけば、関係性の悪い親族や疎遠な親族に納税通知書が送られて、内容を確認できなくて対応できないリスクを避けることができます。
次の基準日までに相続財産の名義変更が完了しない
相続の発生から次の基準日までに相続財産の名義変更が完了しない場合、相続人代表者指定届の提出が必要です。
例えば固定資産税は1月1日が基準日なので、納税通知書は1月1日時点の不動産の所有者に対して送付されます。しかし、相続が発生した年の12月末までに遺産分割協議が成立せず、相続登記が完了しなかった場合、登記簿上の所有者は被相続人名義のままとなってしまいます。
遺産分割協議が成立するまでの間、不動産は共有状態となり、市区町村が指定した相続人に対して納税通知書が送られます。そのため、相続人側は誰に納税通知書が送られてくるかわからないため、対応が遅れて税金を滞納してしまう可能性があります。
したがって、次の基準日までに相続財産の名義変更が完了していない場合は、速やかに相続人代表者指定届を提出することが望ましいといえます。
相続のもめごとが発生している
相続でもめごとが発生し、遺産分割協議がまとまらないと、相続財産の取得者が決まらないため、不動産などの名義変更ができません。そして、相続財産は相続発生と同時に相続人同士の共有状態となるため、新たな所有者が決まるまでは相続人全員が納税義務を負います。
このような場合に相続人代表者指定届を提出しておけば、誰に納税通知書が送られてくるのかを相続人側で把握できるため、見落としや税金の未納を防ぎやすくなります。
もっとも、相続を起因とするもめごとは解決が難しく、話合い自体ができなくなってしまうこともあります。そういったときは、相続トラブルを解決できる専門家に相談しましょう。
相続プラスでは、相続トラブルの解決実績が豊富な専門家を地域ごとにさがすことができるので、相続でのもめごとにお困りの方は専門家への相談もご検討ください。
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相続人代表者の選び方

相続人代表者は相続に関わる納税などの手続きを担うため、責任感があって途中で役割を放棄しない人を選ぶのが望ましいといえます。ただし、代表者を誰にするかといった点について法的な規定などはないので、相続人であれば誰でもなることが可能です。
ただし、相続に関わる手続きは役所や金融機関で行う場合が多いため、平日昼間に時間が取れる人を選ぶとよいでしょう。
相続人代表者の選任に際しては、相続人同士の話合いで決めるのが一般的です。特定の相続人のみで決めると、ほかの相続人から反発されてしまう可能性があるので、できるだけ相続人全員で話し合って決めるのが無難です。
なお、相続人代表者になれるのは相続人本人に限られ、配偶者などが代行することはできません。
相続放棄した人は相続人代表者に指定できない
相続放棄した相続人は、最初から法定相続人ではなかったものとみなされるため、納税義務を引き継ぐことはありません。そのため、相続放棄した相続人は相続人代表者となることができません。
もっとも、相続放棄をした事実を市区町村が把握しているわけではないので、相続人代表者指定届を提出しないと、相続放棄をした相続人に納税通知書が送られる可能性があります。
このような事態を避けるには、相続放棄をした相続人が相続放棄申述受理通知書の写し、または相続放棄申述受理証明書を市区町村に提出する必要があります。相続放棄した人が複数いる場合、相続放棄をした人全員分の通知書や証明書の提出が求められることもあります。
詳しい提出書類などについては、管轄の市区町村の担当窓口に相談して確認しましょう。また、相続放棄申述受理証明書の発行の仕方については、以下の記事も参考にしてください。

相続人代表者指定届の取得方法
相続人代表者指定届は、市区町村から送付された書類に必要事項を記入して、返送することにより手続きが完了します。
ですが、もし相続人代表者指定届が届かなかった場合、自分で書式を入手しなければなりませんが、その場合は市区町村の公式サイトから書式をダウンロードできます。ただし、市区町村によってはダウンロードできる書式がない可能性もあるので、その場合には各市区町村に問い合わせて取得方法を確認しましょう。
相続人代表者指定届の書き方
相続人代表者指定届の書式は市区町村によって多少異なりますが、記入項目自体に大きな違いはありません。主な記入項目は、以下の通りです。
- 被相続人の氏名・住所・死亡年月日
- 相続人代表者となる人の氏名・住所・続柄・連絡先
- 相続人全員の住所・氏名・続柄
上記の3点に加え、市区町村によっては相続割合や相続人の生年月日、代表者の押印などが必要な場合もあります。
相続人と代表者は、原則として本人が自署する必要があります。氏名・住所・続柄は、戸籍や住民票の記載どおり正確に記入します。
書き方に迷ったら市区町村の窓口で相談したり、市区町村の公式サイトの記入例を確認しながら記入しましょう。
代筆による提出が可能な場合もある
代表者となる本人が遠方に住んでいるなど、相続人代表者指定届を自分で記入することが難しい場合、ほかの相続人などによる代筆が認められる場合もあります。
例えば、代筆した場合には備考欄へその旨を記載することで、代筆が認められる場合などがあります。
代筆の可否や代筆に関するルールについては、事前に住んでいる市区町村に確認しておきましょう。
相続人代表者指定届はいつまでに提出すればよい?
送付された相続人代表者指定届に提出期限が記載されている場合があるので、その場合には記載された期限までに提出する必要があります。
もし提出期限が記載されていない場合でも、相続が発生した時点でできるだけ早く相続人代表者指定届を提出するのが望ましいといえます。なぜなら、提出が遅くなると市区町村が指定した相続人に納税通知書が発送されてしまい、相続人全員に共有されず滞納のリスクなどが生じるためです。
トラブルを避けるためには、次回の納税通知書が発送される前までには、相続人代表者指定届を提出するとよいでしょう。
相続人代表者指定届の提出は義務ではない
相続人代表者指定届は、相続が発生した際に税金の納付を円滑に進めるための書類です。特に重要なのは、相続人代表者指定届を提出したからといって、代表者が単独で納税義務を負うものではないということです。
相続人代表者指定届の提出は義務ではなく、未提出でも罰則などはありませんが、納税通知書の行き違いや滞納、延滞金の発生といったトラブルやリスクにつながります。特に、相続でもめごとが生じている場合や、相続放棄をした人がいる場合は、あとからトラブルになるリスクを回避するために、誰に通知書が届くのかを明確にしておくことが重要です。
相続人代表者指定届の役割や注意点を正しく理解したうえで、自分の状況に応じて提出の要否を判断し、相続に伴う税務手続きを安心しておこなえるようにしましょう。
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