法定相続情報一覧図とは?法務局での取得方法や必要書類

公開日:2024年8月22日

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相続手続きのたびに戸籍が必要で大変そうだと考えていませんか。法定相続情報一覧図を利用すれば、相続手続きの際に戸籍の束を提出しなくても手続きを進めることが可能です。とはいえ、法定相続情報一覧図がどのようなものかわからない方も多いでしょう。そこで、この記事では取得方法や記載例・注意点などをわかりやすく解説します。

法定相続情報一覧図とは

法定相続情報一覧図とは、法務局によって証明された相続関係の公的な書類のことです。まずは、法定相続情報一覧図についてみていきましょう。

公的に証明された家系図のようなもの

法定相続情報一覧図は、被相続人の相続関係を家系図のように1枚の紙にまとめたもので、一覧図を見れば被相続人の法定相続人が一目でわかるようになっています。法務局で戸籍に基づいて相続関係を証明する「法定相続情報証明制度」により、認証を受けた法定相続情報一覧図の写しを取得することが可能です。

法定相続情報一覧図は、不動産登記や預貯金の解約などの各種相続手続きで使用できる公的な書類です。各種窓口での相続手続きには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍など相続関係を証明する書類を提出する必要があります。

しかし、法定相続情報一覧図の写しであれば、それらの戸籍の束にかえて一覧図1枚のみの提出で手続きを進めることが可能です。また、写しは必要枚数を無料で交付してくれるので、複数の窓口で並行して手続きを進めることもできます。

このように、法定相続情報一覧図を手続きで用いることで、相続手続きの負担を大きく軽減できるようになります。

法定相続情報一覧図を利用できる相続手続き

法定相続情報証明制度は、そもそも相続登記促進のために創立された制度です。そのため、法定相続情報一覧図も当初は相続登記でのみ利用できていました。しかし、近年は利用できる手続きが増えており、不動産登記以外でも以下のような手続きで利用が可能です。

  • 預貯金の払い戻し・名義変更
  • 有価証券の名義変更
  • 相続した自動車や船の名義変更
  • 相続税の申告・納税
  • 未支給年金や遺族年金手続き

ただし、手続きする機関によっては法定相続情報一覧図での手続きに対応していないケースもあります。法定相続情報一覧図を利用できるかは事前に確認するようにしましょう。

法定相続情報一覧図を取得した方が良いケース・しなくても良いケース

法定相続情報一覧図を取得した方が良いケース・しなくても良いケースは以下の通りです。

<取得した方が良いケース

  • 複数の窓口で相続手続きを行う

<取得しなくても良いケース>

  • 相続手続きする窓口が少ない

法定相続情報一覧図を使用することで、相続手続き時の書類収集の手間を大きく軽減できます。窓口でも、相続関係の把握が1枚の書類だけで簡単にできるので、手続きの時間短縮にもつながるでしょう。

そのため、複数の窓口で相続手続きを行わないといけないケースでは、相続情報一覧図を取得したほうが効率よく手続きを進められます。相続財産が不動産に加え複数の銀行にあるというように、高額で多岐にわたるケースは取得をおすすめします。

しかし、法定相続情報一覧図を取得するには、そもそも戸籍の収集が必要です。さらに、申出人が法定相続情報一覧図を作成する必要があり、手続きに手間と時間がかかるというデメリットがあります。相続財産が不動産1つだけというように手続き窓口が少ない場合は、一覧図取得の手間を省いて直接窓口で手続きを進めた方が時間も手間も短縮できる可能性があるでしょう。

法定相続情報一覧図の記載内容と記載例

法定相続情報一覧図の記載内容と記載例のイメージ

法定相続情報証明制度の申出時には、申出人が作成した法定相続情報一覧図の提出が必要です。ここでは、法定相続情報一覧図の見本で記載内容を確認していきましょう。

法定相続情報一覧図の見本のイメージ

大まかな記載内容は以下の通りです。

  • タイトル「被相続人〇〇法定相続情報」
  • 被相続人の氏名・最後の住所・生年月日・死亡年月日
  • 相続人の氏名・生年月日・続柄
  • 作成年月日
  • 作成者の氏名・住所

法定相続情報一覧図は、A4サイズの白い用紙で作成します。被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどって相続人に漏れがないように作成しましょう。作成時は手書きでもパソコンでも問題ありません。二重線や印鑑での修正も可能ですが、修正箇所が多くなるようなら作成し直すことをおすすめします。

相続人の住所は任意で記載することが可能ですが、記載する場合は申出時に住民票の添付が必要です。住所を記載することで、相続登記申請などで相続人の住所を証明する書類が不要になるケースがあるので手続きする種類に応じて判断しましょう。

また、続柄については戸籍に記載している通りに記載するか、申出時の選択によっては「子」という記載もできます。ただし、「子」と記載した場合は、相続税の申告など一部の手続きで利用できないので注意が必要です。

詳しい記載については、「法務局のホームページ」に掲載されているので確認するとよいでしょう。

法定相続情報一覧図取得までの流れ・必要書類など

ここでは、法定相続情報一覧図の取得までの流れと必要書類について解説していきます。

取得までの流れ・取得方法

大まかな取得の流れは以下の通りです。

  • 必要書類の収集
  • 法定相続情報一覧図の作成
  • 法務局への申出
  • 認証・交付

必要書類と作成した法定相続情報一覧図を法務局に提出することで、取得が可能です。法定相続情報一覧図は様式を「法務局のホームページ」でダウンロードできるので活用するとよいでしょう。

ただし、提出してすぐに取得できるわけではなく交付までに、1~2週間ほど時間がかかります。混み合う時期によってはそれ以上時間がかかるケースもあるので、時間に余裕をもって申し出るようにしましょう。

交付の際には、申出書に記載した申出人の氏名・住所を確認できる公的書類が必要になるので注意しましょう。申出時に返信用封筒・切手を提出していれば郵送での受け取りも可能です。

返信用切手や戸籍収集の費用は必要ですが、法定相続情報証明制度の申出や一覧図の写しの交付に手数料はかかりません。

必要書類

申出時に必要な書類は以下の通りです。

  • 被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 相続人全員の戸籍
  • 申出人の住所・氏名が確認できる公的書類

被相続人の戸籍は、被相続人の本籍地の役所、住民票除票は最後の住所地の役所で取得できます。相続人の戸籍は、相続人それぞれの本籍地の役所で取得します。

なお、令和6年3月1日より最寄りの役所で他の自治体の戸籍であっても取得できる「広域交付制度」がスタートしているため、遠方の役所に出向く必要はありません。ただし、この制度では兄弟姉妹の分は取得できない・一部戸籍は対象外など取得できないケースもあるので注意しましょう。

住所・氏名が確認できる公的書類としては、運転免許証・マイナンバーカードのコピーや住民票の写しが利用できます。

また、以下のような書類が必要になるケースもあります。

  • 相続人全員の住民票の写し(相続人の住所まで記載する場合)
  • 委任状

代理人による申出の場合は、申出人の作成した委任状が必要です。代理人によっては、代理人と申出人の関係のわかる戸籍謄本や有資格者の証明書の写しなども必要になります。

戸籍の取得には以下のような費用が必要です。

  • 戸籍謄本・抄本:1通450円
  • 除籍謄本・抄本:1通750円
  • 住民票:1通300円

法定相続情報一覧図を取得できる人と法務局

法定相続情報証明制度を利用できるのは、以下の人に限られます。

  • 相続人
  • 代理人(親族または専門家)

被相続人の相続人であれば制度を利用できます。代理人での申請もできますが、代理人は親族か弁護士・司法書士などの有資格者に限られるので注意しましょう。

また、申請できるのは以下の地域を管轄する法務局のみです。

  • 被相続人の本籍地
  • 被相続人の最後の住所地
  • 申出人の住所地
  • 被相続人の名義の不動産の所在地

郵送での申請にも対応していますが、いずれの場合でもどこの法務局でも申出れるわけではないので気を付けましょう。

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法定相続情報一覧図について知っておきたいこと・注意点

法定相続情報一覧図を活用する場合は、以下の点を押さえておくことが大切です。

  • 法定相続情報一覧図の有効期限
  • 法定相続情報一覧図は再交付が可能
  • 法定相続情報一覧図を取得できないケースも
  • 二次相続(数次相続)の場合はそれぞれで作成が必要
  • 法定相続情報一覧図と相続関係説明図・法定相続人情報との違い
  • 令和3年4月1日より申出書への押印が不要に
  • 生殖可能年齢からではなく出生から死亡までの戸籍が必要
  • 提出した戸籍は返却される
  • 相続放棄した相続人も記載する

以下で、それぞれ詳しくみていきましょう。

法定相続情報一覧図の有効期限

法定相続情報一覧図には有効期限はありません。ただし、手続きする窓口によっては「発行から〇か月」のように期限が設けられているケースがあるので、事前に有効期限を確認するようにしましょう。

法定相続情報一覧図は再交付が可能

法定相続情報一覧図は、一度発行した後でも必要に応じて再交付を受けることが可能です。追加で必要になったら法務局に申し出ることで再交付してもらえます。

ただし、再交付できる期限が申出した年の翌年から5年という点には注意しましょう。法定相続情報一覧図は、申出後5年間保管されその期間内であればいつでも再交付できますが、5年を超えると再交付できなくなります。

また、再交付を受けられるのは最初に申出した法務局に限られ、受けられるのも当初の申出人のみです。なお、申出人の親族又は有資格者であれば委任状で再交付を受けられます。

法定相続情報一覧図を取得できないケースも

法定相続情報証明制度は、被相続人や相続人が日本国籍を有しないなどで戸籍を提出できないケースでは、利用できません。たとえば、途中で外国籍を取得した・出生時は外国籍であるケースでは、出生から死亡までのつながりのわかる日本の戸籍謄本などを取得できないため、法定相続情報一覧図が取得できないのです。

二次相続(数次相続)の場合はそれぞれで作成が必要

二次相続(数次相続)とは、最初の相続(一次相続)の相続人が死亡することで起きる二度目の相続のことです。たとえば、父と母・子どもがいるケースで、父親が死亡すると母と子どもが父の遺産を相続し、これを一次相続といいます。その後、母が死亡することで、子どもが遺産を相続すると、二次相続となるのです。

なお、被相続人が高齢といったケースでは、一次相続の相続手続きが完了する前に配偶者が死亡して二次相続になるケースも少なくありません。この相続が完了する前に次の相続が発生するケースを数次相続と言います。

法定相続情報一覧図は、被相続人1人に対する相続人をまとめた書類であるため、数次相続の場合は、被相続人それぞれで作成する必要があるので注意しましょう。数次相続で法定相続情報一覧図を活用する場合は、それぞれの法定相続情報一覧図に加えて、次に紹介する相続関係説明図を貼付するとよいでしょう。

法定相続情報一覧図と相続関係説明図・法定相続人情報との違い

いずれも相続情報をわかりやすくまとめた書類ですが、大きく異なるので注意しましょう。

相続関係説明図との違い

相続関係説明図とは、法定相続情報一覧図同様に相続関係を家系図のようにわかりやすくまとめた書類です。ただ、相続関係説明図には法定相続情報一覧図のように記載する内容に決まりはありません。

記載する内容は作成者により異なりますが、次のような点で法定相続情報一覧図と大きく異なって作成することが可能です。

  • すでに亡くなっている人を記載できる
  • 数次相続までまとめて記載できる
  • 遺産分割の内容を記載できる

法定相続情報一覧図には相続人の死亡について記載できないので数次相続が把握しにくくなります。その点、相続関係説明図であれば自由に記載できるので、より正確な相続関係をわかりやすくできます。ただし、相続関係説明図は法定相続情報一覧図のような証明力はなく、各種手続きでは別途戸籍の提出が必要です。

法定相続人情報との違い

法定相続人情報とは、法務局によって長期間相続登記が放置されている土地の名義人の法定相続人について作成された書類のことです。長期相続登記等未了土地については、相続人に対して名義変更を促す通知が送付されます。この際、通知には法定相続人情報の作成番号が記載されているので、この番号を用いることで一定の戸籍を省略して相続登記手続きすることが可能です。

法定相続人情報は、あくまで相続登記が放置された土地の相続登記のための書類です。法定相続人情報一覧図のように、各種手続きで利用できる訳ではないので注意しましょう。

令和3年4月1日より申出書への押印が不要に

それまで法定相続人情報証明制度を利用する際の申出書には、申出人の欄に押印が必要でした。しかし、令和3年4月1日の法改正により押印不要で申し出ることが可能です。また、申出書以外にも再交付申出書・委任状などでも押印は不要となっています。

生殖可能年齢からではなく出生から死亡までの戸籍が必要

相続登記の場合では、提出する戸籍は生殖可能年齢である10歳くらいまでのもので足りるとされています。しかし、法定相続情報証明書の場合は、出生から死亡までの戸籍が必要です。出生までの戸籍がない場合は、追加で提出を求められるので注意しましょう。

ただし、法定相続情報証明制度と相続放棄を同時に申請する場合は、生殖可能年齢(男性は15歳、女性は12歳)までの戸籍でも可能とされています。

提出した戸籍は返却される

法定相続情報証明制度を利用する際に提出する戸籍は、法定相続情報一覧図の写しが交付されるタイミングで返却されます。ただし、申出人の氏名・住所を確認するための公的書類は返却されないので注意しましょう。

相続放棄した相続人も記載する

法定相続情報一覧図には、相続人の中で相続放棄した人がいる場合でも、その人の氏名・生年月日・続柄を記載する必要があります。反対に、相続廃除された人は記載してはいけません。

このように法定相続情報一覧図では、正確な相続人が把握しにくいケースもあるので注意しましょう。相続放棄した人がいる場合、窓口によっては相続放棄受理証明書の添付が必要なケースもあるため事前に確認することをおすすめします。

法定相続情報一覧図は専門家に相談を

相続関係を法務局で証明する法定相続情報一覧図があれば、各種窓口での相続手続きの手間を大きく省けます。ただし、法定相続情報一覧図を取得するために、自身で一覧図を作成したり戸籍を取得するなどの手間がかかるので注意しましょう。

法定相続情報一覧図の取得は、弁護士や司法書士といった専門家に依頼することも可能です。法定相続情報一覧図取得後にはさまざまな相続手続きが待っているので、一覧図の作成からまとめて専門家に依頼することでスムーズに相続手続きを進められるでしょう。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年8月22日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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