不動産所有者の住所変更登記が義務化!負担を軽減する新制度もスタート

公開日:2025年4月21日

不動産所有者の住所変更登記が義務化!負担を軽減する新制度もスタート_サムネイル

令和8年4月1日より、不動産の所有者は氏名もしくは住所に変更があったときに、その変更内容を登記することが義務付けられます。正当な理由なく登記申請を怠ると5万円以下の過料を課せられる可能性があるので、不動産所有者にとっては注意すべき法改正と言えるでしょう。この登記の負担を軽減するために、事前に申出をしておけば法務局が無料で登記をしてくれる「スマート変更登記」という制度が、義務化に先がけて令和7年4月21日からスタートします。

住所等変更登記の義務化とは

令和8年4月1日より、不動産の所有者は氏名もしくは住所に変更があったときに、その変更内容を登記することが義務付けられます。

不動産には登記簿謄本に所有者の氏名・住所が記載されていますが、これまではその氏名・住所に変更が生じたとしても、登記情報を変更する必要はありませんでした。登記簿謄本に登録されているのは不動産を取得した時点の氏名・住所であり、それが現在の氏名・住所と異なっていても問題ないとされていたのです。

それが法改正により、令和8年4月1日からは氏名・住所に変更があった日から2年以内に変更内容を登記することが、不動産所有者の義務となります。

住所等変更登記が義務化された背景

今回の法改正は、所有者不明土地問題の解決に向けた取り組みの一環とされています。国土交通省の令和2年度地籍調査によると、所有者不明土地の割合は24%にも上り、その原因の33%が住所変更登記の未了とされています。

これまでは住所や氏名を変更した際の登記が義務でなく、所有者にとっても変更しないことによる不利益がほとんど発生しないことが、住所変更登記未了の不動産が生まれる要因であったと指摘されています。今回の義務化によりこの要因が解消され、所有者不明土地の発生を抑制することが期待されます。

変更登記の義務を怠ると過料の対象に

今回義務化される住所等変更登記の期限は、変更日から2年以内です。正当な理由なく変更登記の申請を怠った場合は、5万円以下の過料が課せられる可能性があります。法務省は、この正当な理由の例として以下を挙げています。

  1. 検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合
  2. 行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合
  3. 住所等変更登記の義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
  4. 住所等変更登記の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  5. 住所等変更登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

また、義務化の対象は令和8年4月1日以降に不動産の所有者となる人だけでなく、それ以前から不動産を所有している人も含まれます。現在不動産を所有している人も、令和8年4月1日以降に氏名・住所に変更があった際には、住所等変更登記の対象となるので注意が必要です。

参考:住所等変更登記の義務化について|法務省

住所・氏名変更の際に登記申請が不要になるスマート変更登記とは

住所等変更登記の義務化に伴い、不動産の所有者には氏名や住所に変更が生じた際に登記を行う負担が発生します。その負担を軽減するための制度として、令和7年4月21日からスタートするのがスマート変更登記です。

不動産所有者が前もって情報を登録しておくことで、その後氏名・住所に変更が生じた際に法務局が事実確認を行い、その職権で変更登記を行うというものです。不動産所有者が自身で変更登記を行う必要がなくなるため、負担軽減につながることが期待されます。

スマート変更登記の手続き方法

不動産所有者個人が手続きする場合、法務局に氏名や住所、連絡用メールアドレスなどの情報を登録する「検索用情報の申出」が必要になります。手続きは法務局の「かんたん登記申請」のページから行うオンライン申請か、不動産を管轄する法務局への書類提出で行うことができ、どちらの方法でも費用は発生しません。

法人の場合は「会社法人等番号の登記」をすれば利用することができますが、会社法人等番号のない法人は法務局が住所等変更の事実を確認することができないことから、スマート変更登記を利用することができません。

また、海外に居住する個人も法務局で住所等変更を確認することができないため、スマート変更登記を利用できません。

手続きをするタイミング

スマート変更登記を行うタイミングは、不動産の所有者となる時期によって異なるため注意が必要です。具体的には、不動産の所有者になるのがスマート変更登記がはじまる令和7年4月21日以降であるかが基準となります。

令和7年4月21日以降に不動産の所有者になる場合

不動産の所有者となる際の登記申請書に、スマート変更登記に使用する検索用情報を記載することで手続きが可能です。登記を司法書士などの専門家に依頼する場合は、必要になる情報を記載した登記申請書を専門家が用意してくれるため、手続きの負担もほとんど発生せずにスマート変更登記を利用できるでしょう。

令和7年4月20日以前から不動産の所有者となっている場合

令和7年4月20日以前からの不動産所有者は、令和7年4月21日以降にスマート変更登記の手続きをすることになります。住所等変更登記の義務化により、氏名・住所に変更が生じた際には2年以内に変更登記を行わないといけなくなるので、できるだけ早いうちにスマート変更登記の手続きをしておくことを推奨します。

氏名や住所に変更が生じた際に必要になること

不動産の所有者個人がスマート変更登記を行い、その後氏名や住所に変更が生じた際には、法務局が住基ネットの情報をもとに事実確認を行い、変更登記を行ってもよいかを確認するメールを送信します。そのメールに同意の返信を行うことで、法務局が職権で変更登記を行うことになります。このため、検索用情報として登録するメールアドレスは日常的に確認ができるものを選択しましょう。

参考:スマート変更登記のご利用方法|法務省

令和7年4月20日以前に不動産を取得した人はスマート変更登記のご検討を

令和8年4月1日から義務化される住所等変更登記により、不動産の所有者は氏名・住所に変更が生じた際には2年以内に変更内容を登記しなければいけなくなりました。氏名・住所の変更登記には時間的にも金銭的にも負担が伴うため、その負担を軽減するスマート変更登記を活用するのが効果的です。

令和7年4月21日以降に不動産の所有者となる場合は、不動産の所有者になる手続きの中でスマート変更登記の手続きもあわせて行うことができるためスムーズですが、令和7年4月20日以前に不動産の所有者となった人は、新たに手続きをしないとスマート変更登記を使うことができません。スマート変更登記は不動産所有者の負担を軽減する便利な制度なので、不動産所有者は積極的に活用したいところです。

スマート変更登記の手続き方法がわからない方は、法務局や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続登記でお困りの方へ_専門家をさがす

記事の著者紹介

相続プラス編集部

【プロフィール】

相続に関するあらゆる情報をわかりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

専門家をさがす

専門家に相談するのイメージ

本記事の内容は、記事執筆日(2025年4月21日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

記事をシェアする