以前の検討段階で話題となっていた「タワマン節税」に関して、相続税評価額の計算ルール見直しが発表されました。
国税庁は6月30日に「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」の報道発表資料を公開しました。
これまで相続税の節税方法として、マンションなどを購入して相続税評価額と市場価格の乖離を利用し、過剰に相続税を少なく見積もるケースが相次いでいました。国税庁はこのような行為を是正するために新たな計算式を導入し、評価額が市場価格の60%に達しない場合は、60%に達するまで評価額を補正するようになるため税額の増加が見込まれています。
順調に財産評価基本通達の改正手続きが進めば、令和6年1月1日以降に贈与や相続で取得した財産に新しい評価方法が適用される予定です。
出典:国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」
現行の相続税財産評価に関する基本通達では、マンションの評価方法について以下の計算方法に定められています。
- 相続税評価額=建物の価額+敷地の価額
国税庁は、現行の評価方法では立地条件の反映や効用の反映が不十分として市場価格と実際の評価額が乖離してしまうと想定しています。例えば、不動産の評価額には築年数や建物の総階数、マンションの所在階などを反映しているため価格が高くなることも度々あります。
こういった問題を解決するために、国税庁は相続税評価額が市場価格と乖離する要因となっている、築年数・所在階・総階数・敷地持分狭小度の4つの指数に基づき、評価額を補正する方向で整備を進めています。これらの4つの指数を統計的手法で乖離率を予測し、その結果評価額が市場価格理論値の60%に達しない場合は、評価額が60%に達するまで補正するそうです。この60%の数値は、戸建物件とのバランスを考慮して決められたそうです。
今回評価方法の見直し案は以下の通りです。
- 相続税評価額=現行の相続税評価額✕当該マンション1室の評価乖離率✕最低評価水準0.6
第3回有識者会議の議事要旨によれば、専門家からは「合理的」や「妥当」といった声が上がっていました。一方で、新たな評価方法はマンションの評価額をより正確に反映するものと期待されていますが、マンション市況は常に変化しているため、適用後も実態調査による定期的な見直しが必要といった意見も寄せられていました。
今後国税庁にて通達案を作成し、パブリックコメント(意見公募手続き)を経て、実際に通達される改正案がどのように決まるかに注目が集まっています。