マンションを相続したら何をする?必要な手続きや相続税の知っておきたいポイント

公開日:2022年6月28日|更新日:2023年1月4日

マンションを相続

いずれ相続するかもしれないマンションの手続きや活用方法についてお悩みではありませんか。マンションを相続すると、さまざまな手続きが発生するうえに税金も払わなければなりません。事前にどのような手続きが必要なのか、相続税や登録免許税などの税金がどれくらいになるのかを把握していれば、設定された期限までにスムーズに手続きを完了させられます。本記事では、マンションを相続したときの手続き方法や活用事例、税金について分かりやすく解説します。いざというときに滞りなく手続きを進められるよう、あらかじめ準備をしましょう。

基本的なマンションの相続手続き

まずは、マンションを相続する場合の基本的な手続きについて確認しましょう。主に、以下の5つのステップで手続きを進めていきます。

  • 相続財産の調査
  • 相続人の調査
  • 遺産分割協議の実施
  • 相続税の申告・納税
  • 相続登記

順番に確認していきましょう。

相続財産の調査

まず、亡くなった人にどのような財産があるのかを調査し、相続対象となる財産を確定させます。マンションや実家などを含む、以下のような財産が相続財産です。

  • 現金、預貯金
  • 不動産(建物・土地)
  • 株式
  • 投資信託
  • 有価証券
  • 自動車
  • 骨董品・絵画・貴金属
  • 知的財産権(商標権・著作権・特許権など)

プラスの財産だけでなく、借入金やクレジットカードの未払い分などのマイナスの財産もすべて調べなければなりません。
万が一、財産を見落としてしまうと遺産分割をやり直したり、相続税の延滞税を取られたりするなどの可能性が出てきます。余分な手間やリスクを避けるためにも、相続財産の調査はていねいに行いましょう。

もし、遺言書があれば遺言書に相続財産が一覧化されています。相続財産の調査と同時に遺言書を探すことも忘れないようにしましょう。

相続人の調査

続いて、相続人の調査をして誰が相続人であるかを確定させます。相続人は、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本を取れば確認できます。

相続人が複数人いる場合、マンションの遺産分割方法は4つです。

現物分割ひとつのマンションを一人で相続し、他の相続人はマンションと同じだけの価値の財産を相続する方法
代償分割ひとつのマンションを一人で相続し、他の相続人に相続分相当の金額を渡す方法
換価分割マンションを売却し、売却で得た利益を相続人同士で分割する方法
共有分割ひとつのマンションを複数人で共有名義にして相続する方法

相続したマンションに住むのであれば、現物分割がおすすめです。

一方、相続したマンションに誰も住まないのであれば、建物はなくなりますが、換価分割がトラブルなくスムーズに相続できます。ほかの相続人と十分に話し合って遺産分割の方法を決定しましょう。

遺産分割協議の実施

遺言書がなかった場合、遺産分割協議を行ってどの財産を誰が相続するかを決めます。相続人全員の同意をもって、遺産分割協議書を作成します。遠方で直接会えない場合、電話やメッセージで内容を確定させ、郵送を使って全員分の署名と捺印を得なければなりません。

全員の同意のない遺産分割協議書ではマンションを相続するための手続きができないため、注意しましょう。

相続税の申告・納税

相続税の申告・納税は、被相続人が亡くなったことを知った翌日から10か月以内と定められています。申告・納税に遅延すると延滞税が発生するため、注意しましょう。

ただし、相続財産の総額が基礎控除額を下回っている場合、相続税の申告・納税の義務はありません。

基礎控除額は、以下のように計算します。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の人数)

基礎控除額を上回る場合は、相続税の申告書を作成して税務署に提出しましょう。

相続登記

マンションを相続することが決まったら、法務局にて相続登記を行いましょう。相続登記とは、だれがマンションの所有者になったのか名義変更をする手続きです。

相続登記には期限はありませんが、早めに対応しておくことをおすすめします。なぜなら、令和6年4月1日から相続登記が義務化されたからです。

参考:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)|法務省

相続によって所有権を持っていることを知ってから3年以内に相続登記しなければ10万円以下の過料が科せられます。マンションの相続登記の流れは、以下のとおりです。

  • 必要書類を収集する
  • 固定資産評価証明書を取得する
  • 相続登記の書類を作成する
  • 法務局で登記申請をする
  • 登録免許税を支払う

固定資産評価の額によって登録免許税が発生するため、注意しましょう。登録免許税は、不動産の価格に対して0.4%を乗じて計算します。

マンションの相続税と評価額について

相続税を申告

マンションに対して発生する相続税は、マンションの相続税評価額を元に計算されます。建物部分と土地・敷地部分に分けて計算する必要があるため、それぞれの相続税評価額計算方法について確認していきましょう。

建物の相続税評価額計算方法

マンションの建物部分の相続税評価額は、固定資産評価額と同額です。固定資産評価額は、市町村から送られてくる固定資産税の課税明細書の価格(評価額)の欄から確認できます。

もし固定資産税の課税明細書が見つからなかったら、マンションのある市町村の役場で固定資産評価証明書の交付を受けられます。

土地・敷地の相続税評価額計算方法

マンションの土地・敷地部分の相続税評価額は、以下の方法で計算します。

  • 市街地にマンションがある場合…路線価方式
  • 郊外にマンションがある場合…倍率方式

それぞれの具体的な計算方法について確認しましょう。

路線価方式を使った計算方法

路線価とは、道路に面した土地に決められた1平方メートルあたりの評価額です。市場価格の7〜8割程度に設定されます。マンションの土地・敷地部分の相続税評価額は、以下のように計算しましょう。

相続税評価額=路線価×土地面積×画地補正率

路線価は正方形ごとに価格が設定されていますが、実際保有している土地が正方形とは限らないことから画地補正を行います。路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」から確認できます。

倍率方式を使った計算方法

倍率方式は、地域ごとに決められた評価倍率に従って計算する方法です。固定資産税評価額に倍率方式を掛け合わせるため、計算式は以下のとおりです。

相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

評価倍率は市町村あるいは町ごとに決められており、国税庁の「路線価図・評価倍率表」から確認できます。路線価方式や倍率方式で土地の相続税評価額を計算することに不安のある人は、司法書士などの専門家に相談しましょう。

一室の相続税評価額計算方法

マンション一棟すべてを相続するのではなく、マンションの一室だけを相続することもあるでしょう。マンションの土地・敷地の相続税評価額は、マンション全体の敷地の評価額を持分割合で按分(あんぶ)した金額です。

このとき注意したいことは、マンションにある占有部分と共有部分の違いについてです。占有部分とはマンションの住戸のことで、購入した住民しか立ち入れない部分を指します。

一方、共有部分とは、玄関のエントランス部分やエレベーター、廊下、階段、駐車場、などの部分です。共有部分は住民全員の財産とみなされるため、共有部分も相続することになります。マンション全体に対して占有部分に共有部分を含めた持分割合は、マンションの売買契約書や登記簿(登記事項証明書)で確認が可能です。

敷地権の割合という項目に「○分の○」と数字か書かれているため、確認しましょう。

相続税評価額計算をシミュレーション

マンションの相続税評価額の計算をシミュレーションしてみましょう。仮に、亡くなった人が自宅として利用していたマンションの一室を相続したとします。条件は以下のように定めます。

  • 建物部分の固定資産税評価額:3000万円
  • 土地・敷地部分の固定資産税評価額:50億円
  • 持分割合:5000000分の4200

土地・敷地部分の相続税評価額は持分割合で按分するため、以下のように計算します。

相続税評価額=50億円×4200÷5000000=420万円

このとき、建物部分3000万円+土地・敷地部分420万円となるため、マンションの相続税評価額は3420万円です。もし、マンション一棟をすべて相続する場合は、単純に建物部分と土地・敷地部分の固定資産税評価額を合算すれば相続税評価額を導けます。

マンションを相続したあとの対応方法

マンションは、相続して終わりではありません。相続後のマンションをどのように活用するかを検討しておきましょう。マンションを相続したあとの3つの対応方法について解説します。

自ら住む

まず、相続した人がマンションに住むという選択肢があります。もともと亡くなった人と同居していた場合や思い出の場所を失いたくない場合におすすめです。

住みながら建物の管理ができるうえ、特別な手続きも必要ありません。引っ越しを経てマンションに住むのであれば、両隣の住人に入居のあいさつをする程度で済みます。

賃貸で貸し出す

住む予定がないのであれば、賃貸で貸し出すという選択肢もあります。いずれは住みたいと思っている場合や、今すぐ手放したくない場合におすすめです。
賃貸にすれば家賃収入が得られるようになり、大きな収入源となるでしょう。

ただし、貸し出す相手によっては雑に扱われたり、ペットの飼育や喫煙によって臭いが染み付いてしまったりして、自分が住む以上に維持費がかかる可能性があります。
また、常に借り手がいるとは限りません。駅に近かったり築年数が浅いと人気がありますが、築年数が長く人気のないエリアのマンションだと住みたいという人がいないこともあり得るでしょう。

このようなメリットとデメリットを踏まえたうえで、マンションを貸し出したいと思ったら不動産会社に相談しましょう。マンション周辺の似た物件の家賃を教えてもらい、家賃収入がどれくらいになるか検討する材料にしてください。

売却する

相続したあと、マンションを売却する選択肢もあります。マンションに住む予定のない場合や、維持費に不安のある場合におすすめです。
住み慣れた場所の思い出がなくなることは寂しいですが、売却すれば維持費や固定資産税が発生しません。管理方法に悩んだり、近隣住民とのトラブルに巻き込まれることもないでしょう。
また、築年数が47年を超えていれば、売却することをおすすめします。なぜなら多くのマンションの耐用年数は47年で、この期間をすぎると建物の価値はゼロに等しくなると言われているからです。

売却を検討している場合、不動産会社に依頼して査定してもらいましょう。複数の不動産会社に依頼して査定することで、より高い額で売却できます。

マンション相続で発生する相続税の知っておきたいポイント

マンション相続Check Point

マンションを相続すると、多くのケースで相続税が発生します。相続税に関して知っておくべきポイントについて詳しく確認しましょう。

相続時に控除や特例が受けられる

マンションを相続する場合、控除や特例を受けることで相続税を節税できます。

配偶者控除亡くなった人の戸籍上の配偶者が相続した財産のうち、
・1億6000万円以下
・配偶者の法定相続分以下
のいずれかにあてはまる場合に相続税が0円になります。
小規模宅地等の特例要件を満たせばマンションの土地部分の相続税評価額を減額できます。
自宅としての自己利用だけでなく、賃貸マンションにも適用できます。
自己利用していたマンションを相続した場合、要件を満たせば土地の相続雨勢評価額を80%も減額可能です。

いずれの控除も特例も相続税の確定申告を行わなければ適用されないため注意しましょう。

相続税の申告・納税期限は10か月以内

相続税の申告・納税の期限は、被相続人が亡くなってから10か月以内です。もし、期限を過ぎても納税しなかった場合、大きく2つのペナルティが発生します。

  • 罰金(延滞税や無申告加算税など)を追加で発生する
  • 特例が使えない

特例を使えば相続税を大幅に軽減できますが、適用条件には「申告期限内に申告すること」となっているものがあります。マンションを相続するときによく使われる小規模宅地等の特例も当てはまるため注意しましょう。

相続税が支払えない場合は延納や物納ができる

相続遺産であるマンションの価値が大きくて相続税額が高額であるにもかかわらず、現金・預金の財産が残っておらず「相続税を納められない」というケースは少なくありません。このような場合、延納や物納などの手段があることを知っておきましょう。

延納

延納とは、相続税を分割で納められる制度です。以下の条件を満たせば、最長20年間の延納が認められます。

  • 相続税額が10万円を超えること
  • 金銭での納付が困難である事由があり、納付困難な金銭の範囲であること
  • 延納税額・利子税額に相当する担保を提供すること
  • 延納申請書および担保提供関係書類を期限内に提出すること

ただし延納の精度を利用することで利子税が発生するため、一括で納められる余裕があるなら一括で対応しましょう。

物納

物納とは、延納しても現金で納付できない場合に、変わりにもの(資産)で納めることができる制度です。以下のような優先順位が定められており、自分で物納の対象となる資産を選ぶことはほとんどできません。

優先順位資産の品目
第一位不動産・船舶・上場株式・国債証券など
第二位非上場株式など
第三位家財・貴金属・骨董品など

また手続きが煩雑なため、最終手段として考えましょう。

相続税の納付は相続した人がそれぞれで行う

相続税の納付は、マンションなどの財産を相続した人がそれぞれで行いましょう。相続税の申告は共同で代表者1名が行うため、「うっかり納付も住んでいるものだと思っていた」なんてことになりかねません。

自分の分は自分で納付することを忘れないようにしましょう。

正しく評価額を計算しないと脱税を疑われるかもしれない

マンションの建物や土地の評価額が正しくないと、相続税の申告をし直さなければなりません。実際には評価額が高かった場合、過少申告加算税を請求されます。

また、大きく評価額が異なっていた場合は「悪質な財産隠し」「脱税」とみなされる可能性も否定できず、ペナルティが課せられるでしょう。逆に、実際の評価額よりも高い額で申告・納税していた場合は、税務署から指摘が入ることはありません。
ただし余分な税金を納めることとなってしまい、非常にもったいないです。正しい評価額で相続税の申告をするためには、税理士や司法書士などの専門家の力を借りましょう。

マンションの建物や土地の評価額は、自分で調べて計算することができます。しかし、素人の計算では確実性に欠けるでしょう。万が一、間違った計算をしていた場合のペナルティは大きいため、できるだけ専門家に頼ることをおすすめします。

マンション相続時の注意点

マンションを相続するときに気をつけたい注意点が6つあります。事前に確認しておくことで、トラブルを回避しましょう。

相続後に売却・賃貸に出す場合クリーニングなどに費用がかかる

相続後に売却・賃貸に出す場合、部屋を原状復帰しなければなりません。まず、部屋に置いてある遺品を整理して、ものがない状態にしましょう。というのも、家電や家具が置いたままの部屋だと納得のいくまで内覧できず「買いたい」「借りたい」という人が現れないかもしれないからです。
また、ものがない状態になったらハウスクリーニングを行って、掃除してもらいましょう。専用の洗剤や機材を使ってクリーニングしてくれるため、素人では取れない汚れをきれいにしてくれます。特に、風呂場やトイレなどの水回りは買い手や借り手が入念にチェックするポイントです。

細かな部分までクリーニングを行い、買い手や借り手を早期に見つけましょう。

買い手や借り手が見つからない可能性もある

いくらきれいにしたと言っても、買い手や借り手が見つかるとは限りません。とくに、以下のようなマンションではなかなか買い手や借り手が見つからないでしょう。

  • 築年数が長い
  • 設備が古い
  • 交通の便が悪い

このようなマンションは、敬遠されがちです。買い手や借り手が見つからなくても、相続したからには固定資産税や維持費がかかるため注意しましょう。

相続したマンションを放置してはいけない

相続したマンションを放置することは一番やってはいけないことです。マンションを所有するだけで固定資産税や管理費、修繕積立金などが発生します。

自分が住まないのであれば、早くから賃貸や売却を検討すべきです。放置する年数を重ねると、それだけ築年数が経ってしまい、建物の価値は下がる傾向にあります。
また、人が住んでいない家は湿気が溜まって壁や床が痛んだり、水道が壊れたりする原因になりかねません。可能な限り住み続けることが良いですが、住めないなら賃貸で家賃収入を得たり売却して現金化したりすることを検討しましょう。

相続放棄しても管理義務は残る

遠方に住んでいるなどマンションの管理ができない場合やマイナスの相続財産が多かった場合に、相続放棄を選択する人もいるでしょう。しかし、ほかに相続する人がいなかった場合、マンションの管理をしなければなりません。

相続放棄したからといってだれも管理しないでいると、相続財産がほかの人に損害を与えてしまうかもしれないからです。たとえば、亡くなった人のマンションの一室を放置したままだと、異臭問題や害虫問題の原因になりかねません。この場合、近隣住民に被害を被らせてしまうことになるでしょう。

そこで、相続人がマンションの管理義務から免れる方法を知っておくべきです。家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てをして、相続財産管理人へ管理を引き継ぐことができます。相続放棄は、相続人であることを知った日から3か月以内と定められており、期限は短いです。

ほかの相続財産や相続人の状況をみながら、相続放棄すべきかよく検討しましょう。

おわりに

マンションを相続するときの手続きは、以下の流れで行います。

  1. 相続財産の調査
  2. 相続人の調査
  3. 遺産分割協議の実施
  4. 相続税の申告・納税
  5. 相続登記

もちろん、相続したら終わりではなく、マンションを管理していかなければなりません。
相続したマンションの対処法は、主に3つあります。

  • 自ら住む
  • 賃貸で貸し出す
  • 売却する

自分に合う方法で扱うことが1番ですが、放置することだけはやめましょう。どんどん資産価値が下がってしまい、売りたいときには値段がつかないなんてことになりかねません。

マンションの相続には多くの手続きが発生しますが、亡くなった人が残した大きな財産です。有効活用するために、ひとつずつ手続きを進めましょう。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月28日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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