法律的な理論だけでなく、人としての感情を大切にする相続手続き
宮城県仙台市で相続の幅広い相談に対応している、稲辺司法書士事務所の稲辺博幸司法書士。複数の民間企業での勤務を経て40代で司法書士になった経歴の持ち主で、法律の理論だけではなく感情の面でも納得できる相続相談を特徴とされています。生まれ育った仙台を離れた方からの相談も多く受けている稲辺司法書士に、親と子が離れて暮らす相続ならではの課題や、高齢者問題への取り組みについてお話しいただきました。
遠くに住むお客様のことを考えてサポートをする
まずは相談にいらっしゃるお客様について教えてください。どのような相談にいらっしゃる方が多いですか?
相続が発生してから、手続きのご相談にいらっしゃる方が多いですね。中でも、東京など首都圏にお住まいの方から、「仙台に住んでいた親が亡くなったので、相続の手続きをしたい」といったご相談をよくいただいています。事務所が仙台の駅前にあるので、訪ねやすいのだろうと思います。
お客様とご両親が離れて住まれている、というケースですね。そうしたご相談に対応される際に、何か気を付けていることはありますか?
仙台から離れたところにお住まいなので、何度も事務所まで足を運んでいただくのは難しいということを意識してご対応するように心がけています。さらにこういうケースだと、相続人が何人かいたとしても、誰も地元に残っていないことも考えられますので、1回のヒアリングを丁寧に詳しく行うようにしています。
平日は関東の方で仕事をされており、仙台まで来られるとすると、お休みの日に時間をいただくしかない。こちらまで足を運んでいただくその貴重な機会を大事に、1回の面談である程度手続きの目途が立つまでお話ができるように心がけています。
お客様の負担を最小限におさえることまで考える
ご相談の内容としては、どのような手続きに関するものが多いのでしょうか?
圧倒的に多いのが、不動産と預貯金の相続手続きですね。特に不動産については、相続をした後の処分についてまであわせてご相談をいただくことが多いです。
ご両親と離れて住まれている方ですと、相続した家に住み続けるということは少ないので、その処分まで検討されることになります。相続した家を売却して、そのお金を兄弟姉妹で分けたいというご相談ですね。
不動産の処分まで含めたご相談の場合、どのようなお話をして手続きを進めることになるのですか?
まずは「不動産を誰の名義で相続するのか」ということについてお話しすることからはじめます。相続人の中で誰かの単独名義とするのか、複数の相続人の名義とするのか、というもので、これは税金の問題にも関係してきます。
不動産を相続するときに相続税はかからなくても、それらを売却した場合には譲渡所得税という別の税金がかかります。そうなると、この譲渡所得税を複数の相続人でどのように負担するかという問題が生じます。どなたかの単独名義で相続して不動産を売却し、お金をみんなで分ける換価分割という方法であれば、譲渡所得税の負担に関する問題を回避できるので、「税法上の手間を考えると、単独名義で相続して換価分割にするのがおすすめですよ」といったお話をさせていただくことが多いですね。
また、換価分割だと名義を持つ方だけにお越しいただいて手続きをすればよいのですが、複数人の名義となると全員にご来所いただく必要があり、より手間がかかることが予想されます。遠方のお客様も多いので、どんな手続きを取れば手間がかからないように進められるかということも考えて、ご案内するようにしています。
不動産の相続に付随して、「これもやってほしい」といったご要望でよく対応されているものはありますか?
税理士の先生をご紹介することですね。相続税がかかるのか、かからないのか。概算なら私の方でも計算することはできるのですが、そこはやはり専門家にお任せしてご対応いただいた方が良いので、お付き合いのある税理士の先生をご紹介しています。
他には、仙台だけではなく、ご両親の出身地にも不動産があるので、まとめて手続きしたいというご相談をいただくこともありますね。
仙台周辺以外の不動産の手続きも、ご相談としては多いのでしょうか。
多いですね。ただ、現在はオンラインで相続登記の申請ができますので、遠方の不動産であってもまとめてご対応させていただくようにしています。
ありがたいことに、そうした不動産の処分や税金のことなど、相続に関する手続きが全部まとめてできるという口コミが広がっているようで、そういったことを期待してお越しいただく方が増えてきているという印象です。
民間企業出身だからこそ見える「お客様目線」
事務所の強みや特徴を教えてください。
事務所として、依頼者のお気持ちを大事にするということと、面倒見を良くご対応するということを大切にしていますので、これが一番の特徴だと思います。
手続きが終わった後は「こうなりますよ」ときちんと説明するとともに、「親族間でトラブルにならないためにも、こういうやり方を取るといいですよ」といったことまでお話をすることもあります。これまで相続で親族同士で争う姿を見たり、言い合いになってしまう場面に居合わせたりしてきましたので、そこでわざわざ喧嘩につながるようなことはしたくないと思いますから。
稲辺先生がお客様と相続のお話をされるときに、気を付けているポイントを教えてください。
まず、遺産分割の割合を決めていない場合には、「できるだけ相続人の皆さんで分けるのが良いですよ」とお話しすることが多いです。色々な事情で「全部自分が相続したい」と思われる方もいらっしゃいますが、やはり誰かが独占してしまうと、独占された側は不愉快になるでしょうし、不仲の原因にもなってしまいます。
相続の結果、仲がよかった兄弟が口を聞かなくなったという話も珍しくありません。そうならないように、「相続が終わった後も、仲良くするためにこうした方がいいですよ」といったことは、意識してお話しするようにしていますね。
私自身、司法書士の経験が長いわけではなく、ずっと民間企業におりました。そのときに経験したことですが、実際の話し合いでは、すべて理屈通りにはいかず、どうしても感情の方を優先してしまうことがあります。ですので、相手の気持ちや感情の面に気を配ったアドバイスが大事になってくると考えて、相続のお話をするようにしています。これはきっとうちの事務所の特徴でもありますね。
司法書士になった今、これまでの民間企業の経験が生きているな、と思う場面があればぜひ教えてください。
民間企業で働いていたときに、業務上でやりとりのあった司法書士や弁護士の先生から「法律はこうだから」「登記とはこういうものだから」といった説明をされたことがありました。
そのような説明を受けるたびに、「聞き手の感覚とずれているんじゃないか」と感じていました。話の内容は理解できても、なかなか納得にはつながらない。そこで思ったのは、「人間最後には納得することが重要だ」ということでした。
だからこそ、相手が納得できるような説明をしたい、という想いが1番大きいですね。お客様から離れた説明や話し方じゃなくて、もっとお客様にとって分かりやすい説明をしなければ、と強く思うきっかけとなりました。
どうも私は、司法書士事務所にずっと勤めていた人や、法律家から入ってきた人に比べれば、人当たりが柔らかく、話しやすい、冗談が言いやすいタイプのようです。ですので、そういった雰囲気を大事に、専門的な案内についてはできるだけ噛み砕いて、具体例を挙げながら分かりやすい説明をしようと心がけています。
お客様に安心を届けられる司法書士であり続けたい
これから力を入れていきたい取り組みなど、今後の展望として考えているものを教えていただけますか?
私自身、世の中の役に立ちたい、という想いからこの職を志しました。ですので、「いつでも困っているお客様の手助けをしたい」と考えてこの仕事をしています。
最近では、相続への対策として、ご高齢の方々から相談を受けることも増えてきています。後見業務や任意後見のご相談にも対応しているのですが、ご高齢の方々とお話をしていると、本当にコミュニケーションが少なくなっていることを感じますね。今の時代はインターネットやSNSなどでつながっているようには見えるんですけれども、温かみがなくなっている気もします。
そこに対して、具体的に何ができるかは分からないですけれども、司法書士という仕事の中で、できるかぎりお客様がほっとするような、優しい気持ちになれるような仕事ができたらいいなと思っています。業務や事務所を大きくしたいというようなことは考えていません。来ていただいた人が安心できるような、そんな仕事をこれからも続けたいと思っています。
最後に、相続に悩まれている方にメッセージをお願いします。
自分の中で迷っていることは、言葉に出さないと形として捉えづらいものです。そんな時には、言葉にして質問をしてみることです。モヤモヤしていることが、きっと明確になってくるでしょう。
だから、何か迷っていることや、困っていることがあれば、メールでも電話でも構わないので、まずは相談してみてください。対話の中で、自分が本当は何に悩んでいるのかが見えてくるはずです。それがきっと解決につながりますので、まずはお話ししてみることからはじめてほしいですね。
プロフィール
稲辺司法書士事務所
司法書士 稲辺 博幸
昭和36年:宮城県登米市石越町生まれ。興亜火災海上保険株式会社(現日本興亜損保)、ファーストクレジット株式会社、リーマン・ブラザーズ等に勤務。
平成15年:司法書士試験合格
平成17年:宮城県司法書士会登録
宮城県司法書士会:第560号
簡裁訴訟代理等認定番号:第537008号
公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート:会員
宮城県行政書士会:第12062321号
取材を終えて感じた先生の人柄
お客様の気持ちを大切にした、面倒見の良い対応を特徴とされている稲辺司法書士。相続の手続きを行うだけでなく、手続きの後にトラブルにならないように、親族間でのコミュニケーションにまでアドバイスをされていることが印象的でした。
そうした対応スタイルを可能にしている要因は、長く民間企業を経験してから司法書士になられた、稲辺先生のバックグラウンドにありました。「話し合いの場ではすべてが理屈通りにはいかず、人間としての感情を優先することもある」こうした考えのもと、法律的な理論だけではなく、お客様が納得できる説明を行う対応スタイルは、稲辺先生の豊富な経験があってこそ可能になるものと感じました。
そんな稲辺先生がこれから取り組みたいものとして挙げられたのは、「お客様がほっとするような、優しい気持ちになれる仕事をしたい」というもの。高齢の方々が、人と人とのコミュニケーションを取る機会が少なくなっていると感じてのことでした。相続の手続き面だけでなく、コミュニケーションのよりどころとしてもお客様をサポートする稲辺先生の取り組みに、これからの時代に求められる司法書士の役割を感じた取材となりました。
事務所概要
- 名称
- 稲辺司法書士事務所
- 資格者
- 代表 司法書士・行政書士 稲辺 博幸
- 所在地
- 宮城県仙台市青葉区本町1丁目5-31 シエロ仙台ビル4F
- 電話番号
- 050-7587-8988
※「相続プラスを見た」とお伝えいただくとスムーズです
- 営業時間
- 平日 9:00~17:30 ※ご予約で営業時間外も相談可能
- 定休日
- 土曜日・日曜日・祝日・年末年始
- 対応エリア
- 宮城県
- 所属
- 宮城県司法書士会:第560号
簡裁訴訟代理等認定番号:第537008号
公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート:会員
宮城県行政書士会:第12062321号
- 事務所の特徴
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メールで相談する事務所情報掲載日:2024年1月17日
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