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専門家として手助けしたいものは、法的な手続きではなくご長寿応援

法務テーラー司法書士事務所_片野坂弘平_インタビュー

北海道の札幌市で、生前対策を中心とした相続の幅広いサービスを提供されている法務テーラー司法書士事務所。生前対策の中でも、家族信託に力を入れていることが特徴の事務所です。代表を務める片野坂司法書士に、家族信託に注力している背景や、お客様との関わり方についてお話しいただきました。

当事者だからこそ分かる、認知症対策の大切さ

まずは相談にいらっしゃるお客様について教えてください。どのような方々が相談にいらっしゃっていますか?

当事務所にご相談にいらっしゃる方は、半数以上が相続の生前対策について相談したいという方です。相続登記などの、相続が発生した後の手続きのご相談にも対応していますが、もっともご相談が多いのは生前対策ですね。

生前対策の中でも、特に家族信託に力を入れて、積極的にご案内をしていることが特徴です。

家族信託に力を入れられているのには、どのような理由があるのでしょうか?

家族信託は、認知症対策として非常に効果的なんですよね。そのことを多くの人に知ってもらいたいと思って、積極的に家族信託のご案内をしています。

これは、私の祖母が認知症になってしまった実体験をもとに、同じ境遇の方を支えたいという想いを込めて、ご案内しているという面もあります。私の祖母は、祖父が亡くなって割とすぐに認知症を患ってしまったのですが、その際に本当にさまざまな経験をすることになったんです。

当時は祖母と一緒に暮らしていたのですが、症状が進行するにつれてどんどん何もできなくなる様子をみて、非常にショックを受けました。子どもの頃から知っているおばあちゃんのイメージから、どんどんかけ離れていくんですよね。その様子を目の当たりにして、認知症になると普段の生活はもちろん、遺言書を書きたくても書けず、預金すらも自由に引き出せなくなってしまうのだと深く理解しました。

認知症は、患った本人だけでなく、サポートする家族もものすごく困ってしまうんですよね。施設に入ろうと思っても、「施設の費用をおばあちゃんの預金から引き出せない」といった金銭面など、あらゆる面で四苦八苦していました。この時の苦労を経験してきているので、同じ境遇に居る方々をサポートしたい、しなくてはならないという想いがあるんです。

ご家族それぞれの環境を踏まえたうえで、司法書士の立場からできることをサポートしたい。ご相談者様と同じく、認知症の方を支えてきた側の人間として、「こういう制度を活用すると、こんな問題を解決できるんですよ」とご案内することが努めだと思っているんです。どんな状況でも、支え合う仕組みがあるってことを、多くの方に知っていただけると嬉しいですね。

法務テーラー司法書士事務所_片野坂弘平司法書士_01

価値観の違いを尊重して、親と子供の橋渡しになる

実際に家族信託のご依頼をした場合、どのような手順で手続きを進められることになるのか教えていただけますか?

家族信託のご相談を受けた際には、まずご家族のお話をしっかりと聞かせていただくことからはじめます。何が心配で、どんな目的で家族信託を活用するのか。懸念点やご要望を把握したうえてサポートの方針を決定し、具体的な信託の内容を決めていくのが基本の流れです。

信託の内容を決める際には家族会議のような形で、みんなで集まって方針やゴールを話し合いながら決めていくようにしています。「これだったら納得できる形だよね」と皆さんの納得を得ながら進めていきますので、終わった後は家族の絆が深まる感覚もあるんですよね。

なるほど、それは納得感のある良い方法ですね。家族会議に入って話を進めるうえで、気を付けられている点などはありますか?

「合意を取りながら話を進めていても、価値観や納得感はそれぞれ違う」ということには、特に気を付けてご対応するようにしています。当然ですが親世代と子供世代で考えていることは違いますし、子供の中でも両親の近くに暮らす子供と、離れた地域に暮らす子供では考えがまったく違うことがありますので。

そうした価値観の違いを意識せずに進めてしまうと、納得感が異なることで、いざこざが起きる可能性があります。だからこそ、協議後にモヤモヤを残さないよう、当人同士の話し合いができる元気なうちに、家族信託や生前対策の話をすることが大事ですよとお伝えしています。

もし話し合いの後にモヤモヤが残るようであれば、また皆で集まってそれぞれの気持ちや考えを話し合うようご提案することもあるんです。その内容をもとに対策をご提案して、今後の方向性を決めるサポートをしています。こうやって納得感を深めていくことで、皆さんの絆がどんどん深まっていく印象がありますね。

ご家族の皆さんが元気なうちに、親世代と子世代が「こうしたい」と話し合うことができれば、一番良いと思っているんです。親世代の意思を子供世代がしっかりと汲み取って、「分かった、頑張るよ」と引き継ぐ形が、一番ハッピーな形だなと。

「将来的には誰かに引き継いで欲しい」や「認知症になった時にこういう風にして欲しい」といったように、遺言の代用のように活用できるのが家族信託です。ご家族の想いや意思を自由に設計できますので、時間をかけて適切な設計をすることができれば、お客様にとっても非常に満足度が高いものになると思います。

実際に家族信託のご依頼を受けた場合、どのような手順でどのくらいの時間をかけて手続きを行うのでしょうか?

一般的には、子供世代の方からの「親が認知症になったら、どうしたらいいのでしょうか?」といったご相談から、家族信託の検討をはじめることが多いですね。最初のご相談では、その場で簡単な事例を説明しながら考えられる選択肢をご提案し、一度持ち帰って検討いただいています。その後に私の方からもお声かけしながら、ご家族と方針を決めて進める形ですね。

相談からここまでの期間で、早い方だと1~2か月程度でしょうか。長くなると3か月、4か月とかかる場合もありますね。個人的にも、急がなければいけない状況でなければ、時間をかけてじっくり方針を考えてもらって良いと考えているんです。家族信託のなかでも、収益物件を信託する場合などは手続きが変わってくるので、そうした部分は都度ご案内しながら進めるようにしています。

司法書士の先生が家族会議にまで入って話し合いをしてくれるのは、とても心強いことだと思います。先生としては、家族会議に入ることにどんなメリットがあると感じますか?

ご家族の輪に私たちのような第三者が入ることで、話が進みやすくなると思っています。たとえば、子供側から「お父さん、財産の相続はどう考えているの?」とは聞きづらいですよね。「俺の財産をあてにしているのか」と言われて、親子の関係性にヒビが入ってしまうかもしれない。

そんな聞きづらい話や、合意が得にくい協議のサポートをするのが、私たちの役目なんです。皆様の様子を見て、言いにくいことを話せるようにサポートする。話しやすいところはご家族にお任せして、話しにくい部分を専門家としてサポートするイメージです。

私は司法書士として、相続対策のサポートをさせていただいていますが、実は一番伝えたいことは「健康であることがもっとも大事」ということなんですよね。認知症におけるもっとも有効な対策は、シンプルに「認知症にならないこと」ですから。

そのために、きちんと運動して、身体に良いものを食べて、しっかりと寝て。そういった、ご長寿を応援するための、健康についてのお話もさせていただいています。法律的な面だけでなく、身体がいつまでも健やかで居られるように、今後も幅広いサポートを提供していきたいと考えています。

家族信託の有効性を、より多くの人に届けていく

片野坂先生は関東のご出身ということですが、北海道で開業された経緯を教えていただけますでしょうか?

開業する前に勤務していた事務所では、東京の支店に所属していたのですが、北海道の支店への異動がありまして、札幌で暮らすことになりました。そして実際に北海道で過ごしてみて、北海道を心から気に入ってしまったのが、開業のきっかけです。転勤したばかりの頃は、北海道の方々は冷たい印象を受けましたが、そんなことはないとすぐに分かりました。すごく人がいい方が多く、思っていたよりずっと住みやすいぞ、と。

雪や寒さも不安でしたが、札幌市内であれば全然問題ありませんでした。夏は涼しくて快適ですし、ご飯も美味しい。ゴルフ場も近くて安いので、本当に気に入ってしまったんです。そんな時に都市圏への異動の話がきてしまって。その時にはもう北海道を離れたくないという想いがあまりに強くなっていたので、退職させていただいて札幌で開業することになったという感じです。

異動を機に北海道を大好きになられたんですね。家族信託をメインに扱われるようになったのは、札幌で開業されてからですか?

そうですね。開業してから家族信託に積極的に取り組むようになりました。北海道では、首都圏に比べて家族信託があまり普及していないのが現状なんです。法務省が信託を原因とする不動産登記の件数を公表しているのですが、千葉県や埼玉県は年間約8,000件程度に対し、北海道は500件程度という規模感です。

人口規模からすると、北海道で家族信託は全然普及していない。家族信託を扱っている事務所の数も少なく、「他の事務所では家族信託ができないと言われたので…」という経緯で、相談にお越しになる方もいらっしゃいます。だからこそ、今は会う人会う人に家族信託や生前対策を提供していることを伝えるようにしています。少しでも困っている方を助けられるように、認知度を上げることが今は必要だと考えていますね。

法務テーラー司法書士事務所_片野坂弘平司法書士_02

司法書士として、社会課題の解決に寄与したい

事務所として取り組みたいことなど、今後の展望があればお伺いできますでしょうか?

現在は個人のお客様の相続をメインの業務としていますが、今後は会社の相続である事業承継もサポートしていきたいと考えています。相続のご相談にいらっしゃる方が事業を経営されている場合も少なくありませんし、個人の相続と会社の相続の両方に対応していないと、本当の意味でのサポートにはならないと考えているからです。

中小企業は日本国内に370万社程度あるそうなのですが、そのうち260万社の社長は70代という話を目にすることがあり、私は危機感を感じました。地域を支えているのは中小企業ですから、仮に事業承継に失敗して会社が傾くようなことがあれば、その地域の雇用が失われてしまいます。地域のインフラを担うような企業だと、それこそ地域に与えるダメージは計り知れません。この日本全体が抱える問題に、私は司法書士として何か力添えができるんじゃないかと思うんです。

会社の相続も個人の相続と同じで、対策を後回しにしている面があるのだと思います。「まだ大丈夫、俺はまだまだ元気だ」といって、相続のことを考えないようにしている。でも、これは専門家がサポートしてくれることを知らないだけだとも思うんですね。

それなので、まずは会社の相続に向けた対策の、メリットを知ってもらうことが大事だと考えています。私たちなりにお力添えができる範囲で、中小企業や地域を支える役割も果たすことができれば嬉しいですね。

最後に、相続に悩まれている方へ向けてのメッセージをお願いします。

本当にシンプルですが、困っている場合は早めの相談をおすすめしたいです。早く相談することで選択肢も増えますし、対策も早くできるので安心感も得られると思いますね。相談する先は完全にご縁だと思うので、自分で探すのもいいですし、紹介を受けられてもいいかもしれません。

ただご自身で探す場合は、相談したい内容を専門に扱っている事務所の方がいいのではないかと思います。多くの司法書士事務所は幅広い分野に対応していますが、相談したいことが決まっているのであれば、専門でされている事務所の方が不安もなく、満足度も高いはずです。初回の相談を無料としている事務所も多いので、まずは気兼ねなく連絡してみることをおすすめしたいですね。

プロフィール

法務テーラー司法書士事務所
代表司法書士 片野坂 弘平

 

千葉県出身
昭和62年生まれ
法政大学卒業
平成22年:行政書士試験合格
平成23年:司法書士試験合格、千葉県の司法書士事務所、司法書士法人に所属
平成27年4月:司法書士法人の役員加入
令和5年3月:司法書士法人役員脱退
令和5年6月:法務テーラー司法書士事務所開業

 

札幌司法書士会:第966号
簡裁訴訟代理等認定番号:第1101273号
​一般社団法人 家族信託普及協会

 

法務テーラー司法書士事務所_片野坂弘平司法書士_プロフィール

取材を終えて感じた先生の人柄

北海道で家族信託の普及に尽力されている片野坂先生。かつて一緒に暮らすお祖母様が認知症を患った経験から、認知症対策の手法として効果的な家族信託に積極的に取り組まれています。

ご自身も認知症に悩む当事者だったからこそ、苦しんでいる人に寄り添ったサービスを提供する。家族会議にまで入って、じっくり時間をかけて信託を設計していく対応スタイルは、その姿勢の表れでしょう。手続きばかりを見るのではなく、お客様ご家族のご長寿応援を目標に掲げられていることからも、ご家族の役に立ちたいという人柄が滲み出ていました。

認知症対策として法的な手続きだけでなく、ご自身の趣味であるサウナを勧めることもあるとのこと。趣味が講じて「サウナスパ健康アドバイザー」の資格まで取られた片野坂先生の、ご長寿応援にかける想いの広さと深さには驚かされるばかりです。北海道の地域に根差して、ご長寿応援の輪を広げていってほしいと感じた取材となりました。

事務所概要

名称
法務テーラー司法書士事務所
資格者
代表司法書士 片野坂 弘平
所在地
北海道札幌市西区二十四軒4条5丁目1-8 SAKURA-KOTONI2階
電話番号
050-7587-5096

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土日祝 10:00~17:00
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北海道
所属
札幌司法書士会:第966号
簡裁訴訟代理等認定番号:第1101273号
一般社団法人 家族信託普及協会
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事務所情報掲載日:2023年12月5日

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