相続税を納付するために必要な納付書は、相続人自ら取得して記入しなければなりません。本記事では、納付書の取得方法や正しい記入方法、納付方法について詳しく解説します。項目ごとに記載例を提示しているため、ぜひ参考にしてください。相続税の納付期限までに納付書を準備して、スムーズに手続きを終えましょう。
相続税を申告したからといって納付書が届くわけではない
配偶者や親などが亡くなって相続税が発生したら、相続人が自分で納付書を入手する必要があります。相続税の申告をしたからといって、自動的に納付書が郵送されるわけではないため注意しなければなりません。
下記の項目を参考に、相続税の納付書を準備しましょう。
- 納付書の入手先
- 納付書の必要枚数
詳しく解説します。
納付書の入手先
納付書は、税務署の窓口か金融機関で取得できます。
全国にある税務署であれば、受付で「相続税の納付書がほしい」と伝えると必要枚数を揃えてくれます。ただし、被相続人の住所地を管轄している税務署でない場合、管轄の税務署も伝えて税務署名の印字がない納付書を受け取りましょう。
あわせて「コンビニエンスストアで納付したい」「金融機関で納付する予定」など納付方法も一緒に伝えると専用の納付書を発行してもらえます。
原則、税務署のWebサイトなどからのダウンロードや郵送による取り寄せには対応していません。なかには、詳細を記載した依頼書と切手を貼った返信用封筒があれば郵送対応してくれる税務署があるため、どうしても窓口に行けない場合は管轄の税務署に問い合わせましょう。
また、金融機関の窓口にも納付書が準備されていますが、在庫状況によって受け取れない場合があります。確実に必要な枚数を受け取りたいのであれば、税務署の窓口に出向くことをおすすめします。
納付書の必要枚数
相続税の納付書は、納税者1人あたり1枚の納付書が必要です。相続人が複数人いる場合は、他の相続人の分も一緒にもらっておくとスムーズです。
また、書き損じ用に数枚予備をもらっておくと、何度も税務署へ足を運ぶ手間が省けます。
相続税の納付書の記入方法
ここからは相続税の納付書の書き方について、下記の項目の順番に解説します。
- 年度
- 税目番号
- 税務署名・税務署番号
- 税目
- 本税
- 合計額
- 納期等の区分
- 住所・電話番号
- 氏名
お手元に納付書を準備しながら記入方法を見ると、よりわかりやすいでしょう。詳しく書き方を解説します。
年度
「年度」には、相続税を納付する会計年度を記載します。会計年度とは、会計上の便宜のために設けられた一定の期間で、国や地方公共団体では4月1日から翌年3月31日までを一区切りに考えます。
たとえば、被相続人が亡くなった日付が令和5年1月10日だった場合で考えましょう。
- 同年3月31日までに納付すると、年度は「令和4年」
- 翌年3月31日までに納付すると、年度は「令和5年」
一般的な1月1日〜12月31日までの区切りとは異なるため、注意してください。
税目番号
税目番号とは、なんの税金を納付するのかを示すための番号です。相続税を納付する場合、「050」と記載してください。
税務署名・税務署番号
税務署名・税務署番号には、被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する税務署のものを記載します。どこが管轄の税務署かわからない場合は、「国税庁の公式サイト」から検索することが可能です。
また、税務署番号は、管轄の税務署や国税庁相談センターへの電話にて確認できます。納付書を管轄の税務署で取得した場合は、税務署名と税務署番号があらかじめ記載されている場合があります。
もし、管轄と異なる税務署で納付書を取得した場合は、何も記載されていないかをよく確認しましょう。別の税務署名と税務署番号が記載されているのであれば、取得し直す必要があります。
税目
税目の項目には、「相続」もしくは「ソウゾク」と記載しましょう。漢字かカタカナで記載すれば問題ありません。「信託の名称」の項目には記載不要です。
本税
本税の項目には、納付する相続税額を記載します。正しく納付するために、相続税申告書の「申告期限までに納付すべき税額」の欄に記載されている金額と同じ金額を記載しましょう。
合計額
合計額の項目には、「本税」と同様の金額を記載します。このとき、金額の頭に「¥」マークを記載する必要があります。
納期等の区分
納期等の区分の項目には、相続開始日(被相続人が亡くなった日付)を記載しましょう。たとえば、令和5年1月10日が亡くなった日付であれば、「05・01・10」と記載します。
下段には記載の必要はありません。また、期限内に納付する場合、申告区分の箇所は、確定申告の「4」に「○」をつけて提出します。
住所・電話番号
住所の項目には、上段に被相続人が最後に住んでいた住所、下段に相続人の現住所を記載します。記載例は下記の通りです。
被相続人:東京都世田谷区〇〇1-2-3
相続人:東京都新宿区△△1-2-3
上部の電話番号の項目には、相続人の日中に連絡がつきやすい電話番号を記載します。携帯電話の番号でも問題ありません。
氏名
氏名の項目には、上段に被相続人の氏名、下段に相続人の氏名を記載します。記載例は、下記の通りです。
被相続人:相続太郎
相続人:相続一郎
下部のフリガナの欄には、相続人のフリガナをカタカナで記載します。
納付書の記入を間違えた場合
記載内容を間違えたら、できるだけ新しい納付書に書き直すようにしましょう。そのため、書き損じ用の納付書を複数枚揃えておくことをおすすめします。
税額以外の部分を間違えて記載してしまった場合、二重線で修正しても振り込みを受け付けてもらえるケースがあります。しかし、必ずしも認められるわけではないため、できるだけ書き直すことをおすすめします。
相続税の納付方法
相続税の納付方法は、下記の通りです。
- 税務署
- 金融機関
- クレジットカード
- コンビニエンスストア
- スマホアプリ
- その他
最適な納付方法を確認しましょう。
税務署
まず、税務署に出向いて納付書を使って現金で納付する方法があります。支払い手数料など、納付税額以外の費用がかかりません。もし、納付書の書き方に不明点があれば、事前に確認することも可能です。納付すると領収書が発行されます。
申告書を税務署の窓口で提出し、そのまま納付書を記載して納付すれば余計な手間がかからずスムーズです。しかし、被相続人の最後の住所地を管轄している税務署に限られるため、自宅から遠い場合は不便に感じるでしょう。また、平日昼間にしか窓口が空いていないため、仕事をしている方や家事・育児で忙しい方には利用しづらいかもしれません。
金融機関
銀行や郵便局などの金融機関の窓口で納付書を使って現金で納付する方法もあります。振込手数料をかけずに納付できます。納付すると領収書が発行されます。
ただし、すべての金融機関が対応しているわけではないため、あらかじめ納付可能かを確認しておくとよいでしょう。
また、ATMの利用はできず、窓口での振り込みに限られます。窓口が空いている時間に限られる点にも注意が必要です。
クレジットカード
インターネット上からクレジットカードで納付する方法もあります。平成29年よりクレジットカードでの納付が認められており、「国税クレジットカードお支払いサイト」から納付できます。税務署や金融機関の窓口に合わせる必要もありません。
納付書がなくても相続税を納められますが、代わりに国税クレジットカードお支払いサイトで登録手続きを行わなければなりません。
また、一度に納付できる上限額は1000万円未満と定められており、金額に応じて決済手数料が発生します。決済手数料は、以下の表の通りです。
納付税額 | 決済手数料(税込) |
---|---|
1円~1万円 | 83円 |
1万円超~2万円 | 167円 |
2万円超~3万円 | 250円 |
3万円超~4万円 | 334円 |
4万円超~5万円 | 418円 |
5万円以降も、1万円を超えるごとに83.6円(税込)の決済手数料が加算されます。
税務署や金融機関で納付する場合とは違って、領収書の発行がない点にも注意しましょう。
コンビニエンスストア
税務署でバーコード付きの納付書を取得すれば、コンビニエンスストアで納付することが可能です。自宅や職場などの最寄りのコンビニエンスストアから時間を気にせず納付を完了させられます。
ただし、納付できる上限額が30万円以内と定められています。30万円を超える相続税を納付する場合は、他の納付方法を選ばなければなりません。
また、領収書の代わりに払込受領証がもらえます。
スマホアプリ
令和4年12月1日より、スマホアプリからも相続税の納付が可能となりました。
e-Taxを経由して「国税スマートフォン決済専用サイト」から手続きを進めれば、下記の決済アプリから相続税を納付できます。
- PayPay
- LINE Pay
- d払い
- au PAY
- amazon pay
- メルペイ
- 楽天ペイ
スマホからのアクセスに限られており、あらかじめ利用したい決済アプリをインストールしておく必要があります。スマホアプリ納付の場合、決済手数料はかかりません。
ただし、納付税額が30万円以下の場合にしか利用できない点と領収書が発行されない点に注意しましょう。
その他
ここまでにご紹介した納付方法以外にも、下記のような納付方法があります。
- e-Taxによるダイレクト納付
- インターネットバンキング(ペイジー)
しかし、いずれの納付方法であっても事前手続きに手間と時間がかかってしまいます。利用したことがない方は、他の納付方法を選びましょう。
納付期限までに確実に現金納付しよう
相続税の納付期限は、自身に相続発生があった事実を知った日の翌日から10か月以内です。納付期限までに確実に納付しなければ、ペナルティとして延滞税が加算される場合があります。
しかし、相続財産が不動産や美術品などの現物ばかりで、現金を用意することが難しいケースもあるでしょう。相続税は原則一括納付ですが、どうしても難しい場合には下記のような方法を検討しましょう。
- 延納
- 分納
- 物納
いずれにしても、相続税の申告・納付期限までに申請書を提出する必要があり、税務署に認めてもらわなければなりません。
納付期限までに一括納付ができない場合、まずは専門家に相談をしましょう。遺産内容や相続人の経済状況などを個別にみて、最適なアドバイスをしてもらえます。
早めに専門家へ相談すれば、より多くの選択肢のなかからふさわしい解決策が見つかるはずです。
「相続税の納付期限に間に合わない場合」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
相続税の納付書は相続人が用意しよう
相続税の申告をしても納付書が自動的に送られてくるわけではないため、税務署や金融機関の窓口で取得しましょう。書き損じがあるともう一度取りに行かなければならないため、余分にもらっておくことをおすすめします。
なお、相続税の申告・納付期限は自身に相続発生があった事実を知った日の翌日から10か月以内です。期限までに一括納付できない場合には、ペナルティとして延滞税がかかります。
手間や負担が増えてしまうため、被相続人が亡くなったら早めに相続税の申告・納付の準備を始めましょう。