遺言書の検認日に欠席したらどうなる?欠席する方法や注意点をご紹介

公開日:2024年9月19日

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自筆証書遺言の一部と秘密証書遺言は、開封前に家庭裁判所による検認が必要です。検認時には、家庭裁判所から検認期日が通知されます。しかし、仕事などの理由で期日に出席できない場合もあるものです。とはいえ、欠席してもいいのか不安な方も多いでしょう。この記事では、遺言書の検認日に欠席する方法や注意点について詳しく解説します。

遺言書の検認とは

遺言書の検認とは、遺言書の存在を相続人に知らせるとともに検認日時点の遺言書の内容を明確にして、偽造などを防ぐ手続きです。

民法では、遺言書の検認について以下のように定めています。

遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。※引用:民法|1004条1項(遺言書の検認)

相続は遺言が優先されるため、遺言書の内容に従って遺産分割が行われます。しかし、遺言書が法的に適正か・改ざんされていないかを相続人が判断することは難しいでしょう。

そこで、遺言書が法的に正しいかなどを確認し、適切な遺産分割を行うために行われるのが検認です。検認では、遺言作成者が自発的に作成した正式なものか・法的な要件を満たしているか・改ざんされていないかなどが確認されます。

検認なしで遺言書を開封したり、遺産分割を進めた場合、5万円以下の過料が科せられる恐れがあります。また、検認しないことで発見した相続人に改ざんの疑いがかけられるなど相続トラブルに発展する可能性もあるでしょう。そのため、遺言書を発見した場合は、速やかに検認手続きする必要があるのです。

なお、検認が必要な遺言書は「自筆証書遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」に限られます。自筆証書遺言書保管制度を利用している場合や公正証書遺言は、検認が不要とされています。

「遺言書の検認」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

検認手続きの流れ

検認手続きの大まかな流れは以下のとおりです。

検認の申し立て

必要書類を揃えて家庭裁判所に検認を申し立てをします。必要書類については、後ほど説明するので参考にしてください。

ただ、誰でも・どこの家庭裁判所にでも申し立てできるわけではなく、申し立ては以下のように定められています。

  • 申立人:遺言書の保管者または遺言書を発見した人
  • 申立先:遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

申立人の住所地の家庭裁判所とは異なる場合があるので注意が必要です。なお、申し立ては書類の郵送ですることもできます。

検認期日の通知

申し立て後、家庭裁判所から相続人に対して検認期日(検認を行う日)が通知されます。検認期日は、家庭裁判所の開庁している平日9時から17時の間となり、申立日から数週間~1か月ほどが目安です。

裁判所での検認

期日になったら、次は家庭裁判所で遺言書の検認です。検認期日の通知は相続人や利害関係者全員に行われますが、申立人以外が出席するかは各人の判断に任されており、全員が揃わなくても検認は進められます。

検認では、まず出頭した人の本人確認が行われます。その後、申立人が遺言書を提出し、出席した相続人の立ち会いのもと裁判官が遺言書を開封し検認が行われます。

検認で確認されるのは以下のようなことです。

  • 遺言書の様式の確認
  • 遺言書の内容確認
  • 遺言書の真正性確認
  • 遺言書作成時に立ち会った証人の確認など

また、相続人に対して保管状況などの質問も行われるので、質問に正直に答えていきましょう。

検認手続き自体は、15分ほどで完了するのが一般的です。

検認済証明書の申請・発行

検認完了後、遺言書は返還されます。また、その際に検認が済んだことを証明する「検認済証明書」の発行を申請します。検認済証明書は、金融機関などの相続手続きで必要になる書類です。

検認が済んだ遺言書とセットで大切に保管しておくようにしましょう。

検認当日に欠席が可能かは申立人かどうかによって変わる

検認当日に欠席が可能かは申立人かどうかによって変わるのイメージ

検認当日に欠席できるかは、申立人かそうでないかによって異なります。

申立人の場合

申立人の場合、検認への出席が義務付けられており欠席できません。申立人は、検認日当日に遺言書を持参し提出する役目を担うため、申立人が欠席してしまうと検認ができなくなるのです。

検認期日に検認ができないとなると、出席する相続人に迷惑がかかることもあるでしょう。検認が進まないと遺産分割も進められないため、相続手続きにも影響が出る恐れもあります。

仮に、検認を受けずに遺言書を開封すると5万円以下の過料が科せられる恐れもあるため、検認期日には必ず出席するようにしましょう。

申立人ではない場合

申立人以外の相続人については、出席は各人の判断に任されており欠席することも可能です。欠席する際に連絡は必要なく、欠席したとしても罰則はありません。欠席した場合は、検認完了後に検認を実施した旨の通知が行われます。

ただし、遺言書の内容を裁判所が教えてくれるわけではないので、遺言書の内容を確認するには申立人や出席者に確認するか検認調書の閲覧を申し立てする必要があります。そのため、欠席することで出席者よりも遺言内容の確認タイミングが遅くなる点には注意が必要です。

検認には弁護士などの代理人に出席してもらうことができるので、出席はできないがすぐに遺言内容を知りたい場合は代理を検討するとよいでしょう。

申立人が検認をスムーズに行うために出来ること

申立人にも事情があり出席できなくなる可能性は十分考えられます。とはいえ、申立人が欠席すると検認ができずに遺産分割を進められないため、スムーズに検認できるように対策しておくことが必要です。

申立人が欠席しないためにできることとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 日程調整時点で確実に参加できる日を選ぶ
  • 弁護士に手続きを依頼する

日程調整時点で確実に参加できる日を選ぶ

検認期日は裁判所が勝手に決めるわけではありません。
一般的には、申し立てをした日から1か月後を目安に日程調整の連絡が入るため、確実に参加できる日を選んでおくとよいでしょう。また、検認日は平日に行われるので、申し立てから数週間~1か月のスケジュールをあらかじめ調整しておくことも大切です。

弁護士に手続きを依頼する

弁護士に手続きを依頼することで申立人の負担を大きく軽減できます。検認を申し立てするには、書類の収集や申請書作成など大きな手間がかかります。検認当日も裁判官の質問に応えたり、状況によっては追加書類の準備など負担は大きいものです。

弁護士であれば、これらの手続きを代わりに行ってくれるので申立人になっても手間や負担はかからないでしょう。

ただし、弁護士に依頼した場合でも、申立人は期日に出席する必要はあります。しかし、弁護士に依頼しておくことで当日に主席するだけという状況にはできます。当日も弁護士に同席してもらえるので、裁判所とのやりとりもスムーズに進められるでしょう。

また、検認は相続のスタートでしかありません。検認後には、さまざまな相続手続きが必要になったり、遺言書の内容によっては相続トラブルに発展する可能性もあるでしょう。検認時から弁護士に依頼しておくことで、検認後もサポートを受けながら相続を進めることができます。

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遺言書の検認における注意点・知っておきたいこと

遺言書の検認における注意点・知っておきたいこととして以下のことが挙げられます。

  • 検認を必要とする遺言書の種類
  • 検認と遺言書の有効性は別
  • 検認に必要な書類、費用
  • 必要に応じて遺言執行者選任申し立てを行う
  • 遺言をめぐるトラブルに気をつける

検認を必要とする遺言書の種類

検認が必要な遺言書は下記の通りです。

  • 自筆証書遺言書保管制度を利用していない自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言

自筆証書遺言書保管制度とは、法務局が自筆証書遺言書を預かってくれる制度です。この制度では、申請時に遺言書の形式的なチェックを受けられ、原本と画像データが法務局に保管されます。

形式的に有効であり、また保管も法務局で行われるため、改ざんなどのリスクが少なくなります。そのため、この制度を活用している場合は検認が不要とされているのです。

「自筆証書遺言書保管制度」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

検認と遺言書の有効性は別

検認すれば遺言書が有効というわけではありません。検認はあくまでも、遺言書の改ざんを防ぐための手続きであり、法的に有効・無効を判断するものではないのです。よって、検認した遺言書であっても書式の不備・内容が不明瞭などで無効を主張される恐れはあります。

また、遺言書の内容を精査することもないため、法的に有効であっても相続人にとっては不公平なものである可能性もあるでしょう。

遺言書の無効を主張したい・不公平な遺言書で相続トラブルになっているという場合は、別途専門家に相談して対応することをおすすめします。

検認に必要な書類、費用

検認時に必要な書類は以下のとおりです。

  • 遺言書
  • 遺言者の戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 家事審判申立書
  • 当事者目録
  • 収入印紙
  • 連絡用の郵便切手

また、検認には遺言書1通につき収入印紙で800円と連絡用の切手代が必要です。連絡用の切手代については申し立てを行う裁判所によって異なるので、裁判所のホームページなどで確認しましょう。

必要に応じて遺言執行者選任申立を行う

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを進める人のことです。遺言書に遺言執行者の記載がない場合、相続手続きは相続人全員で進めることになります。相続人だけで進めるのが困難な場合は、家庭裁判所に遺言執行者を選定する申し立てを行う必要があります。

遺言執行者は必ずしも選任する必要はありませんが、選任しておくことで相続手続きをスムーズに進められます。また、相続廃除や子どもの認知など遺言執行者にしかできない手続きもあるので、必要に応じて選任するようにしましょう。

遺言執行者は未成年や破産者などでなければ誰でもなれます。とはいえ、相続人から執行者を選ぶとトラブルになりやすいため、弁護士などの第三者を選ぶことをおすすめします。

遺言執行者」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺言をめぐるトラブルに気をつける

前述のとおり、検認は遺言書の有効性を証明する手続きではありません。また、遺言内容によっては無効を主張される・不公平な内容で相続トラブルに発展する恐れもあるでしょう。
遺言を巡るトラブルに対応するには、検認段階から弁護士に相談しておくことをおすすめします。

弁護士であれば検認手続きをスムーズに進められるだけでなく、その後の相続についてもサポートしてもらえるので、安心して相続を進められるでしょう。

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検認が必要な遺言書を発見したら専門家に相談を

自筆証書遺言の一部と秘密証書遺言は発見したら検認が必要です。検認期日には、申立人は出席しなければなりませんが、申立人以外の相続人については欠席することもできます。

申立人は、欠席はできませんが弁護士に検認手続きのサポートを依頼することで負担を最小限に抑えられるでしょう。

また、検認は遺言書の有効性を証明するものではありません。遺言内容によってはトラブルに発展する恐れもあるので、検認時点から専門家に相談しておくとスムーズに相続手続きを進められるでしょう。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年9月19日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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