相続の遺産分割調停に欠席してもいいの?欠席するデメリットと対応方法

公開日:2024年5月30日

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遺産分割調停を欠席するのはダメだろうか?そんな疑問を持っている方もいるでしょう。遠方や都合が合わないなど、出席が難しいケースも珍しくありません。とはいえ、欠席するとペナルティや相続が不利になるのではと心配になるものです。この記事では、遺産分割調停に欠席した場合のデメリットや欠席する際の対応を詳しく解説します。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、遺産分割協議がまとまらない際に家庭裁判所に介入してもらい相続方法を話し合う方法です。遺言のない相続では、相続人全員による遺産分割協議で相続の仕方を話し合います。

しかし、遺産分割協議は全員の合意が必要になるため、誰か1人でも納得しない人がいるといつまでも話し合いを続ける必要があります。そうした、話し合いが長引きそうなケースで利用するのが、遺産分割調停です。

遺産分割調停は、相続人が家庭裁判所に申し立てることで行われます。遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員が中立な立場で相続人の主張を聞き取り、相続の仕方を提案しながら話し合いで合意を目指す場です。

遺産分割調停でも話し合いが合意に至らない場合、さらに遺産分割審判に移行し、裁判所が遺産分割方法を決定します。遺産分割調停は、裁判所の開廷している平日の日中の中から、裁判所に通知される期日に従って行われます。

調停は一回で成立することはなく、一般的には半年から10か月ほどかけて3~4回行われるケースが多いです。しかし、回数や期限に制限がなく、1年以上かかるケースも少なくありません。

また、調停が行われる家庭裁判所は、基本的に相手方の管轄の家庭裁判所か当事者の合意で定める家庭裁判所です。相手方が遠方に住んでいる場合など、自分の家から離れた家庭裁判所で開催される可能性もあります。

そのため、時間の都合が合わない、遠方で行くのが難しいなど出席が難しい場合もあるでしょう。そのような場合は、欠席することが可能です。ただし、自分に有利に相続を進めたいなら欠席しないことをおすすめします。

以下では、遺産分割調停に欠席するデメリット・リスクについて詳しく解説します。

「遺産分割調停・審判」について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

遺産分割調停・審判を欠席する事は可能

遺産分割調停・審判を欠席する事は可能のイメージ

遺産分割調停・審判に欠席することは可能です。欠席したことでペナルティが科せられることはありません。厳密には、正当な理由なく欠席すると5万円以下の過料が科せられますが、実際に適用されるケースはほとんどありません。

主な欠席理由としては、次のようなことがあります。

  • 忙しいなど時間の都合がつかない
  • 体調不良や入院
  • 遠方で行けない
  • 他の相続人に会いたくない
  • 遺産分割調停に納得していない

遺産分割調停の日程や場所の都合が悪く出席が難しいケースは少なくないでしょう。遺産分割調停に進む段階では相続人間の関係性が悪化していることも珍しくなく、相続人に会いたくないという人もいるものです。

どのような理由であれ欠席することは可能です。また、遺産分割調停は弁護士であれば代理で出席が可能であることから、代理を立てれば本人が出席する必要もありません。

ただし、代理人を立てずに欠席を続けているとデメリット・リスクが大きくなる点には、注意が必要です。

デメリット・リスク

遺産分割調停に欠席するデメリット・リスクとしては、以下のようなことが挙げられます。

  • 自分の主張を伝えられない
  • 相手方や調停委員と交渉できない
  • 調停委員の印象が悪くなる
  • 審判に移行する

欠席すると、自分の主張を伝えることができません。また、相手方や調停委員との交渉もできません。欠席を理由に相続が不利になることはありませんが、自分は何も主張せず相手方だけが主張することで分が悪くなる恐れがあるでしょう。

とくに、長年介護をしていたから寄与分を主張したい、相手方が生前贈与を受けているから特別受益を主張したいといった場合は、自分が主張しなければ相手がその旨を主張してくれる可能性はほとんどありません。

また、欠席が続くことで調停委員の印象が悪くなり、円滑な調停に影響する恐れもあります。

遺産分割調停を成立させるには、相続人全員の合意が必要です。1回欠席しても別の回で出席するなどで全員が合意できれば調停は成立します。

しかし、欠席が続くと話し合いでは解決できないと裁判所に判断され、審判に移行するので注意しましょう。話し合いで解決を目指す調停とは異なり、審判は法律に基づいて遺産分割を決定します。

自分に有利に相続するためには法的な根拠や書類を元に主張する必要があり、調停よりも主張が通りにくい傾向があるのです。

遺産分割調停を欠席しても影響が少ないケース

遺産分割調停を欠席すると自分の主張が通りにくくなるので、基本的には出席することをおすすめします。

ただし、以下のようなケースであれば欠席してもそれほど影響はないでしょう。

  • 遺産分割方法に希望がない
  • 相続財産の価値が低い
  • 相続人との関係性を良好に保つことを優先したい

上記のように、遺産分割に興味がない・どのような遺産分割になっても構わないのであれば、審判に移行しても大きな影響はないでしょう。遺産分割で揉めるよりも相続人との関係性を良好にしたいという場合も、欠席しても影響はありません。

その場合は、事前に調停の出席者の話し合いの内容に合意する旨を記載した書類を提出しておくことで、スムーズな調停を進めやすくなります。

遺産分割調停・審判を欠席しなければならない時の対応

遺産分割調停には出席することをおすすめしますが、どうしても欠席しなければならない場面も出てくるでしょう。その場合も、何も対応せずにただ欠席することは避けるべきです。

ここでは、欠席しなければならない時の対応として、以下の5つを解説します。

  • 期日変更を申し立てる
  • 代理人を立てる
  • 電話やオンラインで出席する
  • 書面を提出する
  • 相続放棄・相続分の譲渡

期日変更を申し立てる

指定された日程で都合が悪い場合は、裁判所に期日変更を申し立てることができます。ただし、期日変更を申し立てても変更が認められる可能性は高くありません。

出席する意思があるのであれば、次の回で出席できるように次回以降の希望日を伝えておくとよいでしょう。

代理人を立てる

弁護士であれば、代理で出席することが可能です。先述したように、欠席を理由に不利になることはありませんが、自分の主張を伝えることもできません。相続で不利になりたくないけど出席も難しいという場合は、弁護士に代理で出席してもらう方法を検討するようにしましょう。

弁護士であれば、依頼人の味方となり遺産分割調停の場でも交渉してくれます。結果として、遺産分割を自分に有利にできる可能性も高くなるでしょう。

電話やオンラインで出席する

遠方や入院など裁判所に出向くのが難しい場合は、電話やオンラインで出席できるケースがあります。ただし、全ての家庭裁判所や理由で電話・オンラインに対応しているわけではない点には注意が必要です。

オンラインなどを希望する場合は、事前に家庭裁判所に確認してみましょう。

書面を提出する

遺産分割に興味がなく、他の相続人の話し合いで決めても問題ないという場合は、調停事項に合意する書面を提出しておきましょう。

遺産分割調停では全員の合意がなければ調停が成立しません。しかし、この書面を提出しておくことで欠席しても遺産分割調停が成立します。

相続放棄・相続分の譲渡

相続する意思がないなら、相続放棄を選択するとよいでしょう。相続放棄することで、遺産分割調停に出席する必要はありません。

ただし、相続放棄ができるのは相続開始があったことを知った日から3か月以内です。期日を超えると相続放棄できないので、注意しましょう。

遺産分割調停時に期日を超えているといった場合は、相続分の放棄・譲渡をすることで遺産分割調停に出席せずに済みます。相続分の放棄・譲渡は、自分の相続分を放棄するか譲渡する旨を他の相続人に主張して認められることで成立します。

相続放棄のように家庭裁判所の手続きは必要ありません。しかし、遺産分割調停で相続分の放棄・譲渡する場合は家庭裁判所に必要書類の提出が必要です。事前に必要書類を確認して提出しておきましょう。

また、相続分の放棄・譲渡では、負債の返済義務を放棄することはできない点には注意が必要です。

遺産分割調停・審判で弁護士を代理人として立てるメリット

遺産分割調停・審判では弁護士を代理人にすることが可能です。

ここでは、弁護士を代理人に立てるメリットとして、次の5つを解説します。

  • 遺産分割調停を有利に進められる
  • 調停参加のストレスがかからない
  • 手続きをすべて任せられる
  • 遺産分割審判に移行しても有利に進められる
  • 遺産分割時の手続きも依頼できる

遺産分割調停を有利に進められる

弁護士は、依頼人の希望を優先して遺産分割調停で交渉を進めてくれます。遺産分割調停にただ欠席すると自分の主張が伝えられませんが、弁護士を代理人に立てることで代わりに主張してもらえます。また、自分で主張すると法的根拠が乏しく、感情的になるなど上手く伝わらないこともあるでしょう。

弁護士であれば、正しい法的な知識を元に理路整然と主張してくれるので、調停でも有利に進めやすくなります。

調停参加のストレスがかからない

遺産分割調停では、長時間・複数回拘束されます。自分の主張を伝えるのが苦手という人は、話し合いの場がストレスになるものです。相続人間の関係が悪い場合は、顔を合わせるのも嫌という人もいるでしょう。

弁護士を代理人に立てて欠席することで、調停に参加するストレスから解放されます。

手続きをすべて任せられる

弁護士は、遺産分割調停で自分の主張を認めてもらうための書類の収集や作成も行ってくれます。

法的な知識がなければ、主張が通る書類の作成は難しいものです。弁護士に任せることで、手間や時間をかける必要がなくなります。

遺産分割審判に移行しても有利に進められる

遺産分割調停で話し合いが合意しない場合、遺産分割審判に移行します。

遺産分割審判は、法律に基づいて遺産分割をすすめていくため、自分の主張を通すためには法的な根拠のある書面の作成や立証が必要です。弁護士に依頼しておくことで、審判に移行しても自分に有利に相続を進められる可能性が高くなるでしょう。

遺産分割時の手続きも依頼できる

遺産分割調停・審判の終了後は、調停・審判の内容に従って名義変更などの遺産分割の手続きを進めていきます。弁護士を代理人にしておくことで、それらの手続きまで依頼することが可能です。

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遺産分割調停を欠席する際の注意点

遺産分割調停を欠席する際の注意点や知っておきたいことには、下記のようなことが挙げられます。

  • 弁護士に依頼する場合は相続に強い弁護士を選ぶ
  • 遺産分割審判にも欠席すると不利になる恐れがある

全ての弁護士が相続を得意としているわけではありません。遺産分割調停への代理を依頼するなら、相続が得意で実績の豊富な弁護士を選ぶことが重要です。

相続が不得意な場合、自分の主張を有利に進めることができない恐れがあります。依頼を検討している弁護士のホームページなどで得意分野・実績などを調べるとよいでしょう。

遺産分割調停は欠席しても調停が不成立になるだけで、不利な相続が決まることはありません。しかし、遺産分割審判は欠席したからといって不成立になることはなく、裁判所が遺産分割を決めます。自分の主張ができないことで、不利な相続になる恐れもあるので注意しましょう。

遺産分割調停を欠席する場合は弁護士を代理人に立てよう

遺産分割調停を欠席することは可能ですが、欠席することで自分の主張を伝えられず相続で分が悪くなる恐れがあります。やむを得ない理由で欠席する場合でも、期日の変更を申し立てる・オンライン参加を申請するなど対応することが大切です。

遺産分割調停は、自身が欠席する場合でも弁護士を代理人にすることができます。弁護士を代理人にすることで、自分の主張を伝えられ相続にも有利に働くでしょう。

遺産分割調停が行われるのであれば、早い段階から弁護士に相談することをおすすめします。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て2018年よりライターとして独立。2020年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識など分かりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2024年5月30日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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