相続登記の登録免許税の計算方法、免税措置などについて解説

公開日:2025年8月21日

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相続が発生した際、亡くなった方が所有していた不動産を相続人の名義に変更する相続登記を行いますが、その際に登録免許税を支払う必要があります。そこで、本記事では相続登記における登録免許税の計算方法について、くわしく解説します。令和6年4月1日から相続登記が義務化されたため、相続登記の手続きや登録免許税の計算方法については正確に押さえておきましょう。

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登録免許税とは?

登録免許税は、不動産の登記手続きを行う際に国に納める税金のことです。売買、相続、贈与など、不動産の権利が移転する場面で一般的に発生する費用であり、登記の種類や不動産の評価額によって税額が決まります。

相続登記の場合は他の登記と比べて税率が優遇されており、適用される免税措置もあります。まずはこのような登録免許税の基本的な仕組みを理解しておきましょう。

相続における登録免許税とは?

そもそも登記とは、土地や建物などの所有権を登記簿に記録し、公示するための手続きであり、不動産の所有者を対外的に示す制度のことです。そして、登録免許税は、不動産の登記などに課税される税金のことです。

登録免許税は登記を受ける人が納税義務者となり、登記する不動産の所在地を管轄する法務局で申請を行う際に必要となります。

登録免許税の納付方法は?

登録免許税の納付方法には、「現金納付」と「印紙納付」と「キャッシュレス納付」の3つの方法があります。

現金納付では、金融機関で登録免許税を支払い、その際に受け取る領収証書を登記申請書に添付して法務局に提出します。原則として、登録免許税の支払いは現金納付で行われます。

印紙納付は、収入印紙を購入して申請書に貼り付ける納付方法であり、税額が3万円以下であれば利用できます。印紙は金融機関や法務局内で購入でき、実務上広く使われています。

キャッシュレス納付は近年導入された納付方法であり、インターネットバンキングやATMを使った電子決済、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などが利用可能です。

登録免許税に免税措置はあるの?

登録免許税には、一定の条件を満たす場合に適用される免税措置があります。代表的なものとして以下の2つの免税措置が挙げられます。

  • 数次相続の場合の免税措置
  • 不動産の価額が100万円以下の場合の免税措置

数次相続とは、相続により土地を取得した人が遺産分割成立前に亡くなり、次の相続が起きることです。このような数次相続が起きた場合、登録免許税が免税となります。

また、相続により取得する土地の価額が100万円以下の場合も、相続登記の登録免許税が免税となります。

上記の免税措置は令和9年3月31日まで適用され、免税を受けるためには申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載する必要があります。

参考:相続登記の登録免許税の免税措置について│法務局

登録免許税の計算方法

登録免許税は、不動産評価額をもとに計算します。ここでは不動産評価額の確認方法から課税標準額の計算、そして登録免許税額の計算方法について、順を追って解説します。

以下の手順に従って計算を行えば、相続登記の際に登録免許税がいくらかかるのかを知ることができます。

不動産評価額を確認する

登録免許税を計算するためには、まず対象となる不動産の評価額を把握する必要があります。この評価額は、固定資産税課税明細書または固定資産評価証明書で確認できます。

固定資産税課税明細書は、毎年春頃に市区町村から郵送される固定資産税納税通知書に添付されている書類であり、自身が所有する不動産の評価額が記載されています。

もし固定資産税課税明細書が手元にない場合、市区町村の窓口で固定資産評価証明書を取得し、代用することが可能です。固定資産評価証明書の発行手数料は通常300円程度であり、不動産の所有者本人であれば申請可能です。

課税標準額を計算する

不動産評価額を確認したら、課税標準額を計算します。単一の不動産であれば評価証明書に記載された価格がそのまま基準となりますが、複数の不動産を同時に登記する場合、それぞれの評価額を合計します。

そして、課税標準を求める際は、不動産価格を合計した評価額から1,000円未満の端数を切り捨てます。例えば、評価額が238万5600円の場合、課税標準は238万5000円となります。

また、共有持分がある場合、持分価格から1,000円未満を切り捨て、課税標準額を計算します。

登録免許税を計算する

課税標準が確定したら、以下の計算式で登録免許税を求めます。

    登録免許税=課税標準額×0.4%

参照:No.7191 登録免許税の税額表│国税庁

登録免許税の税率は、所有権の移転原因によって異なりますが、相続による登記の税率は0.4%と定められています。

そして、上記の計算式を用いて計算し、その金額に100円未満の端数を切り捨てたものが最終的な登録免許税額となります。例えば、計算結果が9万5480円の場合、登録免許税は9万5400円となります。

 

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登録免許税の計算例

登録免許税の計算例のイメージ

上記の計算方法に従い、具体的な計算例をご紹介していきます。今回紹介するのは、相続において発生件数が多い下記3つの事例です。

  • 土地と建物をすべて相続する場合
  • 土地と建物の一部を相続する場合
  • マンションを相続する場合

各事例の計算方法について、順を追って説明していきます。「土地と建物の一部を相続する」場合と「マンションを相続する」場合は、持分割合や敷地権割合が関わるため、計算が複雑になる点に注意が必要です。

なお、あらかじめ用語を説明をすると、持分割合とは、1つの不動産を複数人で所有する「共有」の場合に各共有者が持つ所有権の割合のことです。また、敷地権割合とは、マンションなどの集合住宅において、各区分所有者が持つ土地(敷地)の持分割合のことを指します。

土地と建物をすべて相続する場合

土地と建物の持分割合が100%である場合で、登録免許税の計算の中では、特にシンプルな場合です。

具体的には、建物と土地の評価額がそれぞれ以下のような金額であったとします。

  • 建物:1350万7800円
  • 土地:2480万5600円

まず最初に各不動産の評価額を合算します。

1350万7800円(建物)+2480万5600円(土地)=3831万3400円

次に、合計した評価額から1,000円未満の端数を切り捨てて、課税標準額を求めます。

3831万3400円→3831万3000円

最後に、この課税標準額に相続登記の税率0.4%を乗じて登録免許税を計算します。

3831万3000円×0.4%=15万3252円

100円未満の端数は切り捨てるので、登録免許税額は以下のようになります。

15万3252円→15万3200円

以上より、評価額が1350万7800円の建物と2480万5600円の土地を相続した場合の登録免許税の額は、15万3200円となります。

土地と建物の一部を相続する

相続においては、不動産を複数の相続人で共有することがあります。例えば、配偶者と子どもが相続人であった場合、法定相続分どおりに相続したとすると配偶者が2分の1、子どもが2分の1ずつ不動産を共有します。

このような場合、各相続人は持分割合に応じた所有権を取得し、登録免許税も持分に応じて計算されるので、持分割合の把握が特に重要な要素となっています。

具体的に計算例を挙げて説明をしていきます。前提条件として、建物と土地の評価額及び持分が、それぞれ以下のような金額であったとします。

  • 建物:1680万5400円(持分:2分の1)
  • 土地:2150万8200円(持分:2分の1)

まず、建物と土地それぞれの全体の評価額に持分割合をかけ、持分に応じた課税価格を計算します。

  • 建物:1680万5400円×1/2=840万2700円
  • 土地:2150万8200円×1/2=1075万4100円

次に、この2つの持分相当額を合算します。

840万2700円+1075万4100円=1915万6800円

つづいて、合計額から1,000円未満の端数を切り捨てて課税標準額を求めます。

1915万6800円→1915万6000円

最後に、この課税標準額に相続登記の税率0.4%を乗じ、登録免許税を計算します。

1915万6000円×0.4%=7万6624円

100円未満の端数は切り捨てるので、登録免許税額は以下のようになります。

7万6624円→7万6600円

以上より、評価額が1680万5400円の建物と2150万8200円の土地をそれぞれ2分の1ずつ相続した場合の登録免許税の額は、7万6600円となります。

マンションを相続する

マンションの敷地は複数の区分所有者で共有されており、各住戸には敷地権割合が設定されています。そのため、マンションの相続では、区分所有建物と敷地権をもとに課税標準額を計算します。なので前述した通り敷地権割合の把握が重要になります。

建物と土地の評価額及び敷地権割合を下記の前提条件ように定めて、それぞれ計算していきます。

  • 建物:980万7500円
  • 土地:6200万円
  • 敷地権割合:1万分の820

まず、区分所有ごとの敷地面積に相当する土地の評価額を計算します。

6200万円×820/1万=508万4000円

次に、土地の評価額と建物の評価額を合算します。

980万7500円+508万4000円=1489万1500円

つづいて、合計額から1,000円未満の端数を切り捨てて課税標準額を求めます。

1489万1500円→1489万1000円

最後に、この課税標準額に相続登記の税率0.4%を乗じて登録免許税を計算します。

1489万1000円×0.4%=5万9564円

100円未満の端数は切り捨てるので、登録免許税額は以下のようになります。

5万9564円→5万9500円

以上より、評価額が980万7500円の建物と、6200万円の土地のうち敷地権割合1万分の820を相続した場合の登録免許税の額は、5万9500円となります。

登録免許税の計算に間違いがあった場合

相続登記を申請したものの、持分割合や敷地権割合の把握間違いや計算ミスなどで登録免許税の金額が誤っている可能性もあります。その結果、納付額が過少である場合は追加の納付を求められ、逆に納付額が過大である場合は還付金が発生します。

どちらの場合であっても余計な手間と費用がかかってしまうので、登録免許税の計算は正確に行わなければいけません。もっとも、登録免許税の計算は慣れていないと難しい場合も多く、自分で計算すると誤りが生じることもあるでしょう。

費用を節約するために、自分で相続登記の申請を行うという選択肢もありますが、計算を間違えると余計な手間がかかり、結果的にコストがかかることにもなりかねません。

そのため、確実に登録免許税を計算し、誤りなく相続登記の申請を行うには、専門家に依頼することも検討するとよいでしょう。

登録免許税の手続きの専門家は司法書士です

司法書士は不動産登記の業務を担う専門家であり、相続登記における登録免許税の計算や申請手続きは司法書士が専門とする業務分野です。そのため、司法書士であれば登録免許税に関連する以下のような様々な手続きを、ワンストップで対応できます。

  • 相続財産調査による不動産の把握
  • 相続人調査による戸籍収集や相続関係説明図の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続登記の申請

令和6年4月1日から相続登記が義務化されたことで、司法書士の役割はこれまで以上に重要になっています。登録免許税の免税措置についても法令条項に関する知識が必要ですが、司法書士に依頼することで確実に手続きを進められます。

特に相続人調査による戸籍収集は想像以上に時間や手間がかかる傾向があるため、特にこの部分に不安を抱えている場合には、早めに司法書士に相談すると良いでしょう。

司法書士への依頼手順

司法書士への依頼までの手順は、以下の通りです。特に手順3の面談での相談が特に重要なので、相談をスムーズにできるように状況を整理しておきましょう。

  • 手順1:司法書士にお問い合わせ
  • 手順2:初回相談の面談予約
  • 手順3:面談での相談・現状把握・見積もり提示
  • 手順4:複数の事務所で費用と対応範囲を比較検討
  • 手順5:依頼する事務所を決定し契約を締結

まずは依頼する司法書士を選び、電話やメールで問い合わせを行います。問い合わせ時に初回面談の予約を取り、実際に事務所を訪問して費用の見積もりを受けます。可能であれば複数の事務所に相談し、費用や対応範囲を比較検討するとよいでしょう。

信頼できる事務所を選定できたら依頼契約を締結し、実際の相続登記手続きが開始されます。司法書士は必要書類の収集から登記申請書類の作成、登録免許税の計算・納付まで、専門的な知識を活かして確実に手続きを進めてくれます。

司法書士に支払う費用感

相続登記を司法書士に依頼した場合に発生する費用は、以下のような内訳になります。

  • 司法書士報酬:5万円から15万円程度
  • 登録免許税:固定資産評価額の0.4%
  • 実費:住民票や登記事項証明書など1通あたり300円から750円

特に司法書士報酬と実費については相続人の数や不動産の数によって変動する傾向があるため、事前に見積もりを取ることが重要です。

登録免許税は法定の税率で決まりますが、免税措置が適用される場合は免除されます。

相続登記や登録免許税でお困りの際は専門家にご相談を

相続登記を行う際、登録免許税に関する対応は避けられません。しかし、登録免許税の計算や相続登記の手続きは専門的な知識を要する部分が多く、計算ミスや申請書の記載漏れなどで予期しない手間や費用が発生する可能性があります。

また、令和6年4月から相続登記が義務化されたことで、適切かつ確実な手続きの重要性は高まっています。

登録免許税や相続登記について不安や疑問がある場合、不動産登記の専門家である司法書士にご相談ください。司法書士であれば豊富な経験と専門知識を活かし、安心して手続きを完了させられます。

 

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記事の著者紹介

金田直也(ライター)

【プロフィール】

法律×マーケティングの専門家。司法試験予備試験一次合格後、二次試験最終順位は受験者総数の上位約5%。法律ライター歴5年、執筆記事1,000本以上、弁護士への取材100件以上の豊富な実績を持つ。東証マザーズ上場企業(売上高約20億円)、業界トップクラスの大手弁護士ポータルサイト運営企業をはじめ、多様なクライアントと3年以上の長期継続契約を維持。法律知識×弁護士実務への理解×コピーライティングスキルの総合力で、弁護士事務所をはじめ士業の集客・受任数増加に貢献。

【資格】

司法試験予備試験一次合格

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年8月21日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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