血族という言葉の意味をご存知でしょうか?なんとなく血の繋がりのある一族というイメージをする方が多いのではないでしょうか?
実は血族とは法的な概念であり、明確な決まりが設けられ、自然血族や法定血族などに区分されています。
本記事では、血族の説明と自然血族や法定血族などの区分について解説します。
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血族とは?
血族(けつぞく)とは、法的に血縁に由来する関係にある人々をまとめて指す言葉です。
血族と聞くと、一般的には生物学的な血のつながりがある人(自然血族)を血族と考えられがちですが、養子縁組など法的な要件で親子関係が成立した場合でも、その関係は血族(法定血族)とみなされます。
そしてまず血族の基本概念、自然血族と法定血族を解説していきます。
自然血族とは?
自然血族とは、「血のつながりがある人」や「同じ遺伝子を持つ人」を指す言葉で、生物学的に血のつながりがある人と定義されています。たとえ親族関係が遠くても生物学的なつながりがあれば、自然血族にあたります。
自然血族の具体例としては、親子、祖父母と孫、従兄弟同士、はとこ同士などが挙げられます。
一方で、配偶者やその親、配偶者の連れ子、養子縁組による親子関係は、生物学的なつながりがないため、自然血族にはあたりません。
そして婚姻関係のない男女の間に生まれた子ども(非嫡出子)は、かならず母親と自然血族関係になります。なぜなら、母親が出産することで生物的なつながりが明らかだからです。
ただし、父親と非嫡出子の関係は、父親がその子どもを認知するかどうかによって異なります。
父親が認知しない場合、法律上の親子関係は成立せず、自然血族とはみなされません。父親が認知した場合に初めて親子関係が成立し、その時点で自然血族となります。その結果、子どもは父親の戸籍に記載され、法定相続人としても認められます。
法定血族とは?
法定血族とは、法律上血縁関係があるとされる人々を指す言葉です。生物学的な血のつながりはないものの、法律によって血縁関係があると認められている人々を指します。
具体的には、養子縁組の場合が該当し、民法727条では、養子と養親及び、その血族との間に、養子縁組の日から血族間と同じ親族関係が生じると定めています。
また、法定血族と自然血族は、基本的には同じ法的な義務や権利を持っていますが、一つだけ明確な違いがあります。
それは、法定血族の場合は離縁手続きを行うことで血族関係を解消できるのに対し、自然血族は生物学的な血のつながりがあるため、法律上その関係を解消することはできないという点です。
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血族の系統

血族には「直系血族」と「傍系血族」という、2つの家系図上の系統的な位置関係を示す概念があります。ここではこの「直系血族」と「傍系血族」を解説していきます。
直系血族とは?
直系血族(ちょっけいけつぞく)とは、直接的な血のつながりがある親子関係にある血族のことです。家系図にしたときに、縦方向につながっている血族といえば、イメージしやすいかもしれません。
直系血族の例としては、父母や子どもに孫、祖父母などがあたります。
傍系血族とは?
傍系血族(ぼうけいけつぞく)とは、血の繋がりはあるが、親子関係ではない血族です。家系図にしたときに、横方向につながっている血族といえば、イメージしやすいかもしれません。
傍系血族の例としては、兄弟姉妹やいとこ、甥や姪などがあたります。
わかりやすく解説
家系図にしたときに、縦につながる血族を直系血族、横につながる血族を傍系血族と考えると理解しやすいと思います。
あるいは、漢字の意味から覚える方法もあります。「直系」の「直」は、間に隔たりがない、つまり「直接」という意味です。一方、「傍系」の「傍」は、「そば(傍)」や「かたわら(傍ら)」のように、離れていることを表しています。
このことから、直系親族は「隔たりがない血族」、傍系親族は「少し離れている血族」と覚えることもできます。
血族の世代
家系図には、「直系血族」や「傍系血族」といった血族のつながり方を示す用語のほかに、血族の世代を表す概念もあります。
この世代を示す言葉として「尊属血族」と「卑属血族」が使われます。しかし、これらはあまり一般的ではなく、意味がよくわからないと感じる人も多いようです。
ここでは、「尊属血族」と「卑属血族」という言葉について、わかりやすく解説します。
尊属血族とは?
尊属血族(そんぞくけつぞく)とは、自分よりも上の世代にあたる血族のことです。直系血族か傍系血族かを問わず、自分よりも年上の世代であれば、すべて尊属血族に含まれます。家系図で見たときに、自分を中心にして上段に位置する親や祖父母などを指すと考えるとわかりやすいでしょう。
この場合、直系血族や傍系血族といった分類は意識しません。
卑属血族とは?
卑属血族(ひぞくけつぞく)とは、自分よりも下の世代にあたる血族のことです。直系血族か傍系血族かを問わず、自分よりも若い世代であれば、すべて卑属血族に含まれます。家系図で見たときに、自分を中心にして下段に位置する子どもや甥や姪、孫など指すと考えるとわかりやすいでしょう。
この場合も、直系血族や傍系血族といった分類は意識しません。
わかりやすく解説
尊属血族と卑属血族という区分は、直系血族や傍系血族のような厳密な区分ではなく、大まかに分けるための概念です。
そのため尊属血族は自分よりも前の世代、卑属血族は自分よりもあとの世代と考えると理解しやすいです。
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血族と勘違いしやすい種別

血族と意味やニュアンスが似た言葉に、「親族」や「姻族」、「血縁」という概念もあります。日常生活では混同されて使用されることも多い言葉ですが、本来はそれぞれ意味が異なります。
ここでは、「親族」「姻族」「血縁」の3つの概念を解説します。
親族
親族(しんせき)とは、親子や兄弟・姉妹、さらに配偶者を通じてつながりのある民法第725条で定められた法律上の関係性を指します。
第七百二十五条 次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
わかりやすく解説
民法で定義されている「親族」をまとめると、下記の通りになります。
<六親等内の血族>
| 一親等 | 子ども、父母 |
|---|---|
| 二親等 | 孫、祖父母、兄弟姉妹 |
| 三親等 | 曽孫(ひまご)、曾祖父母、叔父・叔母、甥・姪 |
| 四親等 | 玄孫(やしゃご)、高祖父母、いとこ(従兄弟姉妹)、兄弟姉妹の孫、祖父母の兄弟姉妹 |
| 五親等 | 玄孫の子ども、高祖父母の父母、いとこの子ども、甥・姪の孫など |
| 六親等 | 玄孫の孫、高祖父母の祖父母、はとこ(再従兄弟姉妹)、いとこの孫など |
<三親等内の姻族>
| 親等 | 本人の配偶者の血族 | 本人の血族が婚姻した相手 |
|---|---|---|
| 一親等 | 配偶者の子ども、配偶者の父母 | 子どもの配偶者 |
| 二親等 | 配偶者の孫、配偶者の祖父母 | 孫の配偶者、兄弟姉妹の配偶者 |
| 三親等 | 配偶者の曾孫、配偶者の曾祖父母 | 曾孫の配偶者、叔父・叔母の配偶者 |
これらのことからわかるように、親族は法律によって明確に定義されていて、ゆらぎを持たない概念になります。
姻族
姻族(いんぞく)とは婚姻によって新しくつながりが生じるようになった配偶者の家族のことを指します。
姻族と判断されるのは「本人の配偶者の血族」と「血族が婚姻した相手」であり、一定の範囲の姻族を「親族」として扱い、扶養義務などが発生します。
わかりやすく解説
姻族わかりやすく説明すると、夫婦の関係から見て、配偶者側の家族が姻族ということになります。つまり、いわゆる義理の叔父や叔母のような義理という形容詞が付く続柄も姻族となります。
血縁
血縁(けつえん)とは、一般的に生物学的な血のつながりを指します。
そして血縁は法律用語ではないため、範囲や定義については、地域性や事情によって多少のゆらぎを持ちます。
そのため、「血縁」という言葉は使われる場面や会話の文脈によって意味が異なることがあるので、注意が必要です。
血縁と意味や意義が混同されがちな言葉ですが、明確に違いがあります。それは、血族が法的な用語であるのに対し、血縁は法的な用語ではないことです。
さらには血族は明確な定義があるのに対して、血縁は定義は事情や状況によって多少のゆらぎがあるという、双方は似て非なる性質を持っています。
わかりやすく解説
先述の通り、血縁は事情や状況によって意味合いが多少異なることがあります。そのため、「血縁者」や「血縁関係者」、「血縁のある人」などの表現が使われた場合でも、基本的には「血がつながっている」という意味で理解しておけば、大きく間違えることはありません。
「血族」にははっきりとした定義がある
血族とは、血縁関係に基づく人々のつながりを指す法的な概念です。血族は主に、生物学的なつながりによる「自然血族」と、養子縁組により法律上認められる「法定血族」に分けられます。
また、血族は系統に基づいて、直系血族と傍系血族に区別されます。さらに世代の違いを示す場合には、尊属血族と卑属血族という大枠で捉えることもあります。
このように、血族という概念はやや複雑ですが、おおまかな内容を知っておくことで、親戚・親族関係を理解するうえで役に立ちます。
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