不整形地の相続で気を付けるべきポイントとは?メリット・デメリットや評価額の計算方法を解説

公開日:2025年4月30日

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古くからある土地は不整形地であることも多いので、相続財産に不整形地が含まれることはよくあるものです。不整形地は活用に制限がかかるというデメリットがある反面、相続税を抑えられるというメリットもあります。しかし、不整形地の評価方法は複雑になるので注意が必要です。この記事では、不整形地を相続するメリット・デメリットや評価額について解説します。

不整形地とは

土地は、その形状によって「整形地」と「不整形地」の2種類に分かれます。

整形地とは、正方形や長方形の整った形の土地です。新しく分譲地などで提供されている土地はおおむね整形地となり、家づくりや活用しやすい土地として人気があります。

一方、不整形地は整形地以外の土地です。昔からある土地なら不整形地であるケースが多いでしょう。不整形地には三角形やいびつな形などさまざまな形状があり、代表的な種類として以下が挙げられます。

  • 三角地
  • 角地(隅切り地)
  • 旗竿地(L字型の土地)
  • 台形・平行四辺形の土地
  • 境界がギザギザになっている土地
  • 傾斜地・がけ地・高低差のある土地

奇抜な形状の土地だけでなく、台形や平行四辺形といった四角形の土地も税金の評価額を算出するうえでは不整形地に該当します。形状にもよりますが、不整形地は一般的に利用しにくく評価額も低くなりがちです。

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不整形地を相続する上でのメリット・デメリット

不整形地は、その形状から活用に制限がかかるなどデメリットが生じやすい土地です。しかし、デメリットばかりでなく、評価額が低く維持費が安くなるといったメリットもあります。ここでは、不整形地を相続するうえでのメリット・デメリットを紹介します。

メリット

不整形地の大きなメリットが評価額の低さです。使い勝手が悪い土地で需要も低いことから、相続税評価額・固定資産税評価額が下がる傾向があります。

同じ面積の整形地を相続するケースに比べ、相続税申告時の評価額が下がる分、相続税の負担が軽減される可能性があります。相続後は毎年固定資産税が課税されますが、こちらも評価額が低いため税負担の軽減が見込めます。

デメリット

デメリットとしては、活用・売却のしにくさが挙げられます。不整形地の形状にもよりますが、三角地ではとがった部分に家を建てにくいなど、活用できる面積が同じ面積の整形地に比べ小さくなりがちです。

土地に高低差がある・敷地が狭く整形地にするために隣地を買い足す必要があるとなれば、活用時の初期費用が高額になる恐れもあるでしょう。

このような使い勝手の悪さは売却にも影響します。相続後に売却しようとしても売却が難航する場合もあり、活用方法が見つからず長期的に保有することになる可能性もあります。

不整形地の評価方法

不整形地は活用に制限がかかることを考慮し、整形地よりも評価額が低くなるように設定されています。ここでは、不整形地の評価方法について具体的に解説していきます。

不整形地評価の考え方

相続税・贈与税を計算する際、土地は「路線価方式」または「倍率方式」のいずれかで評価額を算出します。路線価とは、主要道路に接する土地1㎡あたりの価格です。一方、路線価の定められていない地域は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じる倍率方式で計算します。

路線価方式で計算する場合、基本的に一度整形地としての評価額を算出し不整形地補正率で減額補正するという流れのため、整形地よりも評価額が低くなるのです。

なお、倍率方式は、そもそもの固定資産税評価額が不整形地であることを考慮して低く設定されているので補正による調整はありません。

不整形地の評価額を計算する方法

路線価方式で不整形地の評価額を算出する方法は、以下のとおりです。

不整形地の相続税評価額:土地の評価額(路線価×地積)×不整形地補正率

不整形地の評価額を算出する基となる土地の評価額に不整形地補正率を乗じて計算します。土地の評価額の計算については、後ほど詳しく解説するので参考にしてください。

不整形地補正率は国税庁のサイトで調べられますが、調べる際には「地区区分」「地積区分」「かげ地割合」が必要になります。地区区分とは、宅地の利用状況に応じて地域ごとに分類された区分です。普通住宅地区や高度商業地区など7つの地区区分に分かれており、路線価図に記号で表記されています。

地積区分は、地区区分と地積を掛け合わせた分類で、国税庁の地積区分表をチェックして調べます。たとえば、普通住宅地区で土地の面積が300㎡なら地積区分はAです。

かげ地割合とは、不整形地を整形地で囲んだ想定整形地に占める、不整形地以外の土地の部分をさします。「(想定整形地地積-不整形地の地積)÷想定整形地の地積」で求められます。

不整形地補正率表で、地区区分・地積区分・かげ地割合が交わった部分が、自分の土地に適用する不整形地補正率です。

不整形地の4種類の評価方法

不整形地は土地により大きく形状が異なるため、4つの評価方法が認められています。

  • 整形地に区分して評価する方法
  • 計算上の奥行距離を使う方法
  • 近似整形地を使う方法
  • 差引計算により評価する方法

4つのうちいずれかで算出した評価額に不整形地補正率を乗じて不整形地としての評価額を算出することになります。評価方法によって評価額が異なるため、状況に応じて最も妥当かつ評価額が低くなると認められる方法を選択することが望ましいでしょう。

整形地に区分して評価する方法

不整形地をいくつかの整形地に分割して計算する方法です。分割した整形地ごとに評価額を算出し、それぞれ評価額を合計してから不整形地補正率を乗じます。不整形地が正方形や長方形にきれいに分割できる形状が比較的単純で、分割が容易な不整形地に適した方法です。

詳しい計算方法は、「国税庁のサイト」を参考にしてください。

参照:不整形地の評価――区分した整形地を基として評価する場合|国税庁

計算上の奥行距離を使う方法

奥行距離が一定にならない不整形地では、計算上の奥行距離を用いる方法があります。計算上の奥行距離とは、不整形地の地積を間口距離で割って算出した距離です。

実際の間口から一番遠い奥行距離ではない点に注意しましょう。また、計算上の奥行距離は推定整形地の奥行距離を超えて設定することはできません。

計算上の奥行距離で奥行価格補正率を調べ、不整形地の評価額を以下の方法で算出します。

    不整形地の評価額:路線価×奥行価格補正率×地積

上記で算出した評価額に不整形地補正率を乗じて評価額が算出できます。

計算上の奥行距離を用いた方法は、間口距離と地積がわかれば利用できるので汎用性の高い評価方法と言えます。

参照:不整形地の評価――計算上の奥行距離を基として評価する場合|国税庁

近似整形地を使う方法

近似整形地とは、不整形地に類似する整形地です。想定整形地は不整形地を囲む整形地であるのに対し、近似整形地は不整形地の凸凹を考慮して類似整形地からはみ出す部分・不整形地が類似整形地に含まれない部分が等しくなるような整形地となります。そのため、想定整形地よりも近似整形地の方が面積は小さくなります。

奥行価格補正後の近似整形地1㎡あたりの価額に不整形地の地積・不整形地補正率を乗じて評価額を算出します。

参照:不整形地の評価――近似整形地を基として評価する場合|国税庁

差引計算により評価する方法

不整形地の類似整形地と隣接する整形地を合わせた整形地の評価額から、隣接する整形地の評価額を差し引く方法です。

土地がL字型で境界線がギザギザといったケースで用いられます。

参照:不整形地の評価――差引き計算により評価する場合|国税庁

不整形地の相続・相続税に関する注意点

不整形地の相続・相続税に関する注意点のイメージ

不整形地は相続税を抑えられるというメリットはありますが、相続時の税負担だけで判断すると、結果として活用しづらさや維持費の負担などに悩むケースもあるため注意が必要です。ここでは、不整形地の相続・相続税に関する注意点として以下の3つを解説します。

  • 具体的に利用イメージや初期費用について意識する
  • 相続税申告書に評価明細書を添付して申告する
  • 同じ土地でも計算方法によって税負担が異なる

具体的に利用イメージや初期費用について意識する

不整形地は特殊な形状により、建物を建てて活用するのが難しいケースが珍しくありません。

仮に建築ができても、活用できないスペースができてしまう・特殊な技術が必要で建築費が高くなるといった可能性もあるでしょう。活用しにくいから売ろうとなっても、活用に制限のかかる土地はなかなか買い手もつかないものです。

相続税や固定資産税が安くなるという理由だけで相続を決めてしまうと、相続後に活用の難しさや思わぬ費用が発生し、対応に苦慮する可能性もあるため注意が必要です。具体的な利用イメージや初期費用まで考慮しておくことが重要です。

相続税申告書に評価明細書を添付して申告する

相続財産に土地が含まれる場合、相続税申告の際には「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」の添付が必要です。また、評価明細書には土地の評価額の計算方法を詳細に記載しなければなりません。整形地であれば比較的簡単に計算過程を記入できますが、不整形地は計算が複雑になるので記入の難易度が高くなります。

記入を間違い過少申告すると追徴課税の対象となり、反対に多く申告して本来の税額より多く納めても自分で修正しない限り税務署は払い戻ししてくれません。評価明細書の記入に不安がある場合は、計算方法を含めて税理士への相談を検討するとよいでしょう。

同じ土地でも計算方法によって税負担が異なる

前述のとおり、不整形地の評価方法には4種類あり、どの方法を用いるかで評価額は変わってきます。評価額が変わると生じる税額も違ってくるため、評価額がもっとも小さくなる方法を選ぶことが重要です。

とはいえ、不整形地の評価の仕方は複雑で、4パターンすべて自分で計算してみて決めるというのは容易ではありません。土地の形状に合わせた適切な計算方法の選択や実際の計算は、税理士に相談したうえで行うことをおすすめします。

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不整形地の評価は税理士に相談しよう

不整形地は整形地に比べ評価額が低くなるので、相続税が軽減できるというメリットがあります。しかし、どれくらい軽減できるかは評価額の計算方法によって変わってきます。

不整形地の評価方法には4種類あり、いずれにせよ複雑で自分だけで評価するのは容易ではありません。評価方法の選択や計算・申告書作成を間違えると、余計に相続税を支払うことになったり追徴課税を受けたりする恐れもあります。

相続財産に不整形地が含まれる場合は、税理士に相談して適切な評価方法のアドバイスから申告までサポートしてもらうとよいでしょう。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て平成30年よりライターとして独立。令和2年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識などわかりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年4月30日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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