再建築不可物件を相続する際の注意点とは?生前に検討すべき事項と相続後にできる対処法

公開日:2025年3月31日

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再建築不可物件を所有してしまうと、活用も売却もしにくいなどデメリットが生じます。再建築不可物件を相続する予定なら、生前から相続するべきかどうかよく検討しておくことが大切です。相続した後なら、活用や売却などの対処法も考慮すべきでしょう。この記事では、再建築不可物件のデメリットや相続しない方法・相続後に取れる対処法について詳しく解説します。

再建築不可物件とは

再建築不可物件とは、現在建っている建物を解体すると再建築できない土地です。再建築不可物件になる理由はいくつかありますが、主な理由が接道義務を満たせないことにあります。

現行の建築基準法では、建物を建設するには「建築基準法上の道路(一般的には幅員4m以上の道路)に土地が2m以上接する」という接道義務を満たさなければなりません。しかし、建築基準法が制定される以前の建物の中には、接道義務を満たしていないケースが多数存在するのです。

建築基準法以前の建物であれば、現行の接道義務を満たさないからといって法律違反になるわけではないため、問題なく住むことができます。ただし、その建物を解体してしまうと建築基準法を満たせないため、新しい建物を建築できないのです。

所有する土地が再建築不可物件かが一目で判断できない場合も多くあります。接道義務は建築基準法上の道路に接することが必要になるため、道路と2m以上接していても道路が私道で実は接道義務を満たしていないというケースは珍しくありません。

所有する土地が再建築不可かどうか分からない場合は、役所の建築関係窓口で調べてもらえます。確認する際には登記事項証明書や公図・図面などを持参するとスムーズに確認できるでしょう。また、不動産会社に相談して調べてもらうことも可能です。

なお、再建築不可物件は都市計画法上の都市計画区域・準都市計画区域にのみ存在します。該当する土地を相続する予定の場合は、事前に調べてみるようにしましょう。

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再建築不可物件のデメリット

再建築不可物件は新築・建て替えができないことでデメリットが生じます。相続する予定の土地が再建築不可物件という場合は、デメリットについて理解しておくことが大切です。

以下では、再建築不可物件のデメリットについて解説します。

建物を壊すと二度と建て替えできない

再建築不可物件は建築基準法を満たせないため、建築申請の必要な新築や増築・建て替えはできません。今ある建物を解体すると活用が難しくなる点に注意が必要です。

なお、再建築不可物件であっても建築申請の不要なリフォームはできます。築年数が古い建物でもリフォームして問題なく活用できる可能性はあるでしょう。

ただし、再建築不可物件は基本的に築年数が古いため、倒壊リスクが高い点にも注意が必要です。リフォームして活用するにしても築年数がすでに経過しているとそれほど長く活用できない恐れがあります。また、火事や地震で万が一倒壊してしまうと建て直しできないため、以降の活用ができなくなってしまうのです。

更地になると固定資産税が最大6倍になる

建物が倒壊すると新築できないため、更地になります。更地として駐車場や畑などで活用する選択肢もありますが、更地は固定資産税の軽減が適用できない点に注意が必要です。

土地の固定資産税は、居住用の建物があると最大6分の1に軽減される特例が適用されます。しかし、居住用の建物がなくなるとこの特例は適用されません。本来の税額に戻るとはいえ、それまでの税額の最大6倍に跳ね上がる恐れがあります。解体後、居住用の建物は建てられないため、所有し続ける限り高い税負担が続く点にも注意しましょう。

維持管理の費用が高額になる

リフォームして活用する場合でも、すでに築年数が経過していることから老朽化が進んでいることが予測されます。活用できる状態まで修繕するとなると、大規模な修繕が必要となり初期段階でのリフォーム費用が高額になる可能性があるでしょう。

また、リフォーム後も適切なメンテナンスが欠かせないためランニングコストがかかります。相続後に活用を検討する場合は、初期費用とランニングコストに関してしっかりシミュレーションしましょう。

事故により損害賠償を請求されるリスクがある

再建築不可物件は老朽化が進み倒壊リスクが高いケースが珍しくありません。倒壊の影響は、建物が建てられないだけでなく損害賠償請求につながる点にも気を付けなければなりません。

たとえば、倒壊して近隣や通行人に被害が出た場合を考えてみましょう。この場合、所有者が老朽化を知りながら適切な管理を怠っていたとして、所有者としての責任が問われ被害者から損害賠償請求される恐れがあるのです。倒壊でなくても、台風で瓦が飛んだなどが理由となる場合もあります。

老朽化した建物を所有する場合、活用しなくても適切な管理が欠かせません。遠方の実家だからといって空き家のままで放置できない点には注意しましょう。

処分するのが難しい

再建築不可物件は所有にもリスクがあるため、売却して処分を検討することも大切です。しかし、再建築不可物件は使い勝手の悪い物件であることから、買い手がつきにくくなります。

また、そもそも不動産会社が再建築不可物件を取り扱ってくれないケースも珍しくありません。処分したくても処分できない可能性がある点は覚えておきましょう。

再建築不可物件を相続しないという対処法

再建築不可物件を一度相続してしまうと、簡単に処分はできません。しかし、相続する前であれば相続しないという選択が可能です。相続しない方法としては、譲る・相続放棄・換価分割の3つが検討できます。

以下で、詳しくみていきましょう。

他の相続人が所有を希望する場合は譲る

遺言書のない相続では、相続の仕方は遺産分割協議で話し合い相続人全員の合意によって決まります。遺産分割協議で他の相続人が再建築不可物件の相続を希望する場合は、譲ってしまうのが1つの方法です。

また、代償分割で分配することも検討できます。代償分割とは、特定の相続人が現物を相続する代わりに、他の相続人に代償金を支払う方法です。

たとえば、相続する不動産の価値が1000万円で相続人が兄弟の2人なら、本来は500万円ずつを相続します。この際、兄弟のどちらかが不動産を丸ごと相続し、残りの相続人に対して500万円を支払う方法が代償分割です。

不動産は現金のようにきっちり分けられない財産のため、代償分割を活用することでスムーズに相続できます。ただし、代償分割は支払う側に資金力が必要となり、また代償金の額を巡ってトラブルになりやすい点には注意しましょう。代償分割は評価額で意見が分かれやすいので、希望する場合は専門家への相談をおすすめします。

相続放棄をする

相続放棄することで再建築不可物件を相続せずにすみます。ただし、相続放棄する場合は以下の点に注意が必要です。

  • 相続放棄には期限がある
  • 他の相続財産が相続できない
  • 相続放棄しても管理責任が残る場合がある

相続放棄は相続開始があったことを知った日から3か月という熟慮期間内に手続きが必要です。この期間を超えてしまうと相続放棄が難しくなるため、早めの手続きが必要です。

また、相続放棄は再建築不可物件だけでなくすべての財産を放棄しなければなりません。現預金は相続したい、他に相続したい財産があるといった場合でも、相続できなくなるので財産をすべて明確にしたうえで慎重に判断することが大切です。

相続放棄した場合でも、次の相続人もしくは相続財産清算人によって財産の管理を始めるまでは、管理義務があります。ただし、相続開始時にその財産を占有していない場合は相続放棄後に管理義務はありません。

たとえば、実家の場合、相続開始時にすでに実家には住んでいないケースでは管理義務がないとされています。しかし、占有の判断基準は明確でないため、相続放棄を検討する場合は手続きを含めて専門家への相談をおすすめします。

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換価分割をする

換価分割とは、財産を売却し売却代金を相続人で分割する方法です。相続人全員が相続したくない不動産であれば換価分割が適しているでしょう。

ただし、再建築不可物件は売却自体が難しい不動産です。とくに売却金で相続税の支払いを検討している場合、相続税は「相続を知った日の翌日から10か月以内」に納税しなければなりません。不動産仲介業者に依頼して売却するのでは間に合わない恐れもあるため、後述する専門の買取業者への売却を視野に入れた方が現実的でしょう。

再建築不可物件を相続した後にできる対処法

再建築不可物件を相続した後にできる対処法のイメージ

再建築不可物件を相続してしまうと、相続前に比べると手放すのが難しくなります。かといって、活用せずに放置するのもリスクがあり適切とはいえません。再建築不可物件を相続した場合、活用か売却を検討するとよいでしょう。

以下では、再建築不可物件相続後にできる対処法を解説します。

そのまま住み続ける

再建築不可物件はそのまま住み続けることに問題はありません。また、リフォームも可能なのでリフォームして住むという選択肢もあります。ただし、接道義務を満たしていないことでリフォームの手間がかかり費用が高額になりがちな点には注意が必要です。

間口や前面道路幅が狭いとリフォーム時に足場の設置やトラックの搬入が困難になり、手作業が増えることで費用が上乗せされる恐れがあります。事前にリフォーム費用の見積もりをしたうえで検討するとよいでしょう。

再建築不可物件ではなくなる手続きをする

再建築不可物件となっている要因を解消すれば、再建築が可能です。接道義務を満たしていない場合、間口が足りないなら不足分の間口を隣地から購入する・道路幅が足りない場合はセットバックするなどが検討できます。

隣地所有者であれば、再建築不可物件の購入にも敷地拡大というメリットがあるので売却を打診するのも1つの方法です。しかし、隣地の買い取りや売却は隣地所有者との関係性にも大きく左右される点に注意しましょう。

空き家バンクに登録する

空き家バンクとは、自治体が運営する空き家を買いたい人と売りたい人をマッチングするサイトです。空き家バンクは不動産会社が取り扱わないような市場価値の低い物件や再建築不可物件でも登録できるので、買い手が見つかる可能性があります。

とはいえ、再建築不可物件は買い手に制限が付きやすく、空き家バンクでも買い手が見つかりにくい恐れもある点は覚えておきましょう。また、空き家バンクは自治体が不動産会社のように交渉や契約をサポートしてくれるわけではありません。契約までは買主と売主で進める必要があるため、トラブルになりやすい点にも気を付けましょう。

自治体に寄付する

相続で空き家になる物件を自治体が寄付として引き取ってくれる場合もあります。寄付なので売却金は手に入りませんが、お金をいらないから手放したいという場合に有効です。

しかし、寄付を受け付けている自治体は多くはありません。受け付けている場合でも、活用の余地がある物件が対象となり再建築不可物件は対象外となりがちです。気になる場合は、自治体の窓口などで確認するとよいでしょう。

専門の不動産買い取り業者に売却する

再建築不可物件など訳ありの不動産を専門的に買い取ってくれる業者に売却する方法です。買取であれば、仲介のように買主を探す必要がなく業者との話し合いで売却できるので、短期間での売却が期待できます。

買取は仲介よりも売却額が下がるというデメリットはありますが、仲介手数料や修繕費が不要なためそれほど価格が変わらないケースもあるでしょう。とくに、訳あり不動産専門の業者であれば再建築不可物件の取り扱いノウハウがあるため、通常の買取よりも高値での買取を期待できます。

活用しない再建築不可物件を所有し続けると、コストや手間がかかるうえ、倒壊などのリスクも発生します。とはいえ、仲介での売却も難しいため、買取が再建築不可物件を手放す方法としては現実的といえるでしょう。

再建築不可物件を相続する場合は、リスクを理解し早めの対策が重要

今ある建物を解体すると再建築できない「再建築不可物件」は、相続後の活用が制限される場合があります。しかし、相続後に放置すると倒壊などのリスクが生じるため、適切な管理が必要になり、手間やコストがかかる点には注意が必要です。

再建築不可物件を相続する可能性がある方は、一度相続すると手放すのが難しくなるケースもあるため、生前のうちにどのように扱うかを考えておくことが大切です。

ただし、再建築不可物件であっても、活用の選択肢が全くないわけではありません。自分で住むことはもちろん、接道義務を満たす方法を検討したり、買取業者に売却したりすることも可能です。

「再建築不可物件を相続すべきか迷っている」「すでに相続したものの活用方法がわからず困っている」といった方は、本記事の内容を参考にしてください。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て平成30年よりライターとして独立。令和2年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識などわかりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年3月31日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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