田舎の土地は相続すべき?相続したときの注意点や処分方法をわかりやすく解説

公開日:2022年6月29日|更新日:2023年1月4日

田舎にある実家の土地を相続したけどどうすればいいのだろうか…代々受け継いでいる土地を守りたい気持ちもあるでしょうが、土地は持っているだけでもお金がかかるものです。とはいえ、処分の仕方もよく分からないという方も多いでしょう。この記事では、相続した田舎の土地を処分する方法について分かりやすく解説していきます。

田舎の土地を相続したが不要な場合の処分について

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田舎の土地を相続してしまい、どうすればいいのか分からないという方もいるでしょう。自分が住むのであれば問題ありませんが、遠方の土地を相続し住む予定もないというケースも多いものです。

土地は所有しているだけでも、固定資産税や管理費が掛かかります。上手に活用できない土地は、お金ばかりかかるマイナスの資産ともなりかねないのです。

とはいえ、一度相続した土地は所有権を放棄できません。相続した土地が不要な場合、次のような処分方法が検討できます。

  • 売却
  • 寄付や譲渡

売却

土地を手放す方法として「売却」するという方法があります。とはいえ、田舎の土地の場合、需要が見込めずなかなか買い手が付かない可能性が高い点には注意が必要です。

田舎の土地を売却する方法としては、次のような方法が検討できます。

  • 不動産会社の仲介
  • 不動産会社の買取
  • 空き家バンクへの登録

不動産会社の仲介

不動産会社に仲介を依頼して売却するのが、一般的な売却方法と言えます。仲介であれば、少しでも高値での売却も期待できるでしょう。ただし、必ず買い手が見つかるわけではなく、見つかるのにも時間が掛かってしまう可能性が高い点には注意が必要です。

特に田舎の土地は買い手が見つけにくい傾向があります。田舎の土地を売却する場合は、田舎の土地に詳しい不動産会社を検討することをおすすめします。

不動産会社の買取

買取とは、不動産会社に土地を直接買い取ってもらう方法です。この方法であれば、買い手を見つける必要がないため、不動産会社との交渉が決まればすぐに売却できます。買取の場合は、仲介よりも売却価格が低くなるのが一般的です。

また、不動産会社は買取後の土地や建物を再販することが目的でもあるため、需要の見込めないような土地ではそもそも買取に応じてくれない可能性もあります。

空き家バンクへの登録

土地だけではなく空き家も一緒に手放す場合、空き家バンクを利用することも可能です。空き家バンクとは自治体などが運営する空き家の登録サービスのことを言います。空き家バンクを利用することで、空き家を購入したい人の目に留まりやすくなるでしょう。

無料で利用でき、不動産会社への仲介手数料も発生しないというメリットもあります。ただし、価格交渉や契約手続きは自分でしなければならない点には注意が必要です。

契約手続きは不動産会社や司法書士に依頼することも可能なので、検討するとよいでしょう。

寄付や譲渡

田舎の土地の場合、買い手がなかなかつかない可能性があります。

そのような場合には、無償での寄付や譲渡という方法を検討するのも一つの手段といえるでしょう。寄付する場合、次のような寄付先・譲渡先があります。

  • 個人
  • 法人
  • 自治体

個人

個人へ土地を寄付する方法があります。特に、隣地の所有者であれば受け入れてくれる可能性があるでしょう。

隣地の所有者であれば、「駐車場や家の増改築」「土地の合筆」「建ぺい率などが改善される」などの寄付を受けるメリットもあります。また、隣地の所有者は顔なじみなケースも多く、交渉もしやすいものです。

ただし、相手が受け入れてくれた場合であっても、受け入れた後にトラブルになるケースもあるので注意が必要です。受け入れた後で要らないと返却されたり、境界を巡ってトラブルになる可能性があります。寄付の場合にも、口約束ではなく贈与契約書を作成しておくようにしましょう。

また、無償で相手に譲り渡すことで、受け入れた相手に「贈与税」が発生する点にも注意が必要です。寄付や譲渡の場合、譲り渡す土地と家の評価額に対して、贈与税が課せられます。

贈与税は110万円までの基礎控除が適用できるので、評価額が110万円以下であれば発生しません。しかし、110万円を超える場合、評価額に応じた税率で贈与税が発生するので、その旨も事前に相手に伝えておく必要があります。

法人

法人への寄付も検討できます。法人の場合、事業目的だけでなく保養地なども目的もあるため、特に田舎の広い土地でも受け入れてくれる可能性があるでしょう。法人では、一般企業のような「営利法人」と社団法人などの「公益法人」がありますが、公益法人のほうが寄付を受け入れてくれる可能性が高いものです。

ただし、法人への寄付の場合、「みなし譲渡所得税」が発生する場合があるので注意しましょう。

無償での寄付であっても、相手が法人であれば一度売却してその現金を寄付したとみなされ、譲渡所得税が課せられます。法人への贈与を検討している場合、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

自治体

市区町村と言った自治体では、寄付を受け入れてくれる場合があります。自治体のホームページや窓口で確認するとよいでしょう。

しかし、自治体の場合は寄付を受け入れている可能性は低いと言えます。土地の所有に課せられる固定資産税は、自治体の大事な財源なので、土地の寄付を受け入れてしまうとその分自治体の税収が減少します。そのうえ、土地の管理費などが発生するため、公共性の高い活用方法が見込めない土地では自治体にとって寄付を受け入れるメリットは少ないものです。

自治体が寄付に応じてくれるケースはほとんどない点は注意しましょう。

田舎の土地を相続放棄するかどうかの判断基準

住む予定もない土地の場合、相続放棄するという方法もあります。相続後の土地の場合、所有権を放棄できませんが、相続の際に相続放棄することで所有権を放棄することが可能です。

相続放棄することで、他の資産も相続できませんが土地も相続することがなく、固定資産税や管理費などを支払う必要がありません。とはいえ、相続すべきか放棄すべきかを迷ってしまう方もいるでしょう。

相続放棄するかどうかの判断基準としては、次のようなことがポイントとなります。

  • 他の相続財産とのバランス
  • 土地の需要見込み

他の相続財産とのバランス

土地以外にも相続する財産がある場合、それらの財産と土地を所有するコストのバランスが判断基準となるでしょう。相続財産が金融資産として500万円以下であれば、相続放棄を検討することをおすすめします。

500万円以下の場合、固定遺産税や管理コストとして数年で資産がなくなってしまう可能性があり、その後は自己資金での対応となります。特に、相続財産が不動産で多くを占めている場合は、管理のための費用を相続した預貯金だけでは賄えない可能性が高くなるので注意しましょう。

土地の需要見込み

相続後に売却や寄付・活用ができるのかを検討しておくことが重要です。土地の立地や状況によっては、活用して収入を得ることもできるでしょう。また、そのような需要の見込める土地であれば、売却や寄付という選択も取りやすくなります

反対に、売却も寄付も難しいような土地の場合、相続後にいつまでも所有し続けなければならない可能性があります。そのような土地の場合は、相続放棄しておく方がよいでしょう。

売却・寄付・活用が可能かどうかも事前に確認しておくことをおすすめします。

相続放棄の注意点

相続放棄する場合、以下のような点には注意が必要です。

  • 相続放棄はすべての財産を放棄することになる
  • 相続開始3ヵ月以内に選択する必要がある
  • 別の相続人に相続が発生する可能性がある
  • 相続財産管理人の選任が必要な場合がある

相続放棄はすべての財産を放棄することになる

相続放棄は、特定の財産のみの放棄ができず、プラスの資産もマイナスの資産もすべて放棄しなければなりません。土地は放棄したいけど、預貯金は相続したいということはできないので、注意が必要です。

反対に、被相続人(亡くなった方)の財産が借金などのマイナスの場合、借金を相続放棄することで土地の所有権も手放さなければなりません。

相続放棄する場合は、すべての財産を調べたうえで、放棄すべきかを検討することが大切です。

相続開始3ヵ月以内に選択する必要がある

相続放棄は、相続が発生したことを知った日から3ヵ月以内に相続放棄手続きする必要があります。基本的には、被相続人が亡くなってから3ヵ月以内となるでしょう。この期間内に、家庭裁判所に申込むことで相続放棄が可能です。

ただし、相続放棄前に相続財産を処分してしまうと、相続したとみなされ相続放棄できなくなる可能性があるので、注意しましょう。

別の相続人に相続が発生する可能性がある

相続放棄した場合、そもそも相続人ではなかったという扱いになります。そのため、相続放棄することで別の人の相続分が増える場合や、新しく別の人に相続権が発生する可能性があるのです。自分が土地を相続しない代わりに、他の人が土地を相続しなければならなくなるため、トラブルに発展するケースもあります。

相続放棄する場合、相続人全員や相続人になる可能性がある人に了承を得ておくとよいでしょう。

相続財産管理人の選任が必要な場合がある

相続放棄した場合でも、新しい相続人が土地の管理を始めるまでは、土地を管理する責任が残ります。しかし、相続人全員が相続放棄した場合、管理する人がいなくなってしまうものです。そのような場合に、必要になるのが「相続財産管理人」の選任手続きです。

相続財産管理人とは、遺産の整理や債権者への支払いなど相続財産を清算する人のことをいいます。この相続財産管理人を選任することで、土地を管理する責任を免れることが可能です。相続財産管理人の選任は、相続人全員で家庭裁判所への選任手続きが必要になります。

相続放棄した場合でも、新しい相続人が土地の管理を始めるまでは、土地を管理する責任が残ります。
しかし、相続人全員が相続放棄した場合、管理する人がいなくなってしまうものです。そのような場合に、必要になるのが「相続財産管理人」の選任手続きです。

相続財産管理人とは、遺産の整理や債権者への支払いなど相続財産を清算する人のことをいいます。この相続財産管理人を選任することで、土地を管理する責任を免れることが可能です。
相続財産管理人の選任は、相続人全員で家庭裁判所への選任手続きが必要になります。

土地を放置するリスクは高い

ここでは、田舎の土地を相続した後に放置するリスクについて見ていきましょう。放置するリスクとしては、次のようなことが挙げられます。

  • 固定資産税が課せられ続ける
  • 管理費が掛かる
  • 近隣住民へ被害が出る可能性がある

固定資産税が課せられ続ける

固定資産税は、おおよそすべての不動産の所有者に課せられる税金です。その年の1月1日時点の所有者が納税義務を負います。利用する見込みにない土地であっても、土地の所有者となった以上相続税が所有している間毎年課税されます。

固定資産税は以下の計算で求められます。

  • 固定資産税=固定資産税評価額×1.4%

毎年納付される固定遺産税納付書などで確認できるので、金額を把握するようにしましょう。また、固定資産税は土地に居住用の建物が建っている場合、減額される優遇措置があります。

空き家も相続する場合、空き家を解体して更地にしてしまうと、減額措置が受けられなくなるので注意が必要です。

管理費が掛かる

相続した土地や家は、適切に管理することが重要です。そのための管理費用が発生する点には注意しましょう。遠方の場合、土地を訪れるための移動費も高額になる可能性があります

自分で土地の草刈りや建物の手入れをすれば管理費を抑えることも可能ですが、大きな負担となります。定期的に訪れられない場合や管理作業が負担の場合管理会社などに委託することも可能ですが、委託料が掛かってくるものです。

土地や建物は、何もしなくても所有するだけで管理・維持の費用や時間が掛かることには、気を付けておきましょう。

近隣住民へ被害が出る可能性がある

管理が適切にできていない土地

や建物は近隣住民へ迷惑を掛けてしまう可能性があります。

  • 建物が倒壊して被害が出る
  • 庭木などが隣の敷地にまで伸びてしまう
  • 敷地内に不法投棄されてしまい悪臭などの原因になる
  • 放火されてしまうなど犯罪の温床になる可能性がある

空き家の場合、台風などで瓦が飛んで隣の人や通行人にけがをさせてしまう可能性もあるでしょう。このような状態を放置していると、近隣の住民からクレームが入るだけでなく、状況によっては損害賠償されてしまうケースもあるのです。

また、空き家の管理が適切にできていない場合、自治体によって「特定空家」に指定されてしまう可能性があります。特定空家に指定されると、改善命令に従わない場合罰則を科せられる可能性や固定資産税の軽減措置を適用できないなどがあるため注意が必要です。

土地をうまく活用する方法も視野に入れる

需要が見込める土地の場合、活用して収益を得ることも可能です。土地を活用する方法は、大きく「建物を建てて活用する」「土地として活用する」という選択肢があります

建物を建てて活用する場合、アパートやマンション・戸建て賃貸などの賃貸物件を建設する活用方法が一般的です。また、コンビニや高齢者向け施設などの建設と言う方法もあります。

建物を建てる場合、需要が見込めれば高い収益を得られるメリットがあります。ただし、建築費などの初期費用が高額になり、需要とマッチしていなければ大きな損失になる可能性もあるものです。建設する場合は、立地など需要の調査を徹底的にしたうえで検討する必要があります。

土地として活用する方法には、次のような方法があります。

  • 駐車場
  • 資材置き場やトランクルーム
  • 太陽光発電施設
  • 土地として貸し出す

土地として活用する場合は、建物を建設するよりも比較的初期費用を大きく抑えられます。収益性は低い傾向がありますが、固定資産税分位を賄えればと言う目的であれば、十分検討の余地はあるでしょう。

ただし、こちらも立地などの調査を十分にしたうえで活用方法を検討することが重要です。

法規制には注意

田舎の土地の場合、活用を検討する前に法規制が掛かっていないかを調べることが重要です。市街化調整区域の土地のように、建物の建設や増改築が難しい土地に該当しているケースも珍しくありません。また、農地などで転用するには複雑な手続きが必要という場合もあるでしょう。

田舎の土地の場合、法規制で活用が難しい可能性がある点には注意が必要です。

まとめ

田舎の土地を相続した場合の処分方法についてお伝えしました。住む予定のない土地を相続した場合、そのまま所有していても税金や管理費用がかかるだけです。

売却や寄付・土地活用などの処分方法を検討できますが、田舎の場合は需要が少なくどれも難しいケースもあるので注意しましょう。住む見込みのない土地であれば、相続の際に相続放棄することで処分の手間を防ぐことも可能です。

この記事を参考に、田舎の土地の相続後の対応について理解し、適切な方法を選べるようにしましょう。

記事の著者紹介

相続プラス編集部

【プロフィール】

相続に関するあらゆる情報をわかりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月29日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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