実家を相続したものの住む予定がないなどの理由で、実家の解体を検討している方もいらっしゃるでしょう。
相続した実家の解体を考える際に、費用や解体の流れが気になるのではないでしょうか。また、解体では費用や税金の負担が大きくなる場合もあるので、注意が必要です。
この記事では、解体の流れや相場・注意点について分かりやすく解説します。
【実家】解体の流れ
ここでは、相続した実家の解体の流れを見ていきましょう。
相続に伴う解体の場合、相続人の誰かが勝手に解体を進めてしまうとトラブルの元となります。
解体するかどうかは、土地をどうするのかまで含めて相続人間で相談して判断することが大切です。
相続した実家を解体するときの大まかな流れは、以下のようになります。
- 解体見積もり
- 遺産分割協議
- 解体
- 建物滅失登記
- 空き地の相続登記申請
解体見積もり
まずは解体費用がいくらになるかを確認する必要があります。解体工事業者に見積もりを依頼して費用を把握しましょう。解体費用は業者によって異なるものです。できるだけ複数の解体業者に見積もりを取って比較検討する必要があります。
見積もりを取ったうえで、解体するか・誰が費用を負担するのかなどを判断していきます。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、だれが・どの遺産を・どれくらい相続するのかを相続人間で話し合い決める協議です。実家の解体の費用負担や解体後の活用法などの実家の取り扱いについて、遺産分割協議で話し合い結論を出します。遺産分割協議で相続人全員の合意を得られたら、遺産分割協議書と言う書類を作成しておくことで、後々の相続トラブルを防げるでしょう。
解体
相続人間で実家の解体の合意がなされ、解体業者の選定も済ませたら、実家の解体工事となります。業者や実家の構造などによっても異なりますが、見積もりから解体工事の完了まで1~2か月ほどみておくとよいでしょう。
建物滅失登記
建物滅失登記とは、登記された建物が無くなったことを登記簿に記載する登記のことを言います。建物を解体した場合、解体後1ヶ月以内に建物滅失登記をしなければなりません。この登記をしないと、ペナルティが課せられる可能性や解体しても登記上建物が存在しているとされ固定遺産税も課税されてしまうので注意しましょう。
更地の相続登記申請
更地にした後は、土地の相続登記(名義変更)をしましょう。
相続登記は令和6年4月に義務化されました。仮に相続登記がされていないと、土地を売却しようにも名義人が異なると売却できないなどの不都合が出てきてしまうものです。長期間名義変更しないでおくと、次の相続の際に手続きが複雑になるなどの問題もあります。
不動産を相続をしたら早めに登記も済ませておくようにしましょう。
実家の解体費用の一般的な相場
解体費用は、業者やエリア・家の構造や広さ条件によって異なります。一般的には、建物の構造ごとの解体費用目安は次の通りです。
- 木造:3~5万円/坪
- 鉄骨造:4~6万円/坪
- 鉄筋鉄骨コンクリート造:6~8万円/坪
仮に、一般的な木造2階建て40坪の場合は、120〜200万円ほどの解体費用がかかるでしょう。
解体費用は解体のしやすさによって費用が左右され、解体しやすい木造は他の構造に比べ解体費用が低くなります。また、都市部よりも地方の方が解体費用は抑えられる傾向があるのです。
ただし、同じ条件の建物は存在しないことから、解体費用もその家ごとで大きく異なります。解体を検討している場合は、必ず見積もりを取ったうえで判断することが大切です。
解体費用は相続人負担
相続に伴い実家を解体する場合、解体費用は相続人が負担するものです。相続人が一人の場合は、その人が負担するだけなので大きなトラブルはないでしょう。しかし、相続人が複数いる場合などでは誰が負担するのかでトラブルになるケースは珍しくありません。
相続人が複数いる場合の解体費用の負担については、次のような方法があります。
- 家と土地を相続する人で負担する
- 相続人全員で負担して土地売却後に売却金を分割する
- 相続人の誰かが解体費用を立て替え、土地売却後に立て替え分を回収してから残りを分割する
解体費用は、高額になることもあり相続人間でも費用負担を決めるのは難しくなります。あいまいなまま進めてしまうとトラブルの元なので、相続人間でしっかりと方針を決めたうえで解体を進めるようにしましょう。
実家の解体費用に含まれる項目は?
実家の解体の場合、基本的な解体費用には次のような項目が含まれます。
- 仮設工事費用
- 解体工事費用
- 廃棄物処理費用
- 諸経費
解体工事費の見積書の書き方は業者によって異なります。
内訳を細かく記載してくれる業者もいれば、「一式」として記載している業者もいるのです。一式と言うように一括で表示された見積もりの時には、何にどれくらいの費用がかかっているのかを確認するとよいでしょう。
仮設工事費用
足場や防塵・防音のための養生ネット・仮設トイレなどの設置費用が仮設工事費です。
仮設工事費の内訳で最も大きいのが足場や養生ネットになります。
解体工事費
解体工事としては家の解体・重機の手配などが含まれます。解体費用は家の取り壊しやすさによって左右されるものです。取り壊しにくい構造では解体費は異なり、さらに立地などの条件によっても左右されます。
ただし、解体費用には「外構解体」は含まれないのが一般的です。車庫や門扉・植木などの外構の解体は付帯工事として別途請求されるケースがほとんどなので、見積もり時には確認するようにしましょう。
廃棄物処理費用
木くずやコンクリートがら・廃プラスチックなどの廃棄物は、建築リサイクル法によって分別・処理が定められています。廃材の種類によっても処理費用が大きく異なるので注意しましょう。
現在の解体工事は、廃棄物を適切に処理するためいきなり重機で取り壊すようなことはしません。手作業で廃棄物を分別しながら解体していき、そのあと重機で取り壊すのが一般的です。
反対に、分別もせずにいきなり重機で解体するような業者は、廃棄物の違法処理をしている可能性があるので注意が必要です。
また、廃棄物処理はある程度の費用がかかるのが基本です。見積もり時に極端に相場より安い業者も、廃棄物の違法処理などで費用を抑えている可能性があるので注意しましょう。
諸経費
解体に伴う手続きや車両費などが諸経費として発生します。
諸経費の内訳は解体業者によって異なるので、気になる場合は確認するようにしましょう。
付帯工事費は別途請求される
上記の解体工事の費用はあくまで本体の解体工事のための費用です。
門扉や車庫・庭木などといった外構工事や離れの小屋といった別に解体してもらいたいものがある場合は、付帯工事費として加算されます。建物以外で解体してもらいたいものや解体してほしくないものがある場合は、しっかりと業者に伝えておかないとトラブルになる可能性があるので注意しましょう。
実家の解体にまつわる補助金制度一覧
高額になる解体費用ですが、条件によっては補助金や助成金を利用できる可能性があります。特に、相続に伴い空き家になる家や倒壊の危険性がある家では補助金を受けやすいので、一度確認してみるとよいでしょう。
補助金や助成金は自治体によって有無や補助の額が異なります。補助金の名称も自治体によって異なりますが、主に次のような制度として実施されています。
- 老朽危険家屋等解体補助金
- 老朽空き家解体工事補助金
- 解体撤去費助成金
例えば、以下のようなものです。
【東京都荒川区】老朽空家住宅除却助成事業
東京都荒川区では、危険な老朽家屋の除去費用の一部を助成してくれる制度があります。
- 助成額:除去費用の2分の1(上限50万円)
- 対象:危険な老朽空き家住宅
この制度では、解体工事費の2分の1(50万円まで)が助成されます。ただし、建築年月日や面積、空き家期間などの条件があるので注意しましょう。
【大阪府東大阪】空き家解体費補助制度
特定空家等や不良住宅に該当する空き家の解体費用として、補助金を受けられます。
- 補助額:解体費用の5分の4(上限50万円)
- 対象:特定空家または不良住宅居該当する空き家
要件を満たす住宅の解体で最大50万円の費用が補助されます。
特定空き家とは
特定空き家とは、「空家等対策特別措置法」に基づいて放置するのが不適切と判断された空き家のことをいいます。
- 倒壊の恐れがある
- 景観を損なう
- 衛生上の問題がある
- 犯罪危険性など周辺環境に悪影響がある
上記のような状態の空き家の場合、特定空き家に指定される可能性があります。特定空き家に指定されてしまうと、自治体の改善命令に従う必要があり、さらに固定資産税の住宅の優遇も受けられなくなるので注意しなければなりません。
【福岡県八女市】老朽危険家屋等除却促進事業補助金
福岡県八女市では、老朽化した空き家の解体工事で補助金を受けられます。
- 補助額:解体費用の3分の1(上限30万円)
- 対象:自治体が定める不良度基準を満たした空き家
補助金や助成金は自治体によってさまざまなものが用意されています。ただし、適用できる条件や期間なども異なるので、自治体の窓口やホームページで確認するとよいでしょう。
解体工事業者でも補助金についてアドバイスしてくれるので相談することをおすすめします。
実家の解体をおこなう上での注意点
実家の解体工事をおこなう上での注意点としては、次のようなことがあります。
- 固定資産税が上がる可能性がある
- 取り壊し費用が上がるようなケース
固定資産税が上がる可能性あり
建物を解体して更地にする場合、固定資産税が上がる可能性があるので注意しましょう。
固定資産税は、土地と建物それぞれに課せられるものです。建物を解体した場合、建物への固定資産税はなくなりますが、土地に掛かる固定資産税はそのまま発生します。ただ、土地に課せられる固定資産税は、土地の上に居住用の建物が建っていると軽減されるという特徴があるのです。
そのため、建物が建っている状態での土地の固定資産税は軽減が適用され負担が少なくなっている可能性があります。更地になると軽減が適用できなくなるため、本来の高い固定資産税が課せられてしまうのです。
更地にしたあとすぐに土地の売却やアパートなどを建設する場合は、負担もそこまで大きくないでしょう。しかし、長期間更地のままで所有していると固定資産税の負担が大きくなるので注意が必要です。
実家を解体する場合は、その後の土地活用まであらかじめ決めておくことをおすすめします。
取り壊し費用が上がるようなケース
次のようなケースでは、解体費用が高額になる可能性があります。
- 接道の幅が狭く大型車両の乗り入れが難しい
- 敷地が狭く足場の設置や車両が出入りするスペースを確保しにくい
- 建物に倒壊の危険性がある
- 建物にアスベストが含有されている
- 地中埋設物(井戸やコンクリートがらなど)がある
解体工事では、足場の設置や重機の搬入が必要になります。また、職人の車両や産業廃棄物の運搬などで大型車両の出入りや車を停めるスペースが必要です。
そのため、大型車両が通れる幅の道路や出入りできる敷地面積が必要です。それらの確保が難しければ離れた場所に駐車場を確保して、そこまで移動する必要が出てくるのでその分作業に手間と時間が掛かってしまいます。
また、倒壊の危険性がある建物や特別な処理の必要なアスベストが含有されている建物でも、解体作業の負担が増えてしまうものです。
上記のように、通常の解体作業よりも負担や日数が増えてしまう解体作業の場合は、解体費用が高額になる可能性があるので注意しましょう。
おわりに
相続した実家を解体する際の流れや費用についてお伝えしました。
実家を相続しても使う見込みがなければ、解体することでその後の土地活用がしやすくなります。解体費用は高額になる可能性があり、また、費用の負担は相続人間でもトラブルになりやすいものです。
事前に費用の見積もりを取り、相続人で実家の取り壊しや活用の方針をしっかり話し合ったうえで解体を検討することが大切です。