除籍謄本とは?除籍の必要なケースから取得方法までを解説

公開日:2022年6月30日|更新日:2023年3月23日

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「除籍謄本とは何をするときに必要なの?」と疑問に感じていませんか。

除籍謄本とは、戸籍上に誰もいないことを記録した写しのことです。相続手続きや相続放棄するときには、亡くなった人の出生時からの戸籍謄本や除籍謄本を過不足なく揃えなくてはいけません。

今回の記事では、除籍謄本の基礎知識と取得方法を解説します。

除籍謄本の基礎知識

亡くなった人(被相続人)の財産を受け取ったり処分したりするためには、相続手続きが必要です。相続手続きをするときには、亡くなった事実を確認したり相続人となる人を確認したりする作業を行わなくてはいけません。

その際、戸籍謄本のほかに除籍謄本が求められることがあります。除籍謄本について詳しく見ていきましょう。

除籍謄本とは

除籍謄本とは、戸籍上に人がいなくなったことを記録した写しのことです。

戸籍には、父や母、兄弟姉妹などの家族を構成する人が記録されていますが、そのなかの誰かが結婚したり亡くなったりすると戸籍から抜けます。結果的に戸籍上に誰も存在しない状態になると、その戸籍は閉鎖されて除籍として扱われます。

この誰も在籍していない戸籍のことを除籍簿といい、その除籍簿のすべてを転写したものを除籍謄本と呼びます。謄本とは、戸籍や除籍簿をすべてを記した写しのことです。除籍簿の保存期間は、全員が除籍となった年度の翌年から150年と決められています。

相続手続き上、財産を継承する前に誰が相続人なのかを明確にしなくてはなりません。戸籍謄本や除籍謄本で誰が該当するのか調べて確定する作業を相続人調査といいます。相続人調査では、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍を取得して法定相続人を漏れなく洗い出します。

除籍された戸籍が存在する場合、第三者にも客観的に証明できるように必ず除籍謄本を取得しておかなければなりません。このように、戸籍上に誰も存在しないことを証明する除籍謄本は、相続人調査で欠かせない書類のひとつです。

除籍の全部事項証明書、除籍抄本との扱いの違いについて

除籍謄本と除籍の全部事項証明書との違いは管理方法だけで、効力や記載内容は同じです。紙面での管理なら除籍謄本、コンピューターでデータ化して管理していると除籍全部事項証明と呼ばれます。

除籍抄本とは、除籍簿の一個人の記録を転写した書類です。データ化して管理している場合は除籍個人事項証明書と呼ばれます。除籍謄本は除籍簿全員の情報を記していますが、除籍抄本は一個人の情報のみです。

戸籍謄本と改製原戸籍謄本との扱いの違いについて

改製原戸籍謄本は、「かいせいはらこせきとうほん」もしくは「かいせいげんこせきとうほん」と読みます。改製原戸籍とは、戸籍法改正やデータ化で書き換えられる前の古い戸籍のことです。

様式が変更されると、除籍になっていない戸籍はすべて新たな形式に書き換えられます。書き換え前の古い戸籍は記録として市区町村役場に残されているため、申請すれば謄本や抄本として取得できます。

改製原戸籍の保存期間は戸籍を改製した年度の翌年から150年です。しかし、平成22年6月1日の戸籍法の改正までの保存期間は80年だったため、タイミングによって破棄されていることもあり得ます。

もし、破棄されていた場合は市区町村役場で戸籍の廃棄済証明書を交付してもらいましょう。戸籍の破棄証明書で除籍謄本の代用ができます。

除籍謄本が必要なケース

被相続人の財産を継承したり処分したりする場合、戸籍謄本か除籍謄本が必要です。

除籍謄本が必要になる事例を具体的に確認しましょう。

  • 被相続人と相続人の続柄の確認
  • 預金や保険金などの金銭の相続
  • 不動産の名義変更
  • 自動車の名義変更
  • 債券や株などの金融商品の名義変更

被相続人から相続人へ所有権を移すためには、銀行や保険会社などの第三者に相続関係を証明しなくてはいけません。戸籍に誰も存在しないことを証明する除籍謄本は相続人を確定させるために必要となります。

除籍謄本を取り寄せる方法と必要書類、注意点

除籍謄本は戸籍の取得と同様に、本籍地のある市区町村役場にて1通750円で取得可能です。まず、被相続人の本籍を確認してから申請作業に移りましょう。

被相続人の本籍が分からないときは火葬・埋葬許可証か住民票の除票で確認できます。死亡届を提出すると火葬・埋葬許可書をもらうため、そのときに確認すると手間がかかりません。本籍を火葬・埋葬許可証で確認しそびれたときは、市区町村役場で戸籍の除附票を取得しましょう。

本籍地を把握したら以下の3つの方法で申請します。

  1. 市区町村役場の窓口で申請
  2. 郵送で申請
  3. 代理人に依頼

これらの取得方法で知っておきたいメリットと注意点があります。

申請方法 メリット 注意点
市区町村役場の
窓口で申請
  • 確実に取得できる
  • 不明点を質問できる
  • 開庁時間内に行く必要がある
郵送で申請
  • 遠方でも取得できる
  • 事前に用意する書類が多い
  • 時間がかかる
  • 請求漏れがれば、より時間がかかる
代理人に依頼
  • 手間をかけずに取得できる
  • 報酬がかかる

郵送で申請するなら、処理日数と往復の郵便配達日数を考慮しなくてはいけません。10日ほどあれば証明書が手元に届きますが、郵便事情や休日などの関係でさらに日数がかかることがあるため、急ぐ場合には速達郵便を利用しましょう。

相続関係者が多く、揃えるべき除籍謄本が多すぎる場合は弁護士といった第三者に依頼すると手間をかけずに済みます。

どの申請方法でも事前に用意すべき書類が決まっているため、以下の表から確認しましょう。

申請方法 用意すべき書類
市区町村役場の窓口で申請
  • 本人確認書類
  • 請求権限を確認できる書類
  • 戸籍証明等請求書
郵送で申請
  • 本人確認書類のコピー
  • 請求権限を確認できる書類
  • 郵送用戸籍証明等請求書
  • 定額小為替
  • 返信用封筒
代理人に依頼
  • 請求者の本人確認書類
  • 請求権限を確認できる書類
  • 戸籍証明等請求書
  • 委任状

戸籍証明等請求書は窓口で手に入れるか、自治体のホームページでダウンロードできます。本人確認書類は、免許証やマイナンバーカードなどです。請求権限を確認できる書類とは、親族関係が確認できる戸籍等の資料のことを指します。

郵送申請時の本人確認書類にパスポートが認められるかなどの細かい点は自治体によって異なるため、申請する前に各自治体のホームページで必要書類を確認しましょう。書類などの事前準備は除籍謄本を滞りなく取得するために必要なことですが、スムーズに手に入れるためのコツは他にもあります。

円滑に除籍謄本を取得するためのポイントは以下の4つです。

  1. 死亡届から期間をあけて申請する
  2. 漏れのないようにすべての除籍謄本を集める
  3. 定額小為替を多めに同封しておく
  4. 滅失した除籍謄本は焼失・廃棄証明を交付してもらう

死亡届を提出した直後だと、除籍謄本を取得できない可能性があります。なぜなら、死亡届を出してから戸籍や住民票の反映に時間がかかるからです。死亡届の提出から1週間ほど期間をあけてから申請しましょう。

また、相続人を確定させるために被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本などが必要になります。そのため、除籍謄本が必要になったら基本的にすべての除籍謄本を用意しないといけません。

改製原戸籍として除籍簿が残っている可能性があるため、窓口で申請するときは「すべての除籍謄本をください」と相談しましょう。

郵送申請するときは除籍謄本すべてが必要である旨を記載して、定額小為替を3通分ほど多めに同封しておくと最小限のやり取りで完了します。もちろん、定額小為替が余れば返送時に同封されるため参考にしてください。

万が一、戦争や震災などで取得できない除籍謄本があるなら、消失・破棄証明を市区町村役場に交付してもらえば代用も可能です。

おわりに

除籍謄本は、戸籍上に誰も存在しないことを証明する写しのことです。除籍の全部事項証明書は除籍謄本をデータ化したものであるため、呼び名は異なるものの内容は変わりません。

除籍謄本は相続手続きを行う前に相続人調査で必要となる重要な書類のひとつですが、場合によっては改製原戸籍謄本など多くの戸籍謄本を取得せざるを得なくなるでしょう。

戸籍の取り寄せに漏れがあると相続人の確定に影響が出るかもしれないため、相続関係者の多い場合や負担に感じる場合は専門家である弁護士への相談をおすすめします。除籍謄本を漏れなく集めてスムーズな相続人調査を行いましょう。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年6月30日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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