旗竿地とは?相続するメリット・デメリットと相続時にやるべきこと

公開日:2025年2月25日

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「旗竿地を相続することになったけど、どうしよう」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。旗竿地は特殊な土地のため相続しても活用が難しいなどデメリットが生じやすくなります。メリット・デメリットを比較したうえで活用するか、相続放棄・売却などで手放すかを検討することが大切です。この記事では、旗竿地のメリット・デメリットや相続時の選択肢をわかりやすく解説します。

旗竿地とは

旗竿地は、不整形地の一種です。土地には、正方形や長方形の「整形地」とそれ以外の三角形や台形・いびつな形といった「不整形地」の2種類があります。整形地は活用がしやすく需要が高い反面、不整形地は活用が難しいなどデメリットが多くあるため、旗竿地を相続するなら特徴を理解しておくことが大切です。

ここではまず、旗竿地の基本と旗竿地が生まれる理由を解説します。

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旗竿地とはどんな土地?

旗竿地は、道路に面した細長い路地が奥のまとまった敷地につながっている土地です。上空からみると、竿に旗をつけたような形に見えることから旗竿地と呼ばれています。また、道路と狭い路地部分が接している点が特徴であり、同じ旗竿状の土地であっても旗部分が道路と設置していない場合は、旗竿地とは呼ばれないのが一般的です。

旗竿地は前述の通り不整形地の一種ですが、それほど珍しい土地ではありません。とくに都市部など地価の高い地域でよくみられる土地であるため、相続した土地が旗竿地だったというケースもあるでしょう。

旗竿地が生まれる理由

旗竿地が生まれる大きな理由は、「土地の分割」と「接道義務」にあります。ひとつの大きな土地を分割(分筆)する際の分け方によって、旗竿地が生まれます。

たとえば、道路から奥行きの長い長方形の土地を2つに分割する場合をみてみましょう。道路面で単純に2分割してしまうとより細長い土地ができあがってしまい、使い勝手が悪いことから需要が低くなります。この場合は、道路面と道路に接していない奥側で2分割したほうが、使い勝手がよく需要が見込めるでしょう。

しかし、そのままでは道路に接していない土地は接道義務を満たせないため、建物が建築できないのです。現行の建築基準法では、建物を建築するには「建築基準法上の道路に土地が2m以上接する」という接道義務を満たす必要があります。そのため、道路に接していない土地で接道義務を満たせるように、奥側の土地から道路への細い路地部分を設けるのです。

土地を分割する理由はさまざまありますが、地価の高い地域でその傾向が高くなります。地価の高い地域では大きな土地のままでは買い手がつかないため、相続後に分割して売却するケースが多く、その際に旗竿地が生まれやすいのです。

旗竿地のメリット

特殊な形状から活用が難しそうな旗竿地ですが、デメリットばかりではありません。旗竿地には以下のようなメリットがあります。

  • 相続税や固定資産税が安くなる
  • プライバシー性が高い
  • 延べ床面積を広くとれる可能性がある

相続税や固定資産税が安くなる

旗竿地は路地部分に建物を建てられないなど制限がかかりやすい土地のため、整形地よりも土地の評価額が1~3割ほど下がるのが一般的です。土地の評価額が低くなれば、評価額から計算される相続税や固定資産税も低くなります。

維持費や相続するときの税負担を軽減できるのは、土地を所有するうえで大きなメリットと言えるでしょう。

プライバシー性が高い

宅地として活用する敷地は道路から離れているため、道路からの視線を遮りやすくなります。通行人や車からの視界だけでなく、道路の騒音が届きにくいという点も特徴です。

道路に面した家よりもプライバシーや静かな環境を確保しやすいのは、生活するうえでの魅力と言えるでしょう。また、小さい子どものいる家庭にとっては、家から出てすぐに道路に飛び出すリスクが軽減されるのも大きなメリットです。

延べ床面積を広くとれる可能性がある

旗竿地は容積率の計算時に竿部分を敷地面積に算入できるため、宅地利用部分に対する延べ床面積を広くとれる可能性があるのです。

延床面積とは、建物各階の床面積合計で居住スペースの広さを示しています。家の建築はどんな大きさでも自由に建築できるのではなく、容積率や建ぺい率といった制限をクリアしなければなりません。容積率とは、敷地面積に対する延床面積です。

たとえば、容積率100%の土地で敷地が100㎡なら、延べ床面積は100㎡までとなります。2階建てなら、1階60㎡・2階40㎡などが検討できるでしょう。この際、土地の敷地面積には竿部分も算入できます。

仮に、竿部分が20㎡・奥のまとまった敷地が80㎡でも、容積率が100%なら宅地に利用できる80㎡に対して延べ床面積100㎡の家を建てられます。一方、正方形の土地でも敷地80㎡・容積率100%なら、延べ床面積は80㎡までです。

このように、宅地に利用できる面積に対しての延べ床面積は整形地よりも広くとりやすいため、より大きな家が建てられる可能性があります。

旗竿地のデメリット

旗竿地には、メリットだけでなくデメリットもあります。具体的には、以下の4つが挙げられます。

  • 売却価格が安くなりやすい
  • 工事費用が高額になりやすい
  • 日当たり・風通しが悪くなりやすい
  • 防犯や騒音対策が必要になりやすい

売却価格が安くなりやすい

旗竿地は活用に制限がつくこともあるため、売却時の価格が整形地に比べ安くなりがちです。旗竿地の形状によっても異なりますが、同じ立地の整形地に比べ1~3割ほど下がるのが一般的でしょう。

土地の価格の安さは買い手や所有時にはメリットになりますが、売り手にとっては大きなデメリットとなります。相続後に売却しようとしても安値での売却となりやすく、買い手も付きにくい点には注意しましょう。

工事費用が高額になりやすい

旗竿地は、建築や外構・解体工事のコストが高額になりがちです。これらの工事の際には重機の搬入や足場の設置が必要ですが、間口の狭い旗竿地では、敷地に重機などが入らない場合があります。

足場についても、隣地との間にスペースが十分確保できないケースも少なくありません。重機・トラックの搬入や足場の設置が難しいと、手作業の増加や駐車場の確保・特殊な足場の設置などでコストが増しやすくなるのです。

日当たり・風通しが悪くなりやすい

旗竿地は四方が建物に囲まれることが多いです。そのため、日当たりや風通しが悪くなる傾向があります。今は建物が建っていなくても、空き地であればいずれ建築される可能性もあるでしょう。旗竿地の活用を検討する場合は、周囲の建物や土地の状況をしっかり確認しておくことが大切です。

四方を建物に囲まれる場合でも、天窓を設けるなど建築プランで日当たりや風通しを確保できる可能性はあります。しかし、特殊な建築プランになるとより建築コストがかかってしまう点にも注意しましょう。

防犯や騒音対策が必要になりやすい

四方を建物に囲まれていることは、防犯や騒音の面でもデメリットを生じます。道路からの視界が遮られるため犯罪者の侵入が死角になりやすく、空き巣などのリスクが高くなります。

また、道路からのプライバシーは確保しやすくても、四方の建物からのプライバシーは確保が難しいことが多いです。四方の建物との距離が近いことで、騒音に悩まされるだけでなく相手を悩ます側になる恐れもあります。そのため、プライバシーや騒音で近隣トラブルになる可能性もあるでしょう。

旗竿地に家を建築する際には、防犯対策や騒音対策は十分に検討することが大切です。

旗竿地を相続することになったらどうする?

旗竿地を相続することになったらどうする?のイメージ

旗竿地といっても状態によって大きく異なります。一概に相続しない方がいいとは限らないため、価値を調べてそのうえで保有か手放すかを検討することが大切です。ここでは、旗竿地を相続する場合の対応について解説します。

旗竿地の価値を調べる

旗竿地の価値やメリット・デメリットを調べて、どちらが大きいかを確認しましょう。この際、土地の価格だけでなく以下の点も確認することが大切です。

再建築不可物件でないか確認する

まずは、再建築不可物件でないか確認しましょう。再建築不可物件とは、今ある建物を解体すると新しい建物を建築できない土地です。建築時点では建築基準法上問題なくても、その後の法改正により現行の建築基準法を満たせないと再建築不可物件となります。旗竿地では、接道義務を満たせず再建築不可物件となるケースが一般的です。

接道義務を満たせない主なケースは以下の通りです。

  • 間口が2m未満
  • 前面道路が建築基準法上の道路でない

間口が2m以上ある場合でも、前面道路が私道や幅員4m未満など建築基準法上の道路でない場合も接道義務を満たせないので注意しましょう。旗竿地の場合は、間口が2m未満で再建築不可物件となるケースが多いので、間口の幅を必ず確認することが大切です。

また、間口が2mある場合でも、駐車スペースを確保できない幅・工事車両が通行できない幅では支障が出やすい点にも気を付けましょう。駐車スペースなら一般的な車の幅+乗り降りの幅を考慮すると、2.5m〜3mは確保したほうがよいでしょう。

さらに、間口の幅だけでなく前面道路の幅や竿部分の奥行きによっても出入りのしやすさなどが変わってきます。道路状態や車のサイズを考慮して必要な広さがあるかを確認することが大切です。

電気・水道などのインフラ状況を確認する

分割されて間もない・それまで宅地として利用されたことがない旗竿地の場合、水道管やガス管などの生活インフラが整っていないケースがあります。生活インフラの整備は数十万円程度のコストがかかり、たとえば上下水道の引き込みが必要ともなれば100万円以上かかるケースも少なくありません。さらに、旗竿地の場合は整形地よりも管の延長が必要などでコストが高額になりがちです。

このようにインフラが整っていないと、自分で活用するにもコストが増加します。また、売却するにしても買い手がコストを嫌がって売却しにくくなる点にも注意しましょう。

隣地に売却できるか、隣地を買い取ることはできるか確認する

旗竿地はそのままでは活用に制限がかかりやすいため、自分で活用するにしても売却するにしても不利になりがちです。しかし、隣地を買い足して整形地にできればデメリットが解消でき活用や売却も通常の不動産同様に行えます。

売却する場合でも、第三者にとっては使い勝手の悪い土地でも、隣地の所有者であれば敷地の拡張ができるため買ってくれる可能性があります。

買い増しできそうな土地がある・隣地の所有者が土地を欲しがっているなら、まずは隣地の所有者に打診してみるとよいでしょう。ただし、隣地の所有者との関係性も重要になってくるので、日ごろから良好な関係性を築いておくことも重要です。

保有するべきか手放すべきかを判断する

旗竿地は税負担を考慮すれば保有しやすいですが、活用や売却に難が出やすい土地でもあります。ここまで紹介したようなメリット・デメリットや自分の希望などを踏まえて、保有するか手放すかを判断しましょう。

保有するよりも手放したほうがいいと判断する場合、以下のような方法で手放すことが検討できます。

  • 相続放棄する
  • 売却する

相続放棄する

旗竿地を一度相続してしまうと、手放すにしてもコストや手間がかかり容易に手放せません。相続前であれば、相続放棄することで保有するのを防げます。

ただし、相続放棄はすべての財産の放棄が必要です。旗竿地だけ放棄して現預金は相続するといったことはできないため、他の相続財産を把握したうえで慎重に検討しなければなりません。

また、自分が相続放棄することで他の相続人が旗竿地を相続しなければならない点にも気を付けましょう。自分が相続放棄したことで本来は相続人でなかった人に思いもよらない相続権が発生し、相続トラブルになる恐れもあります。

たとえば、実家の建っている土地が旗竿地で、実家を相続するようなケースにおいて、すでに自分が実家に住んでいる場合は相続放棄しても旗竿地の保存義務が残る点にも注意が必要です。この場合、次の相続人が現れるまで管理するか、相続人がいない場合は家庭裁判所で相続財産清算人の選任手続きをしなければなりません。

なお、相続放棄ができるのは、相続があることを知った日から3か月以内です。期限を超えてしまうと相続放棄できなくなるため、早めに手続きを進めるようにしましょう。相続放棄の手続きに不安がある・相続放棄してもいいか悩むという場合は、専門家への相談をおすすめします。

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売却する

すでに相続してしまった・相続放棄が難しいという場合は、売却して手放すのが一般的です。しかし、旗竿地は活用が難しく買い手がつきにくいケースが多く、とくに再建築不可物件では売却が難しくなります。

なかなか売却できないと、その期間も固定資産税や維持費などのコストがかかる点には注意しましょう。売却が難しい場合は、旗竿地や再建築不可物件などを専門的に扱う買取業者に買い取って貰う方がスムーズに手放せる可能性があります。売却に悩む場合は、専門業者に相談するとよいでしょう。

旗竿地の相続は専門家に相談を

旗竿地は税負担を押さえて相続・維持できるという魅力はありますが、活用や売却が難しいというデメリットがあります。メリット・デメリットを理解したうえで、相続するか・相続放棄するかを検討することが大切です。

相続する場合でも、土地の評価額の計算などでトラブルになるケースは少なくありません。一方、相続放棄するにしても手続きには期限があり、そもそも相続放棄が妥当な選択かは多角的に判断する必要があります。

そのため、相続する・相続放棄するいずれにしても、まずは専門家に相談してアドバイスをもらうことをおすすめします。すでに相続している・相続放棄が難しいという場合は、訳あり不動産を扱う専門業者への相談を視野に入れるとよいでしょう。

記事の著者紹介

逆瀬川勇造(ライター)

【プロフィール】

金融機関・不動産会社での勤務経験を経て平成30年よりライターとして独立。令和2年に合同会社7pockets設立。前職時代には不動産取引の経験から、相続関連の課題にも数多く直面し、それらの経験から得た知識などわかりやすく解説。

【資格】

宅建士/AFP/FP2級技能士/相続管理士

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本記事の内容は、記事執筆日(2025年2月25日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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