自分でできる?不動産の名義変更にまつわる費用や必要書類を徹底解説

更新日:2023年1月4日|公開日:2022年5月26日

不動産を売買したり相続などで不動産の持ち主になったら、やらなくてはいけないのが不動産の名義変更です。登記簿に記載されている名義を変更することで、初めて不動産の所有者であることが公的に認められます。名義変更は必ず行うようにしましょう。この記事では不動産の名義変更とはそもそもどういうものなのか、必要書類や費用など名義変更の基礎知識を解説しました。

そもそも不動産の名義変更とは?

名義変更とは不動産の所有者名義を変更する手続きのことです。

家や土地などの不動産は、概ねすべて法務省が管轄する登記簿に記載され管理されています。この登記簿に所有者として記載されている名前を変更することを本記事では名義変更と言っています。

不動産の名義人が変わる原因として以下の4つのものが挙げられます。

相続 亡くなった人(被相続人)の死亡時の財産を配偶者や子どもなど(相続人)が引き継ぐこと
財産分与 夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を離婚に伴い分配すること
贈与 双方の同意のもと財産を無償で与えること
売買 財産を移転する際に相手方から代金の支払いを受けること

不動産の名義変更は、虚偽の登記がされるリスクを排除する観点から、原則として不動産の登記権利者と登記義務者が共同で行います。

登記権利者と登記義務者とは簡単に言うと不動産の所有権を渡す人と受け取る人です。

相続の場合は所有者は既に亡くなっているので、不動産を相続した人が行います。ただ、実務的には司法書士などの専門家に依頼して行うことが多いです。

名義変更の手続きは法務局で行う

名義変更は法務局にて申請します。申請を行う法務局はどこでも良いわけではなく、不動産が所在する地域を管轄する法務局です。

疑問があれば最寄りの法務局に相談すれば親切に対応してくれます。

法務局は現在窓口での案内を行っておらず、電話のみでの案内となります。完全予約制となっているため登記についての相談が必要な場合は前日までに忘れずに予約しましょう。

また、法務局の窓口が開いているのは平日8時30分~17時15分までとなり、土日は受け付けていません。

名義変更は、電子申請(オンライン申請)と書面申請の2つの方法で申請することができます。オンライン申請をする場合は法務局のホームページに行き、オンライン申請の案内のページにアクセスしましょう。事前準備として申請者情報の入力や申請用総合ソフトのインストールが必要となります。

書面申請をする場合は、申請書の作成や添付書類の準備が終わり次第、不動産の管轄の法務局に申請します。管轄区域以外の法務局に提出すると申請が却下されてしまうので、管轄の法務局を必ず調べてから申請するようにしましょう。

名義変更はいつまでに済ませるべきか

不動産の名義変更をする際に気になるのは、名義変更をいつまでに行えばよいかではないでしょうか。

不動産の名義変更はいつまでにしなければならないという期限の決まりはありませんが、いつまでにしておいたほうがよいという目安はあります。

相続 不動産の取得を知った日から3年以内
財産分与 離婚後すみやかに
贈与 贈与後すみやかに
売買 決済日当日

名義変更の手続きを行うタイミングの目安として相続は不動産の取得を知った日から3年以内、売買は不動産の決済日当日とされています。相続時の名義変更に関しては2022年現在期限は定められていませんが、今後相続登記の義務化が施行されます。詳しい内容は5章で解説します。

財産分与と贈与に関しては名義変更の手続きを行う期限はありませんが、離婚時の財産分与を求める権利は離婚から2年の経過で消滅するため必ず2年以内に財産分与の請求をしましょう。2年以内に請求すれば分与自体は2年経過後でも問題ありません。

不動産の名義変更をしないとどうなる?

不動産の名義変更は自分でも行うことができるのか気になっている方もいるでしょう。ここでは不動産の名義変更を自分でできるのかについて解説します。

前提としては「司法書士へ依頼すること」がおすすめ

結論から言うと名義変更の手続きは素人でも可能ですが、おすすめしません。

名義変更の申請手続きはケースに応じて揃えるべき書類が異なります。素人ではどのような書類をどのようにして集めればよいのか分からないということがほとんどでしょう。

書類に不足や不備があれば、申請手続きは進められず、時間ばかり過ぎていきます。

もちろん、自分だけで行えばプロに頼む費用がかからないことはメリットかも知れませんが、結局、多大な労力をかけて遅々として進まない可能性があることを踏まえると、専門家に依頼したほうがよいかもしれません。

司法書士に依頼するときの費用の相場

現在、司法書士への報酬は完全自由化されており、各事務所によって異なります。また、依頼する内容によっても料金が異なってくるので一概には言えませんが、名義変更だけならば4~7万円、書類集めなどから依頼すれば10~15万円以上の費用が発生します。費用が高い=良い司法書士と言えるわけではないので、複数の事務所に相談してみて司法書士を決めるというのも手でしょう。

司法書士への依頼費を抑える費用

司法書士に依頼する費用を抑えるためには相場より安い料金設定で依頼できる司法書士を探して依頼することが重要です。名義変更はオンライン申請できるため自宅から遠い司法書士であっても依頼することが可能です。司法書士を探す際は日本全国の事務所を対象に探すとよいでしょう。その他にも必要書類を自分で集めることで費用を安くすませることもできます。

司法書士事務所によってはプランが複数設けられており、書類の収集から登記の申請まで名義変更にかかる手続き全てを行うプランと必要書類の収集は自分で行い登記の申請のみ依頼するプランがあります。

登記のみ依頼するプランは比較的費用を抑えて依頼することができるため、複数のプランを設けている司法書士事務所を探して依頼するとよいでしょう。

不動産の名義変更に必要な書類・費用

名義変更を行う前に必要書類やかかる費用を把握しておくことで手続きをスムーズに行うことができます。ここでは名義変更にかかる費用と必要書類について解説します。

名義変更に必要な費用

自分で名義変更を行った際にかかる主な費用として登録免許税と必要書類の取得費用が挙げられます。名義変更をする際には必ず登録免許税がかかります。

法務局へ申請する際に合わせて納めるのが一般的です。登録免許税は一律の金額ではなく、不動産の固定資産税評価額によって異なります。固定資産税評価額に一定の税率をかけ算して算出するのですが、名義変更をする理由によってかける税率が変わってきます。

理由 税率
相続 0.4%
離婚 2%
贈与 2%
売買 2%

令和4年3月31日まで、一部登録免許税が減税措置の対象となっています。減税の措置の詳細は国税庁の公開している「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ|国税庁」をご確認ください。

登録免許税のほかに必要書類を集める際にも費用はかかります。

主な必要書類1通の費用は以下の通りになります。

費用 書類名
300円 住民票
300円 固定資産評価証明書
600円 登記簿謄本(登記事項証明書)
300円 印鑑証明書
300円 戸籍の附票

書類は状況や理由によって必要な種類や枚数が異なります。また、市区町村によって取得する際の費用は異なるのでこちらは事前に役所に確認すると良いでしょう。

名義変更に必要な書類

以下は名義変更を行う際に必要な書類一覧です。

相続 遺言書・遺産分割協議書、登記原因証明情報、登記識別情報、住所証明書、印鑑証明書、委任状、固定資産評価証明書
財産分与 登記識別情報、印鑑証明書、固定資産評価証明書、住所証明書、離婚協議書、財産分与契約書、戸籍謄本
贈与 登記識別情報、印鑑証明書、固定資産評価証明書、住所証明書、贈与契約書、贈与証書
売買 登記識別情報、印鑑証明書、固定資産評価証明書、委任状、住民票、売買契約書

名義変更の原因により必要書類は異なります。書類が不足していたり不備がある場合は法務局へ再提出をすることになり名義変更完了までにかかる時間が長くなります。

漏れがないか確認する、もしくは事前に法務局に相談して不備なく提出できるようにしましょう。

相続時の不動産名義変更は義務化になる

今まで不動産の名義変更に期限はありませんでしたが、令和3年4月の国会で可決された法案により相続登記の申請が義務化となりました。

相続登記の義務化とは

これまでは相続登記の申請は義務ではなかったため、土地を相続しても名義変更をする人が少ないことから、所有者不明土地の増加が問題となっています。平成29年の国土交通省の調査によると所有者不明土地の割合は22%にもおよび、今後も高齢化による死亡者の増加等によりますます深刻化すると言われています。

そこで所有者不明土地の発生を予防するために令和3年4月に公布された法令が相続登記の申請の義務化です。この法令により、不動産を取得した相続人に対しその取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が義務付けられ、正当な理由がなくその申請を怠った場合は10万円以下の過料が処されることになります。

相続登記の申請の義務化は令和6年4月1日から施行されることが決定しました。

施行日前に相続が発生していた場合も登記申請義務が課される

相続登記の申請の義務化が施行されるのは令和6年からですが、それ以前に相続が発生していた場合も登記の申請義務は課されます。施行日前に相続が発生していた場合は、法令の施行日とそれぞれの要件を充足した日のどちらか遅い日から相続登記申請義務の履行期間である3年間がスタートします。不動産を相続して名義変更をしていない方は過料の対象になる前に名義変更を済ませるように準備を始めましょう。

不動産の名義変更をする際の2つの注意点

家の名義変更は2つ行う場合もある

家の名義変更は土地と家屋の2つ申請が必要な場合があります。

というのも登記実務では土地と家屋は別物として扱われており、土地と家屋のそれぞれに所有名義が登録されています。そのため、土地付き家屋を取得した場合、通常、土地の名義と家屋の名義の2つの名義変更が必要となるのです(家屋が借地の場合は別です。)。建物の名義変更の際に発生する税金の支払いは建物の固定資産税評価額×登録免許税率で算出できます。家屋によっては減税を受けられる場合があります。詳しくは登録免許税の税額表|国税庁をご確認ください。

遠方の役所に行く必要がある

名義変更に必要な書類は、場合によっては地元など遠方の役所に申請する必要があります。このような場合は、郵送での請求を活用しましょう。基本的にどの役所も郵送での請求に対応しています。各市区町村の役所によって料金は異なりますので、必ず事前に役所に問い合わせて確認してください。また、不動産登記・名義変更をする際の注意点を東京法務局が動画で解説しています。こちらも合わせてご覧ください。

まとめ

不動産の名義変更は面倒ですが、放置してはいけません。

もし、独力での対応に困難を覚えるようであれば、費用はかかってしまいますが、無理せず早めに司法書士に依頼してしまいましょう。費用が心配であれば、複数の司法書士事務所を比較して決めるとよいでしょう。なお、自身が所有する不動産を売却する場合も不動産会社の相見積もりを取る方が高値での売却が可能となるかもしれません。大切な財産ですので、慎重に決めていきましょう。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報をわかりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2022年5月26日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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