土地の遺産相続で問題発生?公平な分割方法を分かりやすく解説

公開日:2023年5月29日

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土地相続において、公平な遺産分割方法を知ることは非常に重要です。相続財産は、土地などの不動産以外にも現金や有価証券などが含まれますが、特に土地の分割においては、親族間で公平性を確保することが重要です。

分割方法には現物分割・代償分割・換価分割・共有分割がありますが、それぞれメリットとデメリットがあるため、トラブルを回避するためには、現実的な問題を考慮した上で最適な方法を選択することが大切です。

相続における土地の分割について

土地の遺産相続において、まず重要なのは相続財産の考え方です。相続財産とは、故人が遺した財産のうち、親族などの相続権者によって分割されるものを意味します。相続財産には、不動産、預金、有価証券、現金などが含まれますが、土地を相続する場合は問題が起こりやすいため、特に注意が必要です。

土地相続で分割の問題が起こる理由

土地相続において問題が起こる理由には、大きく分けて2つあります。1つ目は相続人が多く、土地を分割することが困難な場合です。2つ目は相続財産の種類が異なるため、分割方法によって財産価値や均等性に偏りが生じることです。

特に、土地相続においては分割が複雑であり、相続人同士の意見が合わずにトラブルが発生することが多いです。例えば、土地が農地などの不動産である場合、現物分割が困難であり、代償分割や換価分割をする必要があります。また、土地の形状や用途が異なる場合は、価値の差が生じるため、公平な分割方法を選定することが重要です。

さらに、相続人同士の感情的な問題も土地相続において起こりがちです。遺産分割に関する意見の食い違いや、相続人間の不仲などが原因でトラブルが起こる場合もあります。公平かつ円満な分割を実現するためには、分割方法を適切に選択し、遺産分割協議書の作成や専門家の助言を利用することも重要です。

土地の分割において重要な相続財産の考え方

土地の場合、所有権が共有されたままで分割するのは困難であり、現実的な分割方法が必要になります。そのため、土地については、相続財産を物理的に分割する方法(現物分割、代償分割、換価分割、共有分割)があります。

また、遺言書がある場合は、遺言書によって相続財産の範囲が変わることもあります。遺言書の存在や内容によって、相続財産の範囲や分割方法が変わる場合がありますので、遺言書も確認しておく必要があります。

以上のように、土地を相続する場合は、相続財産の考え方を理解し、現実的な分割方法を選択することが重要です。分割方法によっては費用がかかる場合があるので、事前に費用の見積もりも行っておくことが望ましいでしょう。

土地の分割方法は4つ

4つの土地分割方法のイメージ

前述のとおり、土地の分割方法には現物分割・代償分割・換価分割・共有分割の4つがあります。以下に、それぞれの特徴を記載します。

現物分割

土地を公平に分割する方法の1つである現物分割とは、相続財産としての土地を実際に分割して、相続人それぞれに土地を譲渡する方法です。この方法では、土地を実際に分割するために、行政機関に認められた測量士や不動産鑑定士などの専門家の協力が必要となります。

<メリット>

現物分割のメリットは、各相続人が実際に譲渡された土地を所有するため、所有する土地に対する意識が高く、管理や利用がしやすいことです。また、相続人間の争いを防ぐためにも、公正な分割方法として選ばれることがあります。

<デメリット>

一方、デメリットは、土地の形状や価格の違い、利便性などによって、ある相続人が得をする、損をするといった不平等な状況が生じる可能性があることです。また、現物分割の実施には、測量や不動産鑑定にかかる費用や時間がかかるため、負担が大きくなることもあります。
現物分割は公正な分割方法として選ばれることがありますが、土地の特性や相続人間の関係性を考慮して、他の分割方法との比較検討が必要です。

代償分割

代償分割とは、相続財産の中で土地を分割する方法のひとつで、土地を保有する相続人のうち、一部の人に土地を分け与え、代わりに他の相続人から代金を受け取るという方法です。これにより、土地を分割しながらも、それぞれの相続人が希望する土地を所有できる可能性があります。

<メリット>

代償分割のメリットは、現物分割や換価分割と比べ、分割後の土地の利用価値を損なわず、分割の公平性を高めることができる点です。また、相続人間の意見の食い違いがあった場合にも、代金を支払うことで問題を解決することができます。

<デメリット>

一方で、代償分割には費用がかかることがデメリットのひとつです。具体的には、不動産鑑定士や司法書士などの専門家が必要となるため、他の分割方法に比べて費用が高くなります。また、代金の支払い方法や時期など、細かな条件などを話し合う必要があるため、時間がかかることもあります。

換価分割

換価分割とは、土地を等価交換することで公平な分割を図る方法です。例えば、Aさんが所有していた土地を換価分割する場合、BさんがAさんの土地を譲り受ける代わりに、Bさんが持っている他の不動産や現金などの遺産と等価になるように交換を行います。この方法は、土地を分割することで生じる不公平感やトラブルを避けることができます。

<メリット>

換価分割には、公的な評価基準が存在します。例えば、国土交通省が定める「不動産等価調査規程」に基づいて、専門家が土地の評価や交換の条件を決定します。そのため、現物分割のように土地の評価や分割方法について揉めることが少なく、迅速かつ公正な分割が期待できます。

<デメリット>

換価分割には費用がかかる場合があります。評価や交換条件の決定には専門家の手数料や登記費用が必要です。また、交換資産として現金が必要になる場合もあります。そのため、費用を抑えたい場合は現物分割や代償分割を選択することが求められます。

共有分割

共有分割とは、相続財産の中の特定の不動産を相続人で共有し、その共有物を分割する方法です。共有物は、通常、家屋や建物、土地などの不動産に限られます。

<メリット>

共有分割のメリットは、物件の面積や形状によって分割した場合に発生する不公平感を避けることができることです。例えば、土地の面積が同じでも、形状によって使い勝手が異なる場合、それぞれの相続人にとって不公平になる可能性があります。共有分割を行うことで、それぞれの相続人が希望する面積や形状に合わせて分割することができます。

<デメリット>

一方で、共有分割にはデメリットもあります。共有物を分割するには、共有物が金銭で評価可能である必要があります。そのため、金銭的な評価が難しい場合や、物件が地盤沈下や法的問題を抱えている場合、共有分割は適切な方法ではありません。
また、共有分割には費用もかかります。共有物の評価や分割に必要な手続きによって、分割費用が発生します。そのため、共有物を分割する際には、費用についても考慮する必要があります。

各分割方法の費用

具体的な費用や税金の金額は地域や国の法律、資産の種類、その他の要素によって変動しますます。分割方法の手続きや税金に関する詳細な情報を知りたい場合は、専門家や弁護士、税理士に相談することをおすすめします。
以下に各分割方法の目安費用を記載します。

現物分割の費用

費用は、分割する資産によって大きく変動します。通常、不動産の場合は、測量費用や相続登記手続き費用が発生することがあります。また、分割に伴う税金としては、譲渡所得税や贈与税がかかる場合があります。

  • 測量費用:分割する土地の面積や形状によって異なりますが、数十万円程度が多い
  • 相続登記手続き費用:登記所の手数料や印紙税、登記申請書の作成費用などを司法書士に依頼する場合は数万~数十万円程度

代償分割の費用

不動産鑑定などの費用に加え、代償金の支払いに関連する銀行手数料や契約書の作成費用などがあります。また、代償金は所得として課税される場合があります。

  • 不動産鑑定費用:不動産鑑定士の経験や専門知識、土地の規模や複雑さによって異なる。数十万円から数百万円程度
  • 代償金の支払い関連費用:銀行手数料や振込手数料など。数千円から数万円程度
  • 相続登記手続き費用:登記所の手数料や印紙税、登記申請書の作成費用などを司法書士に依頼する場合は数万~数十万円程度

換価分割の費用

譲渡に関わる手続き費用がかかります。また、交換資産として現金が必要になる場合もあります。

譲渡手続き費用:譲渡税や相続登記手続きに関連する費用が発生。譲渡税は土地の評価額に基づいて課税されるため、土地の評価額によって金額が異なる。登記手続き費用は測量や登記所の手数料、印紙税などを含むと数十万円から数百万円程度

共有分割の費用

契約書や合意書の作成費用などが発生します。また、折半された利益や費用は、各所有者の所得として課税されます。

合意書作成費用:弁護士や行政書士に依頼して合意書を作成する場合、数万円から数十万円程

繰り返しになりますが、上記の金額はあくまで一般的な目安であり、具体的な手続きや地域によって異なる場合があります。土地の分割手続きを行う際には、専門家に相談することをおすすめします。

各分割方法の選定のポイント

土地の分割をする際には、上記の費用やメリットやデメリットを考慮し決定することが大事ですが、各相続人が納得できる公平な分割方法を選ぶために以下のポイントにも注意しましょう。

相続人の人数や希望に合わせた方法を選ぶ

現物分割や共有分割は、相続人数が少ない場合に適しています。代償分割や換価分割は相続人数が多い場合に適しています。また、相続人が希望する分割方法も考慮する必要があります。

土地の形状や用途を考慮する

土地の形状や用途によっては、現物分割が困難な場合があります。その場合は、代償分割や換価分割が有効です。また、土地の用途によっては、共有分割が不適切な場合もあります。

費用や手続きの煩雑さを把握する

各分割方法には、費用や手続きの煩雑さが異なります。現物分割は費用がかかりませんが、土地の評価や境界確定の手続きが必要です。代償分割や換価分割は、土地の価値を評価する必要がありますが、手続きは比較的簡単です。共有分割は、手続きが煩雑で費用もかかります。

相続における土地分割トラブル例と対処法

相続における土地分割トラブルに悩む人のイメージ

土地の相続における分割トラブルは多岐にわたり、相続人同士の不仲や価値観の違いなども影響するため、解決が非常に困難な場合もあります。このような相続トラブルを避けるためには、相続前には公正証書を作成するなど、手続きをしっかりと行うことが大切です。

土地分割トラブル

トラブルが発生する要因は下記のようなものが挙げられます。

  1. 相続人が多く土地を分割することが難しい
  2. 土地の形状が複雑で分割が複数回必要
  3. 土地の評価が難しい
  4. 分割に関する合意が取れない
  5. 分割後の土地の利用方法や管理方法について、相続人間で意見が分かれる

また、分割が上手くいった後にも「分割後に建物が建設されその建物がある土地の価値が上がり、他の土地の価値が下がってしまった」などでトラブルになる場合もあります。

トラブルを防ぐために押さえておきたいこと

相続における土地の分割トラブルを防ぐためには、以下のような点に注意することが大切です。

①事前に協議を行う

分割方法を決定する前に、相続人間で協議を行うことが重要です。分割方法を決めるだけでなく、分割後の利用方法や管理方法についても話し合うことが必要です。

②法律の知識を持つ専門家に相談する

分割方法によっては、税金や手続きに関する知識が必要になる場合があります。そのため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することで、トラブルを未然に防ぐことができます。

③公正証書を作成する

土地の分割方法によっては、公正証書の作成が必要となります。公正証書は、法的に有効な書類であり、分割に関する約束事やルールを明確にすることができます。

④子どもたちと話し合いをする

土地の分割が子どもたちの将来に影響を与える場合、子どもたちにも事前に話し合いをすることが大切です。将来的にトラブルが発生することを避けるためにも、分割方法について理解してもらうことが必要です。

以上のような注意点を守ることで、分割トラブルのリスクを下げることができます。しかし、相続人間の感情的な葛藤や、思わぬトラブルが起きる場合もあるため、分割方法の決定には細心の注意が必要です。

現実的な問題を考えた上で、最適な方法を相続人同士でよく話し合って選択することが大切

公平な分割方法を選択するには、各分割方法のメリットデメリットを理解したうえで、相続人の数や財産の種類・土地の形状や建物の配置・相続人間の関係性・分割にかかる費用など各々の相続状況に合わせた現実的な問題を考慮することが大切です。

また、それらの判断のためには専門家の意見を聞くことも重要です。不動産鑑定士や弁護士、司法書士などの専門家に相談し、最適な方法を選択することが望ましいでしょう。

著者紹介

相続プラス編集部

相続に関するあらゆる情報を分かりやすくお届けするポータルサイト「相続プラス」の編集部です。相続の基礎知識を身につけた相続診断士が監修をしております。相続に悩むみなさまの不安を少しでも取り除き、明るい未来を描いていただけるように、本サイトを通じて情報配信を行っております。

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本記事の内容は、記事執筆日(2023年5月29日)時点の法令・制度等をもとに作成しております。最新の法令等につきましては、専門家へご確認をお願いいたします。万が一記事により損害が発生することがあっても、弊社は一切の責任を負いかねますのであらかじめご了承ください。

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